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その後も父と母から詳しく話を聞いて私は確信した。
ここは異世界恋愛ゲーム『シークレットアイドル』の世界で、私はその中で主人公と同じくアイドルに選抜された”宵の地”深淵の令嬢スノウ・フリードバルトだという事を。確かゲームの中ではスノウと主人公はライバルに関係にあって、主人公の攻略対象である5人の男性のうちの1人であるレオン王太子殿下のルートで、スノウは主人公に対して激しいライバル意識を燃やして競ってくる、というキャラクターだった。けれど私はどちらかというと穏やかで男性の手に守られなくてはいけないほどの、か弱い存在として描かれていた主人公よりも、陛下に見合う女性になろうとたゆまぬ努力を続ける少し男勝りなスノウに憧れていた、スノウは主人公のライバル的存在だったが嫌がらせなどの卑怯な行為を嫌い、正々堂々とアイドルとしての人気や実力で勝負をするところも好きだった。私がスノウの方に感情移入してしまったからレオンルートの攻略は、最後までやらなかったんだよなぁ、、最後主人公とレオンが結ばれるのが全然納得できなかったから。
ずっと黙りこんで喋らない私を心配した両親の視線に今気付いた「スノウ無理はしないで、もしあなたが嫌なら国王陛下に”アイドル”としての活動からあなたを外してもらうように頼むわ」「そうだ、このような事件が起こった後だからなあのレオン殿下といえ、何も言えないだろう」と少し嬉しそうに父が言う。
「お父様お母様ありがとうございます、2人にこんなにもお気遣いいただけてとても嬉しいです。ただ私は、」と話だそうとしたところで扉をノックする音が聞こえ、執事のバルトが部屋に入ってくる。
「旦那様、そのお客様がいらっしゃっております」なぜかしどろもどろだ。昨日の落ち着いた様子しか知らない私からしたら少し面白い。「誰だ、スノウが目覚めたばかりに訪ねてくるような空気の読めないやつは」と、きっと誰が来たかお父様は勘付いてイラだった様子で答える。「レオン王太子殿下であられます。。」と目線を斜め下に向けバツの悪そうな顔でバルトが答える。「あいっつの情報網はどうなってんだ!どこからかスノウが目覚めた事を嗅ぎつけたんだな。スノウどうする?スノウの気分が悪い様なら帰ってもらうように言うけど」と聞いてくれたけど、ここがゲームの世界だと気付いてから私はあの画面の中にいたキャラクターたちが実際の人物として動いている姿を見るのが楽しみになっていたのだ。特にレオンは私の神推しキャラ、絶対に会いたい!「いいえお父様。王宮から殿下がわざわざ来てくださったのですからお会いしなくては礼儀にかけます」「スノウ、、なんて素晴らしい子に育って、自分が事件に巻き込まれた直後だというのに」と泣きそうになっている父を見て母が呆れたように微笑んでいる「バルト、レオン王太子殿下をおまねきして。私たちは退出いたしますので、レオン殿下とスノウの2人でお話しなさい」と、あいつとスノウを2人になどさせるかー!と嫌がる父をひきづって出ていった。
そんな2人の様子を微笑ましく感じながら少し緊張してきた。だって前世の私は平々凡々な容姿で、闘病生活が長かったからがりがりであんまりスタイルも良くなかった。容姿はゲームのスノウのままなのだろうか?急に疑問に感じたので確かめてみる事にした。
「すみません、バルトさん。殿下にお会いする前に少しは身なりを整えたくて鏡がどちらにあるか教えていただけませんか」部屋の入り口に佇むバルトさんに声をかける。「お嬢様、わたくしの事はバルトとお呼びになってください。”さん”は必要ありません」と微笑んでから「鏡はただいまお持ちいたします。殿下にも少しお待ちいただくようにお伝えいたしますね」なんて仕事ができる人なんだと感動していると、バルトに声をかけられた侍女がすぐに全身が見える鏡を持ってきてくれた。「私は退室いたしますのでご準備ができたらお声がけください」。そういって全員がいなくなった部屋で自分の姿をおそるおそるみると、、