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15話 2年後

15話


題名



「2年ですか!?」



ー2年後-------------



 あの場にいた全員が驚きの声と不可能だと予想を立てたあの時は誰も信じられなかっただろう。

 本当に実現するなんて。



「殿下、時間です。」

「わかった、今行くよ」


 シルクのような白髪のロングヘアーに宝石のような碧眼の小柄な少女。

 僕だ、2年前から見た目は何も変わってないがその中の心はより強くなった。


 僕は2年前から何も変わっていない自分の部屋から出て正門に向かった。

 2年ぶり2回目に出陣だ。

 もちろん全身があの鎧に包まれている。


「今日であの合戦からちょうど2年ですね」

「そうだね、意外と予想って当たるものだね」


 そうだ、あの合戦から今日でちょうど2年。

 あれから王国は領土から1度も出てきていない。

 それと同じく僕たち北部軍も偵察隊以外要塞から出ていない。


「大将の到着だ!お前ら敬礼!」


 ベルトンが大声で周辺に伝える。


「北部に栄光を!」

「北部に栄光を!」

「北部に栄光を!」

「北部に栄光を!」

「北部に栄光を!」

「北部に栄光を!」


 周辺にいた兵士が一斉に胸に拳を当て敬礼し、北部軍の合言葉を叫ぶ。

 彼らは2年前とは違いバラバラの装備ではなくすべて黒で統一されたオリハルコンと鋼が混ぜられた豪華な全身鎧を着て、金色の紋章が書かれた腕章をつけている。


「状況は?」


 僕がベルトンに聞く。


「はい、現在王国軍が2年ぶりの越境をしてここに向かってきてます。」

「数は?」

「確定ではありませんがおよそ2万、騎兵多めです。」

「じゃあこのままの数で出陣しよう」

「よいのですか?もう半日待てば倍の数を出せますが」


 今準備が完了して正門に並んでいるのは2万だ。

 2年前とは違い数は同数、しかし2年前の僕たちではない。


「大丈夫、どうせ敵も騎兵以外ろくな訓練もしてないだろうから」

「そうですか、では行きましょう」

「うん!」


 今回参加するのはベルトンの第一軍団と新設された第二五軍団だ。

 ベルトンが号令を出すと少しのタイムラグもなく行進し始めた。


「にしても閣下がこの前愚痴吐いてましたぜ」

「まあこの二年で結構規模拡大したからね~」


 この二年は僕も他のみんなも血眼になって北部軍を強化し続けた。

 新しい鉱山を開発し新しい採掘法で莫大な利益を鉱石産出量を得た。

 それを元手に大量に統一された最新のオリハルコン装備を生産し、配布した。

 軍というのはほとんどの場合自前の装備を各自が整える。

 北部軍は歴戦兵が多いため他よりは良質だがそれでもばらつきがあって、中には粗悪品もなくはなかった。

 そこに統一された、しかもオリハルコンを混ぜ込んだ最新の装備を配布したのは北部の豊かな富があってこそできた荒業だ。

 装備で僕たちを超えるのは他の軍はおろか皇宮にいる近衛騎士団すら不可能だろう。

 それが世界最大の軍隊となれば誰も最強の称号に異を唱える者はいない。


「まさか質では飽き足らず量も増やすなんて驚きましたよ。しかも10万人も」


 装備の質を高めると同時に世界最大の軍隊を更に拡大させた。

 もともといた20軍団と近衛隊の計20万人を更に強くすると同時に10万人を超える新兵の募集を行った。

 今回出陣する大25軍団もその結果生まれたものだ。

 北部人だけではなく帝国の南部人を除いたほぼすべての民族で選抜された者達だ。

 ほとんどは元々要塞付近で暮らしていたり北部諸侯の私兵だったため忠誠深く、もともといたみんなとも仲良くやっている。


「いや~王国のやつらどんな顔しますかね~」

「楽しみだね!」


 僕はただの行進でさえ」一糸乱れぬ動きの黒の軍団を見ながらいたずらな笑みを浮かべた。


「王国は恐らくある程度の強化は予想してるだろうね。でも、、」

「ここまではそもそも予想すらできない、、と」

「ご名答!」

「そういえば今回はどこまで行くんですか?」

「初戦の結果にもよるけど今回は行けるところまで行ってみるよ」

「まあ今回は前と違って2万ですから兵站も心配しなくていいですからね~」


 そうだ、前回は大勝を収めても食料の問題から逆侵攻はできなかった。

 しかし、今回は違う。

 2万の人数に加え、新しい携帯食も大量に持ってきている。

 今回は行けるところまで行こう。


「殿下!」


 最後尾で物資の確認をしていたリールが戻ってきた。

 

「おつかれ!」

「もう少し早く言ってくれれば移動しながら何を積んだか確認しなくてもよかったんですがね~」


 今回の出陣は昨日伝えたばかりだった。

 普通は1週間かける準備を1日でやってもらったリールには感謝しかない。


「ごめんごめん、今度は余裕もって言うよ」

「そうだといいんですがね~、あと一応報告しておきますが要塞にあった携帯食かき集めてきたので最大2か月無補給で行けます」


 本当にこの優秀すぎる副官には感謝しかない。


 リールのありがたさをかみしめるカーナだった。


「あ、あと報告が上がってます」

「了解、聞かせて」

「はい、王国軍は2万から更に拡大中、森林を出た平原で野営地を設営し、我々を待ち構えています」

「拡大中か~早く行ったほうがよさそうだね」

「ですね」

「ベルトン、全軍に第3速でも行進を伝達してくれる?」

「了解です!」


 2年で戦闘術だけではなくて移動も強化した。

 その過程で1速、2速、3速、4速の四つの行進速度が生まれた。

 3速は結構速いほうの行進だ。

 交代制で馬や馬車で歩兵が休んで昼夜問わず行進する。

 3速だったら平原まで1日ってところだろう。


「姫様、伝達完了です!俺たちも行きましょう」

「わかった!行こう!久しぶりの戦場だよ!」


 僕たちは歩きから小走りに移行した歩兵のみんなと一緒に馬の速度を少し早めた。

 王国軍が待つ平原に向かって。

お読みいただきありがとうございます!


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