11話 戦果
「怯むな!前進せよ!」
「敵はこれで最後だ!」
所々から各隊長が兵を鼓舞していた。
対して王国兵は鼓舞していた指揮官もいなくなり絶望した様子で戦っていた。
「敵司令官は包囲を抜けました」
近衛隊の指揮から戻ってきたリールが報告してくる。
「了解、敵司令官のグループには干渉しないように包囲の穴を閉じて」
「かしこまりました、直ちに」
リールがそう言うとそこからの動きはさすがの素早さだった。
敵司令官が必死になって街道を目指している中、後ろでは残された兵が再び包囲されて見る見るうちに殲滅されていった。
「敵の殲滅は完了です」
リールがそう告げる眼下には王国兵と軍馬の亡骸が無数に広がっていた。
「了解、こちらの損害をまとめて報告して」
「かしこまりました、各軍団長を集めて情報をまとめます。あと、、、」
「なに?」
「あらためて、おめでとうございます。我らが姫、我らが指揮官」
「、、、ありがとう」
それまで王国兵の亡骸を見るたびに責任や罪悪感を持ったが、リールが思い出させてくれた。
僕には仲間がいる。
たとえ世界のすべてに嫌われようとも裏切らない仲間がいると。
「じゃあ後は任せていい?」
「もちろん!お任せください!」
そういわれると一気に肩の力が抜けた。
一気に疲れがのしかかってゆっくりと本陣の天幕に向かうのだった。
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「おはようございます」
「ん~」
誰かが肩をゆする。
「殿下、おはようございます」
リールだ。
ん?
今何時だ?
「は!どれくらい寝てた!」
ここが要塞でないときずいて飛び起きた。
「1日はぐっすりでしたよ」
「え!?」
「軍は?敵は?後処理は?」
「すべてやっておきました。起こしても悪いので」
しまった。
あの後天幕に戻った後少し休もうと簡易ベッドに鎧のまま寝ころんだらそのまま寝てしまっっていた!
「ごめん!!!」
「いえいえ、後処理はやっておいたのでもうすぐ出発できますよ」
リールが女神に見える。
「本当にありがとう!!!」
「姫様はまだ子供ですから、戦いが終わったらあとはお任せください」
「女神様~」
リールに抱き着いた。
「さあ行きましょう、軍団長たちが待っています」
「うん!」
鎧を脱いでいつものワンピースに着替えた。
「こちらです」
リールについて行き天幕から出ると一面に天幕が広がっていた。
「まるで町ができたみたいだね」
「ですね、ここも要塞と変わらず活気にあふれていますよ」
18万人分の寝床が並んでいる。
簡易的といえど戦場だった平原を埋め尽くして一つの小さな町ができている。
「姫様だ!」
「おめでとうございます!」
「初勝利おめでとう!」
所々から兵たちの声が聞こえてくる。
「みんなもありがとう!」
そう言うと中央のひときわ大きな天幕が見えてきた。
「あそこです。全軍団長が待ってます」
「わかった!早くいこう!」
1日寝て疲れも吹き飛んだ僕は走って向かった。
「あまり早く走ると転びますよ~」
「大丈夫だって~」
まったく、リールは心配性だな~
ん?足がひっかかって、、、
ズサ~
見事に転んだ。
「ほら、言ったじゃないですか」
「ごめんなさい、、、」
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「ずいぶんと遅かったですね」
「まあね~」
あの後着替えてまた中央の天幕に来た。
天幕の中にはベルトンや第三軍団を指揮していたバークレーをはじめとする各軍団長が集まっている。
「それより事後処理の報告を」
「了解です」
軍団長を代表してベルトンが報告し始める。
「今回は敵は約3万、こちらは18万でスタートしました。敵の兵はいつもに比べたら精鋭でしたが我々からすれば素人の寄せ集めです」
「まあ王国には専業兵はほとんどいないからね」
「はい、なので敵が我々の姫様に対する忠誠心をあなどった時点で兵力、練度共に圧倒的状況でした。さらに今回姫様の天才的な指揮で戦果をさらに拡大することができました」
「最終的な戦果とこちらの被害は?」
「敵は最終的に指揮官の護衛の数十人以外はほぼすべて殲滅、そのほかはすべて捕虜です。」
「おー!」
バークレーが驚きの声を上げる。
歴戦の老将に認められたみたいで少しうれしかった。
「それに対しこちらの被害は戦死300、負傷1200のみです」
ベルトンが報告を終え座る。
「大戦果ですぞ!数的有利だったといえど3万に対し百分の一の損害で完勝するなど前代未聞です!これで敵は半年は何もできませんな!」
バークレーが珍しく興奮した様子で言う。
「ありがとう、、、ベルトンは戦死者全員の情報をまとめて後で提出してくれる?」
「了解です。今夜は宴ですね!」
「まあ一日くらいはいいか」
本来ならばすぐにでも帰って体制を整えて王国領土に逆進行するべきなのだが、まあ1日くらいはめを外すときがあってもいいだろう。
「野営地の警備は欠かさないようにね」
「もちろんです!」
「あと兵站も注意して、宴でバカスカ食料を消費して帰りの分がありませんなんてことないようにね」
「もちろんですって、どうせ帰りはみんな二日酔いで何も食べる気になりませんから」
「、、、まあ無事に帰れればいいや」
「じゃあ僕は散歩してくるからよろしく~、資料は僕の天幕に置いといて」
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