21話 包囲
「なかなかしぶといですね。我々を見て降伏すると思ったんですが」
「だね、まあ恐らく中で無能な貴族が渋ってるんでしょ」
「でしょうね」
クルヴァ要塞、豊かな穀倉地帯に囲まれそれで得た富によってヴェスターまでとはいかないが一地方の要塞には大きすぎる城壁を構える王国東部の防衛拠点だ。
「まあ補給線も盤石だし時間は十分あるしゆっくりいこう」
「了解です」
ベルトンが返事を返す。
僕たちはあの後敵の残された補給部隊を蹴散らしながらこのクルヴァ要塞まで進軍してきた。
そして今2万と補充された3千の北部兵がそれを包囲している。
包囲が始まってもう5日目、敵との戦闘はなく兵糧攻めを継続している。
「敵の食料はどれくらいもつ予想?」
「この規模の要塞ですと周辺住民の分も考えて結構な量が備蓄されてるでしょうね。最低で3か月ってところでしょうか」
「ふ~む、ここは穀倉地帯のど真ん中だしさすがの王国軍でも備蓄してないってことはなさそうだね」
来て包囲してみたはいいものの結構退屈だな~
3か月待たなきゃいけないのか、、、
退屈、、、
「退屈だ~」
「お、戦場でそんなこと言えるようになるなんて姫様も慣れてきましたね」
「そりゃ、5日間何も起こらない戦場なんて退屈すぎるよ」
実際ここ5日間天幕の中で飲み食いするか包囲陣地を散歩するしかやってない。
要塞の中より戦場のほうが退屈だなんて、、、
「まあ実際包囲戦は退屈ですからね。しかも小競り合いがあれば退屈ではないものの今回は敵も慎重になっていて出てきませんからね」
「、、、あ、そうだ」
そうだ、あれがあったじゃないか!
「何かありました?」
「ベルトン、補給部隊に連絡してヴェスターからあれもってくるように言って」
「え、あれ出すんですか?さすがにオーバーキルでは?」
「早くしないと敵王都から援軍来るかもだし何より退屈でしょ?」
「後者の方がメインの理由な気もしますがまあ一応呼んでおきます。で、どれくらいもってきます?」
「う~んそうだね~」
僕は少しいたずらな笑みを浮かべた。
「じゃあ全部で!」
「了解で、、、全部!?」
ベルトンが驚愕した顔で僕を見てきた。
6日後ー-------------
「誰かこっちに来てくれ!部品の交換が必要だ!」
「了解、今行こう!」
包囲陣では二日前から大勢の工兵と技師が慌ただしく動いていた。
「いや~驚きましたよ。いきなり初の実戦投入なんて」
「ごめんって、ずっと待ってるの暇だからさ」
第二陣補給部隊と一緒に一度要塞に行っていたリールがさっき帰って来て早々愚痴を垂れている。
それもそのはず運んできたのは食料でもなければ人員でもなく金具と木材なのだから。
「それで攻撃はいつ始まりますか?」
「工兵と技師次第だね。全部完成したらすぐにでも」
「ではもうすぐですね」
例のあれが届いてから二日たったが、半数はもう完成している。
もう半数も最終工程に入っていて今日中には終わるだろう。
「あと使者を送ってくれる?」
「敵にですか?なぜ?」
「一応警告をしようかなって一般市民を積極的に殺すつもりはないし、僕も虐殺者にはなりたくない」
「なるほど、あれに至ってはそれも必要でしょうね」
「警告で降伏してくれてもよし、降伏しないなら慈悲の元で警告したうえで殲滅するだけだよ」
では声による警告も行いますか?
「じゃあお願い」
「了解しました。近衛隊で声が大きい者を集めておきます。ではこれで」
リールはそう言って天幕を出て行った。
ちょっと外身に行ってみるか。
バサッ
天幕の入り口の布をどかして出ると相も変わらずみんなが忙しそうに動いていた。
前には石の巨大な城壁がそびえたっている。
だが頑強には見えない。
きれいすぎるからだ。
ヴェスター要塞の場合数えきれないほどの籠城戦を耐え抜いた城壁はつぎはぎだらけだ。
ヴェスター要塞は一度も落とされたことがないがそれはこのクルヴァ要塞もそうだ。
だが違う点がある。
ヴェスターは数百の戦いを耐えてきたがこのクルヴァ要塞は一度も戦ったことがないのだ。
つぎはぎだらけのヴェスターは言い方を変えれば攻撃を受けるたびに修正してきた後なのだ。
実戦経験がないクルヴァ要塞は修正どころか劣化していくばかりだ。
それに守備兵も今回が初陣だろう。
恐らく正面から攻めてもこちらに軍配が上がるだろう。
だけどその場合こちらにも多くの損害がでる。
しかし、、
今回はあれがある。
明日には勝敗が明確になるだろう。
「お!姫様!」
ベルトンが話しかけてきた。
「ベルトン、第一軍団は調子どう?」
「そりゃあもうバッチリですよ。いつでも戦えます。」
「それはよかった。早ければ明日には戦闘が始まるからね」
「了解です。それにしてもやっぱり装備が一緒だと連帯感あっていいですね」
「まあそれも一つの目的だからね」
「あと特にこの腕章、兵たちの間で大事にされてますよ」
そう言ってベルトンは左腕に着けている黒と金・白色の腕章を見せてきた。
これは僕が考案したわけではなく軍団長や兵達が考案して広まったものだ。
今圧力を強めてきている帝都の皇室から僕を守ろうとみんなが僕に敬意と忠誠を示そうとしてくれている。
黒の下地に北部の象徴の白の線と僕の紋章である第五皇女の紋章が金で縫われている。
これは北部軍や北部の諸侯・一般人までにも普及していて北部ではどこでも見る。
「なんか自分の紋章をみんながつけてくれるのって不思議な感じだな~」
「それだけみんな姫様のことが好きってことですよ。ですが帝都の圧力も強くなってきてますし心配ですね。何もなければいいんですけど、、、」
「だね、何もなければそれに越したことはないね、、、」
帰省から無事帰還しました!
リフレッシュできたのでこれからは一層頑張ります!
読んでくれてありがとうございました!
もし面白い・続きが読みたいと思っていただけたらブックマークや広告下の☆☆☆☆☆でポイントを入れていただけるとうれしいです!
評価はモチベに繋がりますのでよかったらお願いします!