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23話 接近

ドーン!ドーン!


 攻撃開始から半日、あれから外では絶えず爆発音・衝突音が聞こえている。

 だが我々北部軍は一兵たりとも殺し合いに参加していない。

 120基のトレビュシェットが敵城壁を破壊し、その中の町を燃やしている。

 一方的に。


「殿下、よろしいでしょうか?」

「いいよ」


 入ってくることを許可するとリールが天幕に入ってきた。


「失礼します。報告を持ってきました」

「じゃあお願い」

「了解しました。現在我が軍は4周目の第1セッションに交代し、攻撃を続行しています」

「敵に動きは?」

「正面の城壁がほぼ破壊され防衛能力を失ったことから中央のメインキープに退却し、抗戦の構えを見せています。」

「人的な戦果は?」

「城壁を守備していた多数の兵を撃破しました。また要塞内で発生した火災でも多くの兵が死傷しているようです。観測員の予想では敵兵力の半数以上である1万2千人がすでに戦闘不能とのことです」

「了解、じゃあ遅くても明日の夜明けには要塞内に突入する。攻撃は突入ギリギリまで敵が降伏しない限り続行して」

「了解しました。他に何か命令はあるでしょうか?」

「じゃあ城壁の守備兵が全滅したことを確認したらトレビュシェットを順番に前進させて、メインキープもできれば攻撃しておきたい」


 今回量産したトレビュシェットは軽く丈夫なことで有名な南部の建築木材とオリハルコンを混ぜ込んだ金属でできている。

 だから20人ほどいればバラさずに持ち上げて動かせる。

 輸送とまではいかないが少し前進することは可能だ。


「了解しました。では偵察隊を派遣して城壁の状態を確認します。確認中偵察隊を巻き込まないために一時攻撃を停止しますがよろしいですか?」

「うん、それでお願い」

「かしこまりました。ではこれで」

「うん、いつもごめんね」

「いえいえ、殿下は能力こそ老将を越えますが体はまだ子供です。遠慮せず我々に頼ってください。」

「ありがとう」

「では」


 そういってリールは天幕を出て行った。

 リールに言われて久しぶりに思い出したが僕はまだ13歳なのだ。

 自分でも少し体に疲れがたまっていることもわかるんだけど、、

 2年で改革進めてきたからな~

 

「よし!早く終わらせて帰ろう!」


 そう気持ちのこもった独り言を言ってまた机につくのだった。



ー-------------



 そして一夜が明けた。


「攻撃停止!攻撃停止!」


 リールが大きな声で包囲陣地全体に叫ぶとさっきまでの爆音が嘘だったかのように周辺一帯が静まり返った。

 担当セッションの兵は最後の発射を終えると素早く装備を着て列に加わった。

 

「姫様、全軍配置が完了しましたぜ!」


 ベルトンが報告してくれる。

 今我が軍は装備を付けて戦闘準備が完了している。

 遂に本物の攻城戦だ。


「殿下、偵察隊からの報告だと城壁には敵兵が一兵もおりません。おそらくメインキープに逃げたほかにも民間人に紛れて逃亡した兵もいるようです」

「了解、兵士は見つけ次第無力化して」

「了解しました」


 包囲陣にはいくつか民間人退避用の隙間が設けてある。

 民間人を虐殺しても意味がないし、食わせるのも大変だ。

 厳しく審査しているつもりだったけど王国兵はもともとはただの農民だから見分けるのが難しくて見逃したのだろう。

 せいぜい職を失った大量の民間人を送って王国に間接的にダメージを与えようと思ったけどそれが兵士の逃亡に利用されるなんて、、

 北部軍では逃亡は考えもしないことだからこんなにもあっさりと逃亡するなんて想定外だった。


「敵は白旗掲げてる?」

「いえ、掲げていません。」


 リールが言う。


「結構好条件だと思ったんだけどね~」


 少し前にメインキープに伝令兵を行かせて「最高司令官の首と引き換えの全兵士の王都方面への脱出保証」を提示している。

 この状況だといいと思うんだけどな~


「恐らく司令官の貴族が自分の命惜しさに内容を自軍に隠しているのではないでしょうか?」

「愚かだね」


 ため息が出てしまう。

 あらためて王国軍は愚かだ。


「では我々が物理的に交渉しましょう」


 リールが笑顔でさらっと恐ろしいことを言う。

 たまに怖いところあるよな~

 まあ今考えてもしょうがないか。


「じゃあエレナさんに伝令、直ちに進軍を開始して」

「はっ!」

 

 伝令兵が素早くエレナさんの陣に向かうと数分後にエレナさんの第二十五軍団が動き出した。

 第二十五軍団は外部の人が見れば熟練兵だと信じて疑わないような一糸乱れぬ同一歩調で着実に敵へ近づいて行った。


「じゃあ僕たちも行こうか」

「はい、近衛隊も姫様に同行します」

「ありがとう」


 僕たちがいる第一軍団の陣も前進し始めた。

 リールの近衛隊は今回1000人参加しており、今第一軍団の先鋭兵と共に僕たちの周りを囲んでいる。


 少し進むとなんの攻撃もないまま城壁に到達した。

 いや、正しくは城壁があった場所に、だが、、、


「まじかで見るとやっぱり違和感ありますね」

「だよね、1日前にはここにちゃんと城壁があったんだけどな~」


 僕たちの前には城壁”だったもの”があった。

 トレビュシェットの24時間の絶え間ない攻撃にさらされて原型はとっくに無くなっている。

 上部は完全に消失していて基礎部分も焼け焦げた真っ黒の木の柱を残すのみとなっていた。


「じゃあ前に進もう」

「はい」


 何か悲しいなぁ

 何年のかけて積み上げられた石壁も一日で粉々になってしまった。


 僕たちはそんな城壁跡を横目に敵が待つメインキープに進軍していくのだった。

次話投稿は日曜日になります。


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