働くって大変
「疲れた〜〜〜」自宅に帰ってきてベッドにダイブする。
あれからスノウとして様々な仕事をこなしてきた。よく分からなかった魔法の使い方も最近ようやく慣れてきて、中級程度の精霊を1人で呼び出せるまでになった。聞いた話によると、スノウはもともと巨大な魔力の持ち主だったから、アイドルにならなくてもいずれは国の重要人物として呼び出しを受けていたはず、だそうだ。それにスノウはファッションブランドもプロデュースしていて、今までにない斬新なデザインが国の女性たちの間で大流行している。私に服のデザインができるか不安だったけど、前世に呼んでいたファッション雑誌やドレスの本から得た知識のおかげでなんとかなった。以前よりもさらに近代的なデザインを取り入れ、令嬢のような貴族階級の女性だけではなく、街に暮らす人たちがもっと手を出しやすい価格帯のドレスも販売を始めることにしたので、より忙しくなった。日々受ける取材では好きな食べ物や休日の行動をよく聞かれるが、休日もなく仕事をしているし、好きな食べ物って聞かれても、どう答えていいか分からない。この世界の食事は前世で食べていたものと似てはいるけど、オムライスとかは存在していないので、いつも苺と答えるしかなくて困っている。ドレスのプロデュースが落ち着いたら、レストランもオープンさせて私が知っているレシピを再現しようかなと少し計画したりするのも楽しい。
「忙しいって幸せな事なのね」ベッドに転がって天井を見上げる。前世では1日が長くて、長くて仕方がなかった。本を読んだりゲームをする以外にできる事がなくて、早く夜にならないかといつも思っていた。
コンコンと扉をノックする音が聞こえる「は〜い」と間のぬけた返事をすると、お母様が入ってきた。
「寝てたかしら?ごめんなさいね。」「ううん、大丈夫よ」母がベッドに腰掛ける
「最近のあなたが命を削るように働いているのを見ると、心配になるわ。体は大丈夫なの?無理をしないで」と優しい母の眼差しに心配や不安の影ののぞかせてしまった事に申し訳なくなる。
「大丈夫よ、お母様。私今がとっても楽しいわ。色々な人と話して、私が考えたドレスを着ている令嬢を見かけた時は本当に嬉しかった。辛い事もあるけど、こんなに1日が短いと感じた日々は初めてで、とても幸せなの」と私の正直な気持ちを伝える。「でもお父様や私に心配をかけすぎないように、ちゃんと休みをとってください。あなたが誘拐された時に感じたような気持ちをもう二度と思い出したくないのよ」悲しげな母の言葉に胸が痛くなるが、こんなに自分のことを思ってくれる人がいるのって幸せだなという気持ちで胸がいっぱいだ。
「はい。ちゃんとお休みはいただくようにしますね」そして、母との穏やかな時間が過ぎていったその日の深夜、
結界の中に誰かが侵入してきた気配を感じ取り、私は飛び起きた。窓から外を見てみるが人がいるようには見えない。転移魔法を使って侵入されたのなら一大事だ。転移魔法を使えるような高度な魔法技術を持った人間が屋敷に忍び込んでいることになる、そのような人物と対峙して勝てる自信はまだない。
ガチャッとドアノブを回す音がし、振り向いたらー