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9話 戦況

「突破しろ!姫様に勝利を!」


 第一軍団と敵最左翼が衝突してから十数分、前線では敵味方が入り乱れていた。

 あれから十数分、第一軍団、第二軍団に続き第三、第四と数分ごとに右側の軍団が順番に突撃していった。


「まさか、、、これを意図して起こしたのですか?」

「当然!」

 

 僕は誇らしげに驚いているリールに言う。


「軍団長たちが指示通りやってくれたみたいだからもうすぐ一般の兵も気づき始めるくらいには結果が表れると思うよ」

「すごい、、、やはり殿下は戦術の天才ですね」

「ほめても何も出ないよ」


 なぜここまで褒められているのか。

 それは今僕の戦術が大成功を収めているからだ。

 第一、第二、第三と順番に右から並べていき、突撃も右から一定間隔で順に行っていく。 

 そして最初にぶつかるのは精鋭揃いの第一軍団、敵の最左翼は一瞬で崩壊する。

 そうすれば第一軍団が撤退した敵の位置に入れる。

 第二軍団が到着するころには第一軍団は反転して敵側面から攻撃している。

 そうすることで特に細かい指示などをすることなく敵を半包囲できる。

 このまま続けていれば中央の本陣まで到達して最終的に敵は最右翼まで追い詰められて崩壊するだろう。


「戦争っていうのは圧倒的有利でも損害は少なからず出る。でもこうすれば有利な立場を無駄なく利用できるでしょ」

「殿下、、、いつ考えつかれたのですか?」

「そりゃ要塞に何年もいたら暇すぎて戦術の一つや二つ思いつくよ」

「これは戦争における革命かもしれませんね」

「そうかな?」

「そうですよ。だって今まではただ数と練度がものを言っていたんです。しかしこれなら不利な状況からでも勝てるのでは?」

「まあそんな不利な状況が来ないことを祈るよ。ほら、そろそろ結果が見えてきたよ」


 僕がそう言って指さした先には北部軍が超優勢な戦場が広がっていた。

 王国軍は中央の本陣を放棄して右翼に仮の本陣を立てて立て直そうとしているがもう無理だろう。

 所々で王国軍が各個撃破されておりもう兵力的にも組織的抵抗がかろうじてできているくらいだ。

 

「終わる前に僕たちも行こう!」

「了解です。近衛隊で護衛します」


 初めての指揮の結果を見てみたくて前線に行くことにした。

 敵の弓兵は全滅していて少し離れていれば安全だったのでリールも反対はしなかった。

 

「全隊殿下を護衛せよ!」


 リールの掛け声で近衛隊が僕たちの周りを囲んで守る。


「準備できました。行けます」

「わかった。じゃあ敵の仮本陣がある最右翼へ行こう」


 そうして僕たちは敵軍の最右翼に向かった。

 行く途中、最初にあった敵の騎馬隊と近衛隊の衝突の跡地を通った。

 所々に馬や兵士の死体がある。

 異臭が所々から上がっている。


「やっぱり死体は何回見てなれないね」


 最前線の要塞で暮らしていため当然運ばれてくる負傷兵や味方の死体は何回も見たがそれでもなれない。


「殿下、無理に見なくてもよいのですよ」

「いや、大丈夫、、」


 転がっているのはすべて敵の死体だけどそれでも彼らを弔う責任が指揮官の僕にはあると思っている。

 もっと強くならなきゃ


「そろそろつきます。殿下、一応兜をかぶってください。」


 前線がよく見えてきたところでリールに兜の尾を締めるよう言われる。


「わかった」


 馬に固定してあった兜を取ってかぶる。

 鎧と同じくファスターが作ったオリハルコンの真っ黒に塗られた兜だ。

 オリハルコンで作られているため見た目に反してとても軽い。

 伝説の怪獣ドラゴンを模して最低限の装飾がなされている。


「殿下!」


 前線で第一軍団の指揮を執っていたベルトンがきづいて寄ってきた。

 護衛の兵士を連れている。

 ベルトンの護衛の兵も第一軍団屈指の精鋭兵だ。

 本来ならば近衛隊に引き抜かれるほどの人材だが特別に第一軍団の副将もかねて残っている。


「あっベルトン!指揮は大丈夫なの?指揮官でしょ?」

「今は後続の第2軍団とポジションを後退して第一軍団は休憩中なので大丈夫っす。それより姫様こそ何で前線に?もう結果はわかりきってますよ?」

「せっかくの初指揮だから勝敗をこの目で見ておきたくてね」


 前線では両軍兵士が激しくぶつかり合っている。

 北部側の兵が各隊長の指示で一定時間たつと交代して治療を受けているのに対して王国軍は圧倒的兵力不足のため交代できず死者が増え続けていた。


「長年戦場にいますが兵力で差がついててもここまで一方的になったの初めてですよ」

「僕の戦術がうまくいってるみたいだね」

「ええ、姫様の戦術で王国軍を半包囲していて、徐々に包囲の輪を狭めてもうすぐ完全な包囲が完成します」

「敵には脱走兵が続出してるみたいですね」


 リールが言う。


「敵将の指揮力で何とか体裁を保っている感じですぜ、リール嬢」

「そのリール嬢っていうのやめてくれませんか?」

「いいじゃないですか、一応貴族の令嬢でしょ」

「私が帝都でお茶してるような小娘に見えますか?」

「とにかくいいじゃないっすか」

「はあ、、まあどうでもいいです」

「リールはそうゆうとこ気にするよね」

「昔帝都に行ったときにマナーがわからなくて帝都の令嬢に馬鹿にされたことがありましてね」


 彼女なりのコンプレックスがあるようだ。


「それより、敵の指揮官が前線に立っているようです」


 リールが示した方向には指揮官らしき初老の王国兵が必死に前線で他の王国兵を鼓舞していた。

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