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22話 整地



「殿下、朝です。起きてください」

「う~ん、ふぁあ~」


 リールが起こしに来てくれた。

 今日は攻撃実行日だ。


「おはよう、リール」

「おはようございます殿下。軍団長の二人はすでに配置についてます」

「もうやってくれたの?」

「殿下が気持ちよさそうに寝ているもので」


 気を使ってくれたようだ。


「ありがとう。じゃあ僕も行くよ」

「了解です。」


 その後リールに着替えを手伝ってもらって外に出た。

 昨日に増してみんなが慌ただしく動いている。


「姫様!報告を」


 近くに待機していた工兵隊の隊長が報告に来た。


「じゃあお願い」

「はッ!現在工兵と技師総勢4000名を総動員して計120基を敵弓兵の射程ギリギリに等間隔に配置しています」

「了解、弾の配給はどうなってる?」

「はい、問題なく配給できています。油もあと数十分で配給完了です」

「わかった、報告ご苦労様」

「では私はこれで」


 工兵隊隊長は最後に敬礼して部隊の指揮に戻っていった。


「今のうちに食事をみんなに取らせておいて、始まったらノンストップで24時間攻撃を続けるから」

「了解しました。第一セッションの兵は休ませておきます」

「いよいよだね」

「はい、攻城戦の常識が変わるでしょう」


 120基に及ぶ例のあれには黒い布がかかっていて中を外から見ることはできない。

 その分敵は不思議がっているだろう。



ー-------------



「殿下、だった今油と弾の配給が完了したと報告がありました」

「了解、予定よりちょっと早いね。じゃあ最終警告を開始して」

「了解しました。近衛隊!警告開始!」


 そうリールが言うと後ろの数十人の近衛隊が敵に向けて大声で言った。


「降伏せよ!白旗を掲げよ!あと数分で攻撃を開始する!」

「降伏せよ!白旗を掲げよ!あと数分で攻撃を開始する!」

「降伏せよ!白旗を掲げよ!あと数分で攻撃を開始する!」


 リールが声の大きな人たちを選出したって言ってたけどここまで大きいとは

 耳をつんざくような大声が数分続いた。

 恐らく敵城内にも響いているだろう。

 

「殿下、白旗は確認できません。攻撃命令を」

「了解、じゃあ行こう」


 そういって僕は腕を高く上げた。


「全基攻撃よーい!」


 僕の声が包囲陣全体に響いた次の瞬間、

 例のあれにかけられていた黒い布が各担当の兵によって取り去られ、姿を現した。

 Tを逆さまにした土台に金具で補強されたまっすぐな木が固定されていた。

 その木の片方には皮と布で覆われた岩が、もう片方にはオリハルコンと鉄で作られた大きなかごいっぱいに入った岩があった。

 トレビュシェットだ。

 改革の2年の初めに僕が考案して試験を経て120基が量産された。

 今でもヴェスターとフルテッド王国で溶鉱炉をフル稼働して作られている。


「角度調整!目標!敵要塞塔!」


 1基につき30人の兵を配置している。

 それぞれの隊長が最終調整をしている。

 

「点火!」


 最終調整が終わると岩に油をかけ、松明で火をつけた。

 多めにかけるようにしているため岩は激しく燃えている。

 各基点火までの手順が終わると隊長が合図の赤い手旗を上げた。


「殿下、全基準備完了です。合図を」

「じゃあ行こうか!北部に栄光あれ!」


 僕が北部軍の掛け声を言うと上げていた手を勢いよく振り下ろした。

 

「全基発射!うち続けろ!」


 僕が手を振り下げ、多声で言うと各基の隊長が復唱した。

 

「発射!!」

「発射!!」

「発射!!」

「発射!!」

「発射!!」


 発射の合図が響いた次の瞬間。


ガシャン!

ゴォォォォォォォ!!


 中央の木を抑えていた金具が兵によって勢いよく外される。

 反対側のかごいっぱいに詰まった岩がスピードを上げ落ちると同時に布と皮に包まれた岩が轟音を出しながら燃え、遠心力で振り上げられる。

 

ガシャ!!


 岩が一番上まで来ると包んでいた布と皮が木から外れ、燃える岩を高く打ち上げた。


ゴォォォォ!!!


 120基ものトレビュシェットから放たれた岩は空を自らを燃やす炎によって煙で覆いながら弧を描いて敵要塞に向かっていった。

 空は煙で覆いつくされまるで雷雲がそこだけ発生しているようだった。


ドガシャァァ!!


 異様な景色を作りながら要塞に向かっていった岩は遂に城壁や塔に到達した。

 石レンガでできた城壁はまるで子供が作った砂の城のように簡単に破壊された。

 岩は城壁を突き破って奥の地面に到達して初めて砕けた。

 岩が砕けると多めに塗った油が周辺一帯に飛び散り城壁も住宅も無差別に燃やした。

 中には油をもろに浴びて焼死した敵兵もいた。

 

「うおー!!!」

「うおー!!!」

「うおー!!!」

「うおー!!!」


 北部軍がいる包囲陣からは歓声が上がり、要塞内からは悲鳴が絶えず聞こえた。


「そのまま続けて、今日中に城壁を無力化する。1時間後に第二セッションに移行、交代させて」

「了解しました」」

 

 この兵器を使うにあたって交代制を導入した。

 いくら力自慢の兵が集まる北部軍でも岩が満載したかごを巻き上げるのは時間に限界があるからだ。

 4つのセッションに分け1時間ごとに交代する。

 これで休憩も取りながら弾がある限り24時間放ち続けられる。


「じゃあ後は任せたよ。僕は突入に備えて計画立てるから」

「了解しました。あとはお任せください。半日で要塞を更地にします」


 そういってリールに指揮権を移譲し、僕は本陣の天幕に戻っていった。


 外からは悲鳴と爆発音、そして味方の歓声が絶えず聞こえ続けた。

次話投稿は金曜日になりそうです。


読んでくれてありがとうございました!



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