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幻想の夏  作者: 庵屋香炉
1章 ぼっち達と夏祭り
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「どうせなら、星になりたかった。」

 いつだったか彼女はそう言った。何故、そんな話になったのか、詳しくは覚えていないけど、彼女が消えた今でも覚えている。



 彼女に初めて会ったのは6年前、高校3年の夏祭りの時だ。


 ⚱⚰⚱⚰⚱⚰⚱⚰⚱⚰⚱⚰⚱⚰⚱⚰⚱⚰⚱⚰⚱⚰⚱⚰⚱⚰⚱



 屋台を渡り歩く人々を、東屋の下から、白磁の狐と見ていた。

 歩いている人はみな知らない人ばかりで、ガヤガヤとしていて、とても騒がしい。


 視界にいる人は、どこを見ても笑顔だったり、時折不満げな表情をしているが、大体隣には連れがいる。

 だが、俺はなんの表情もなく、1人、溶けたかき氷を啜っていた。


 いつもは農作業をしている近所の爺さん、婆さんばかりのこの田舎も、夏祭りの時だけは、村の外から人が大勢来る。


 不意に、首筋が痒くなった。

 どうやら、蚊に刺されていたようだ。それをぼんやりと掻いていると――。


 ねぇ、と急に知らない女性の声がした。まるで、急に黙ってしまった友人を訝しむかのような声だった。

 だが、生憎と俺にはそんな友人はいない。


「ちょっと、そこのつまらなそうな人。無視しないでよ。」


 ちょっぴりツンとした声で続ける。

 俺のことらしい。


「初対面で、いきなりつまらなそうな人ってひどくないか?」


 すると、その女性――というより、むしろ同い年くらい――は悪びれる様子もなく、隣に座って、


「祭りに来てまで、わざわざそんな顔しながらぼんやりしてるんだもの。つまらなそうな人って言われても、仕方ないじゃない。」


 と言って、チェシャ猫のように笑っていた。


「……それでわざわざ、お仲間に声を掛けたのか。」


 見たこともない顔だし、2度と合うことはないだろうと皮肉げに言ってみた、が――。


 えぇ、そうよ。と言ったっきり動く気配もない。


「……変わってるな」


「あなたもね」


 ど―せなら、と呟きながら、馴れ馴れしいそのお仲間は、長い栗毛の髪と白いワンピースの裾を靡かせ立ち上がる。



 揺れる提灯と、瞬く屋台を背に、


「お仲間同士、歩かない?」


 彼女は、とても面白いイタズラにでも誘うかのように、言った。

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