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28話 交渉の地


「久しぶりのクルヴァですね!」


 隣でリールがいつもより薄い鎧を着て言った。


「そうだね。それにしてもリール鎧軽装過ぎない?」

「まあ暑いので、いつもの鎧は一応持ってきてますがこの暑さで着たら戦う前に暑さで倒れちゃいますよ」

「確かに」


 帰還から3か月、いろいろな事後処理に追われていた間にすっかり夏になってしまった。

 北部なら今の次期ちょうどいい温度になるけどこのクルヴァ地方は帝国南部と同じくらい暑い。

 ずっと北部の気候に慣れてきた僕も含めて北部人にはこの暑さは天敵だ。


「でもあちら側から申し出てくるとは思いませんでしたよ」

「だね~こっちから申し出ようと思ったけど手間が省けたよ」


 つい先週王国から使者が来て今こっちが抱えている王国兵の捕虜と王国の金銭を交換しないかと申し出があった。

 正直全員食わせていくのも大変だし単純に金で払ってくれるなら簡単に済むしありがたいな。


「明日には王国の代表団が予定地に到着します」

「了解、先に現地入りしてお茶でも飲んでよう」

「かしこまりました。捕虜は引き渡しに備えて名簿を再確認しておきます」

「ありがとう」


 引き渡し地点はこちら側が指定した。

 北部軍占領地と王国領の境界線の小さい村だ。

 引き渡しには捕虜を抑え込む人員として近衛隊1000人と第一軍団1000人しか連れてきていない。

 あまり連れてきても王国側を刺激するだけだしそういう取り決めだ。

 だがもしもの時のために対応できるように僕たちも王国軍もそれぞれ2万の兵力を後方に待機させている。


「捕虜たちの様子は?」

「あんまりよくないですね。中には残りたいと言ってきている者もいます」


 王国は北部に比べ圧倒的に身分差が大きい。

 家族がいない兵はいっそのこと寛容な北部に残ったほうがいいと思っているのだろう。


「まあ一応全員帰ってもらうんだけどね」

「容赦ないですね、、、」

「もちろん。王国をこれ以上刺激してくれても困るからね。必要な領土はもう十分手に入れたから」

「まあ次の穀物の準備も進んでますし妥当ですね」


 あれから僕が前線を離れている間にもバークレーのクルヴァ駐屯部隊やヴェスターから出陣したエレナさんとベルトン達がクルヴァ地域を完全掌握するべく周りの小規模な町や城を落としていった。

 そのおかげもあって完全な掌握が完了した今は我々北部人が初めて経験する穀物生産の準備をしている。

 幸い学者団に穀物研究の人がたくさんいたので引き抜いて指揮を執ってもらっている。

 このままうまくいけば初めて自分たちで作った小麦が世に出回るがそれも王国からの攻撃があれば中断せざるを得ない。

 今はなるべく穏便に済ませたい。


「殿下、今先を偵察している隊から報告が上がってきました。現地住民は受け入れ準備を進めていて怪しい点はないようです」

「了解、じゃあ行こう」

「はい」


 それから僕たちはその村へ到着した。

 村長から挨拶を受けてその日泊まる村長の屋敷に行った。


「村長の屋敷にしては結構豪華だね」

「そうですね。普通は一般の農民と変わらないくらいですがここは宝飾品もたくさんあります」

「どうしてかな?」

「恐らく貿易の通過地点として儲けているのでしょう」

「あ、そっか。ここはクルヴァから王都への通過地点だったね」


 リールの言葉で気づいた。

 ここはクルヴァの農作物が集約されるクルヴァ要塞から王国の王都までの貿易路のちょうど中間だ。

 

「だから宿とかが充実してるのか」

「はい、いまでは王国と北部を行き来するキャラバンの中継点となっているようです」

「キャラバンか~パルテ元気かな~」

「最近はフルテッドとの貿易に力を入れているようですね」

「そうなんだよ~だからヴェスターによってくれなくて少し寂しいや」


 2年前に初陣の帰りに知り合ったパルテ商会のパルテは年が近い中で唯一の友達だ。

 リールも年は近いが姉に近い感じだからな~

 彼女は今フルテッドとの貿易で商会を更に広げているらしい。

 

「では私はこれで失礼しますね。近衛隊を数人置いていくので何かあれば呼んでください」

「うん、僕はこのまま寝るよ。また明日」

「はい、おやすみなさいませ」


 リールはそう言うと村の外で野営地を設営している軍の指揮をしに出て行った。

 窓からは夕日が差し込んでいる。

 到着した後村長との会談や設営準備をしていたらすっかり日が暮れてしまった。

 明日は王国の代表団も迎えるし早めに寝ておこう。

 僕はそのまま寝るのだった。



ー-------------



「おはようございます」

「おはよう。王国の代表団は?」

「偵察隊が確認しました。あと少しで到着する見込みです」

「よし、じゃあ行こう」


 一晩寝て珍しくすぐに起きられた。

 外ではみんなが朝ごはんを食べている。

 王国の代表団が来るらしいから早く準備をしなくては。


「王国の代表団の規模は?」

「報告によると数十台の荷馬車とその護衛団で、人数は約3000人ほどです」

「3000か、、、」

「恐らく威圧するためでしょう。王国にもメンツがありますから」

「くだらないことするね~」

「まあ北部にはそういう文化はないですからね」


 王国が捕虜交換にもメンツを持ち出してきているのに呆れつつも朝の支度をした。

 部屋着から応対用の服に着替えた。

 いつもの簡素なワンピースではない。


「やっぱりこれ便利だね」

「ですね。私も最近は鎧とこれしか着ていないような気がします」


 リールとおそろいのその服は改革の一部として導入したものだ。


「軍服という概念はありましたが機能性皆無でしたし全軍に配布したのは我が軍が初めてですね」


 そう、軍服だ。

 鎧と一緒に全軍に配布した。

 色は鎧と同じく黒をメインにして男女統一のズボンとスーツだ。

 白と金で飾られていて肩には布で作られたワッペンがつけられていて指揮官や隊長・伝達兵など様々な階級や役割ごとに分けられている。

 更に胸や腰の部分にはたくさんのポケットがついいていて統一感のある礼節を持たせながら実用性を追求している設計だ。

 この前全軍への配布が完了したもので一目で北部軍だとわかるようになっていて気に入っている。


「殿下、そろそろ行きましょう。代表団が来ます」


 そうしてゆっくり準備しているとすっかり時間がたってしまった。

 そうして僕たちは王国代表団との会談が行われる村外れの丘に足を進めた。

遅くなってすいませんでした。

次回投稿は金曜日になります。


読んでくれてありがとうございました!



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― 新着の感想 ―
[一言] 本日、この作品を見つけました。 誤字など有りますが、気にならないくらい面白いです。 一気に最新話まで読みました。 個性のある登場人物と、戦争を美化しない事がお気に入りです。 これからも…
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