第1話「敗北」
どうにか自分に言い聞かせながらも、継続してきた希望が打ちひしがれた時、これほどまでに喪失感を感じるものなのか。
2021年1月20日ジョー•バイデンがアメリカ大統領に就任した。
日本のいちサラリーマンである平松郁夫ではあるが、この約2ヶ月、仕事以外のプライベートの多くの時間を、アメリカ大統領選挙に纏わるYouTubeやTwitterの閲覧に捧げてきた。
2021年1月21日 ドナルド•トランプ敗北翌日
平松はこの2ヶ月でチャンネル登録した、及川幸久チャンネル、張陽チャンネル、闇のクマさんチャンネル等、十数チャンネルあるが、どうしても今は見る気にはなれなかった。
平松は、日本には今、アメリカ大統領選挙の件について4種類の考え方があると感じていた。
一つ目は平松のように、トランプが負ければC国の日本に対する圧力の変化を予期し、何としてでもトランプに勝ってもらいたいと思ってきた、未来を心配する者たち。
二つ目は、そのような変化の予期を理解しながらも、選挙の結果を受け入れバイデン政権に対して上手く付き合う準備を始めなければいけないといってきた、楽観的な者たち。
三つ目はアメリカ大統領選挙にそこまで興味は無いが、日々マスメディアで流されるトランプ落としの報道を信じ、トランプ憎しでバイデンを応援してきた、情弱な者たち。
四つ目は全くアメリカ大統領選挙に興味がなかった、無関心な者たち。
1番、平松が理解出来ないのは、二つ目の楽観的な者たちの考え方だ。
何故、予期されるリスクを理解しながら、不正選挙があった事も理解しながら、バイデン政権の対応を考えた方が良いなどと言えるのであろう。
中国とバイデンの繋がりを見ればそんな事、日本人が、日本政府が何とか出来るものではないはずだ。
しかもこの考え方の人達には、エリート層と呼ばれる利口な人達が多いように感じる。
更にTwitter上では、平松と同じ考え方を発信していた言論人に対して、出演していたネット番組「虎ノ門ニュースを降板しろ」だとか、「世界緊急放送を吹聴していた者は謝れ!」といった投稿が横行している。
それこそ、ネットの圧力によって、それらの言論人を降板させたり謝らせたらしても、全く不毛な事である。Twitterの閲覧にもウンザリしていた。
しかし、平松のように日本の1サラリーマンが感じるリスクはまだ起こってはいないし、それは将来の事であろうと考えていたが、平松の思うスピードよりは格段に早く、それらのリスクが日本にも迫っていた。
時を2日戻し、2021年1月19日
C国は海警法案の武器仕様規定の審議を行い、武器の使用に関する見直しを始めた。
続く