[ルナの3日目 夕方]
ルナ視点
黒島さんは手際良く、ご主人様をベッドに担ぎ上げ、毛布を掛ける。
「お粥を作ってくるから、君は彼の様子を見てやってくれ。君がいるだけでも安心するだろう。」
そう言って黒島さんは部屋を出ていく。相変わらずご主人様には触れない。手がすり抜ける。頭を撫でてあげたい。抱きしめてあげたい。そんな風に思うが、出来ないものは出来ない。私はしばらくの間、寄り添う事にした。
「私なんかでよろしければ、いつでもお傍にいます。」
そう呟いた。
数分後、足音が近づく。
「おーい、開けてくれー、手が塞がってて開けれないんだ」
しまった、失態だった…。私ではドアを開けることが出来ない…。ドアをすり抜けそれを伝えに行く。
「すいません、私、幽霊なので物が持てなくて…」
「あっ、そうだったね、すまなかった。」
黒島さんはそう言い辺りを見回し、テーブルにお粥、というお米に水をかけた鍋を置く。
ドアを開き、ベッドの近くまで行き、彼は言う。
「私もずっと付いていたいが、帰らなくてはならない。すまないが、また明日の朝に来るから」
そう言って彼は部屋を出ようとする。
「…あっ!あの!」
私は声を張り上げる。人に話しかけるなんて2人目なのだ。慣れてない。
「目覚まし時計、掛けてくれませんか?ご主人様は決まった時間にお目覚めにならないとガッカリする人でして」
「ハハ、君は彼の事をよく知っているのだね。目覚まし時計…これかな。」
「6つあるはずです」
「オッケー、6つともかけておいた」
そう言い、黒島さんは部屋を出ようとする。
「…あ、あの!」
あぁ、また声を張り上げてしまった。…迷惑してるだろうな、黒島さん。
「ありがとう…ございました」
こんな風に良くしてもらったのは3回目だ。お礼って、この言い方で大丈夫だよね…?
「どういたしまして」
黒島さんはニッと笑い、部屋を去る。そうか、お礼って言われる方も、言う方も幸せな気分になれるのか…。
時計の針は10時を指していた。




