16話 対峙
16話
題名
ザッザッ
2万の真新しい鎧を着た軍団が小走りで進みつ図けている。
「到着はどれくらい?」
「このままいけば3時間ほどだと思います」
リールが素早くこたえてくれる。
「それにしても王国は懲りませんね」
「まあね、それに今回は恐らく様子見だと思うよ。装備も前回みたいに高級ではないって聞いてるし」
「2万で様子見ですか~王国は自国民を何だと思ってるんですかね」
「王国は帝都と同じく身分の影響が強いからね、それに人口では北部の数倍だから」
王国は人が比較的少ない北部とは違い莫大な人口を抱えている。
人口に対して国土が小さいため農地が不足気味だった。
口減らしの意味もあるのだろう。
その証拠に都市部の人間が徴兵されることはほぼない。
人は何よりの財産だというのに、、帝都はともかく北部では考えられない。
「そんなに人口余ってるなら呉れてもいいんですがね~」
隣で引き続きベルトンがぼやいている。
まあ、北部は常に人手不足なのは事実だけど、、、
移民と手厚い保障で何とか保っている状況だ。
金も軍隊もあるのに子供がいないなんて皮肉だね。
「でも徴兵された王国兵には申し訳ないが手を抜くわけにはいかないですね」
「そうだね」
「この速度だと王国の不意を付けますし焦らず行きましょう」
「うん!」
今僕たちの速度は3速だがこれは普通の軍ではありえないことだ。
全身鎧を着て大きな盾と槍、剣を持ったまま休憩なしで小走りするなんて普通は無理だ。
2年のオリハルコンが混ぜてある最新の装備と最新の馬車に要(?)る交代制の移動しながらの休憩、そして何より厳しい選考を勝ち抜き、更にそのうえで地獄のような2年の訓練をしてきた彼らだからできることだろう。
同じく古参兵も従来とは比べ物にならないほどの訓練をしてきた。
今までの戦術を何もかも変えたのだ、並大抵の努力ではなしえないことだ。
「そういえば王国軍の指揮官は誰?」
ベルトンに聞いてみる。
「まだ不明ですが少なくとも前回の奴ではないことはわかってます」
新指揮官だろうか?
でも少し残念だな~
あの指揮官は王国軍に珍しく優秀だった。
あの指揮官となら少なくとも話は通じそうだった。
「僕たちに負けたから処罰されたのかな?」
「わかりません。けど大金注いだ5万くらいを全滅させたんですからあり得ますね」
「なんだか申し訳ないことしちゃったかな、、」
「まあ戦争なんてそんなものですよ」
ベルトンとそんな話をしていると国境の大森林の出口が少しずつ見え始め、木々が少なくなってきた。
「あれが、、、」
「敵ですね」
ベルトンが言ってきた。
「殿下、布陣はどのようにしますか?」
続いてリールが布陣をどうするか聞いてくる。
「今回は特殊な戦術は使わない、純粋な新北部軍の実力を見てみたい。だからセオリーに従って平凡な布陣でお願い」
「了解しました。それならば10分程度で終わるかと」
「じゃあ僕たちは本陣で待ってるよ。リールも命令が終わり次第来て」
「了解しました。では後で」
「うん、後で」
リールと別れた後近衛隊と高台に本陣を設営した。
後ろからはリールの命令が飛び交っているのが聞こえる。
リールの命令、指揮に従って2軍団が寸分の狂いなく陣形を整える。
足も動きが統一され上半身は命令がない限り少しも動かない。
それでいて和やかな雰囲気は2年前と全く変わっておらず友情と最強の連携を備えたまるで一つの生物のような軍隊が後ろに見えた。
「敵も動き始めたようです」
ベルトンがそう言うと草原の反対側の集団がのっさりと動き始めていた。
統制は一応取れているようだがこちら側の布陣速度と比べるとあまりに素人感丸出しだ。
列も乱れていて動きもバラバラだ。
まあ農民を徴兵して並ばせたにしては上出来だが果たして新しく生まれ変わった我が軍対等に戦えるだろうか?
「殿下、布陣完了です」
そう考えているとリールがそう報告してくれた。
本陣がある高台から下を見下ろすとそこには真っ黒の鎧に身を包んだ約2万の軍団が寸分の狂いなく均等に並んでいた。
戦闘がいつ始まってもおかしくなく、彼らは身動き一つせず僕からの命令を待っている。
「姫様、あれ見てください」
隣のベルトンが草原の中心を見ていった。
馬が4騎ほど出てきて中心で止まっている。
「あれは恐らく敵の指揮官かと」
続いてリールが言った。
恐らく僕たち指揮官を呼び寄せて挑発でもするのだろう。
「どうします?」
ベルトンが困った様子で言った。
それもそのはず、僕は指揮官ということになっているが外部の人間はそれは皇族に配慮してのことで本当はベルトンかリールが指揮権を持っていると思っているからだ。
ここで鎧を着て指揮する気満々の僕が出て行ってしまうと僕が指揮権を持っていることが王国にも帝都にもばれてしまう。
、、、でも、、面白い!
僕はいたずらな笑みを浮かべるとベルトンに聞いた。
「ベルトン、もう一度聞くけど敵総数は?」
「2万3千ですが、、、それより私が行ってきます。姫様はリール嬢と待っててください」
「いや、それはいい。それより2万3千の墓石を用意して!」
そう言うと僕は本陣を出て馬に飛び乗った。
「ちょ!姫様!」
「殿下!」
二人が驚いて制止しようとしてくるが僕はそのころには馬で駆けていた。
1日遅れました。すいません
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