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24話 狂信徒

「殿下、報告が上がってます」


 僕たち第一軍団側はもうすでに要塞内に侵入、市街地をほぼ制圧したのが確認されたところだ。

 ここでも住宅や軍事施設がことごとく焼け焦げていた。


「了解、読み上げてくれる?」

「はい、我が軍は第一軍団側、第二十五軍団側共に市街地を完全に掌握しました。残るメインキープも城壁が崩れていてそこから容易に侵入可能です。」

「了解、ありがとう。部隊を編成して突入準備をして」

「了解しました。指揮はエレナさんでよろしいでしょうか?」

「それだと一瞬で終わりそうだね、、、」


 彼女が突入するならまず負けないだろう。

 部下がついて行けるか心配だけど、、、


「トレビュシェットでメインキープ自体もぼろぼろなので予想より早く終わるでしょう。我々は近くの教会の塔から見ましょう」


 そういってリールはメインキープがよく見えそうな少し遠くの教会を指した。

 かろうじてトレビュシェットの攻撃から逃れていて傷はついていない。


「ちょうどいいね。じゃあ部隊編成が終わったのを確認したら行こう」

「了解しました」


 僕たちは教会に向かって馬を動かし始めた。

 教会に行く途中でも所々で敵の死体や無残に崩れた建物の残骸が見れた。

 まるで何年も前に破壊された廃墟のようだがまだがれきの下では火の粉がくすぶっている。


「王国の王都は何してるんだろう?」


 もうクルヴァ要塞が包囲されていることは敵王都に報告されているはずだ。

 早馬で1週間もかからないはずだ。

 もう包囲開始から2週間もたっているが王都を監視する諜報部隊からは派兵どころか徴兵の兆しすら見えないと届いている。


「私個人の予想ですが恐らく対応しきれていないのだと思います」

「対応しきれてない?さすがに防衛のテンプレくらいはわかるでしょ」

「まあ王国にもマニュアルみたいなのがあるのでしょうが今回は初の例ですからね」

「あ、そっか」


 リールにそういわれて思い出した。

 今回のクルヴァ要塞包囲は完全にこちら側の侵攻だ。

 戦争が始まってもう12年がたつが北部軍はこれまで防衛線しかしてこなかったのだ。

 今回の改革によって予算と人員ともに大きな余裕ができたからいいもののそれまでは人員の貴重性から一度の王国領に入れなかった。

 そう考えれば今回の包囲はある意味快挙なのかもしれない。


「ここですね」

「結構きれいな状態で残ってるね」


 僕たち一団は教会についた。

 教会はあの攻撃の中に置かれた割にはきれいな状態でしっかりとたたずんでいた。

 

「じゃあ入りますか」

「うん」


 僕たちは教会の扉を「ギー」という音を立てながら開けた。

 人気はなかったので僕が一番最初に入った。


「やっぱり人はいなさそうですね」

「いた人は多分メインキープに逃げたんだろうね」


 僕たちが人がいないことを確認した次の瞬間、、


「女神万歳!!」


 人気のなかった祭壇の奥から男が飛び出てきた。

 身構える暇もなく投げナイフが飛んできた。


ガキンッ!


 投げナイフは幸いにも兜を脱いでいた頭部には当たらず腹部に当たった。

 ナイフはオリハルコンの装甲を貫けず塗装もはがせないまま勢いを失って床に落ちた。

 

「殿下!」


 リールが僕を自分の後ろに引っ張って覆いかぶさる。


「防御隊形!」


 後ろの護衛達も駆け寄って来て盾を構える。


「大げさだってばリール」


 リールが心配した様子で抱いてくるので大丈夫だと伝える。


「しかしっ!」

「本当に大丈夫だよ。あたったの頭じゃないから。ほら、鎧には傷もついてないでしょ」

「、、、よかったです。本当に、、、」


 リールがよく見ると少し泣き出しそうになっていた。

 普通の状態では僕が負けることはないとわかっているからその時リールは心配しないが今回みたいな不意打ちだと心配して取り乱しそうになるからな~

 兵のみんなも過保護だけどリールも相当だな、、、


「さて、」


 リールの腕から抜け出して護衛の盾の壁の後ろから今度は兜をちゃんとかぶって頭だけ出して例の男を見る。


「こうして僕は生きているわけだけど、、、卑怯だね~」


 煽るように言った。

 そのあと僕は落ちたナイフを拾った。

 ナイフの先には透明なねばねばしたものがついていた。

 毒だ。


「このナイフでは心臓部分に当たったとしても殺せない、先っちょだけでも刺されば毒で死ぬと思ったんだろうけど残念、こんな粗末なナイフでは北部の職人が作った鎧は貫けないよ」

「卑怯だと?女神セレア様を信じない野蛮人の貴様らに持ち合わせる戦いのルールなどないわ!」


 セレア?

 ああ、この男司祭か

 

 男はよく見ると外套の下は白い小綺麗な服だ。

 

「セレア教の狂信者は理屈が通じないと聞いていたけどまさかここまでとはね」


 セレア教、王国と帝国南部やその周辺地域に広がる大陸1の規模を誇る宗教だ。

 女神セレアを唯一神として崇めている。

 北部は古くから精霊信仰を引き継いでいるからこれらと対立している。

 寛容主義の精霊信仰が中心の我僕たちからしてみれば唯一神以外認めず最近では身分の神格化と教会の権威のために戦争を繰り返しているからとてもじゃないが理解できない。


「貴様!野蛮人の拝金主義者のくせに尊きセレア様を愚弄するか!」

「技術を否定し戦争と迫害でしか影響力を持てないあなた達に言われたくないね。話にならない、全隊!やれ!」


 僕の合図で攻撃が許可されためその場にいた兵士みんなが男に向かって走っていった。

 みんな僕を攻撃したことを怒っているようだった。

 特にリールは誰よりも早く剣を抜いて男を滅多切りにした。

読んでくれてありがとうございました!



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