トップアイドルも楽じゃない
『今世はもう十分だ、、』 病院のベッドの上で白い天井を見上げながら思う
幼い頃からずっと病弱で、学校に行く事もままならず、この白いベッドの上だけが私の世界だった。
友達もおらず両親と看護師さんだけが私の話相手だった。回復の見込みのない治療に高いお金を払って、医者にすがりつく父と母を見るのはもう耐えられない。
私の前ではいつも笑顔で話てくれていたけど二人の疲れた顔を見ると、自分が二人にとっての重い足枷になっている気がしてとても辛かった。もう2人を私に縛りつけたくない、たった17年の人生だったけど迷惑ばっかりでごめんなさい。来世はもっと健康に生まれて親に迷惑をかけないように元気に暮らせるようになるね。
そして私は繋がれていた人工呼吸器の線を自分で引き抜いた。ぼんやりとしていく意識の中で頬につたっているのは涙なのかな、、そんな事を思いながら私は永い眠りについた、、、
「はっっ」薄暗闇の中寝苦しさに目が覚めた、えっ?生きてる?ふと手に触れるベッドの感触の心地の良さに気づく。
見渡すとそこは病院ではなく、どこか貴族の屋敷の様な豪華絢爛な部屋で私が寝ているベッドも天蓋がついたお姫様用のベッドみたいだ。「ここはどこ?」ガチャッとドアが開く音がする。
「スノウ様お目覚めですか?どこかご気分がすぐれないのでしょうか?」初老の落ち着いた雰囲気の男性が私に声をかけてきたが「ス、スノウ?」私の名前はそんな外国人みたいな名前じゃないんだけど、どうしたらいいの?私の状況が全く読み込めない、頭が混乱するが、私は確かに自分で自分の命を絶ったはず、、そうか!「ここは死後の世界ね!」私が急に大声を出したので少し驚いた様子の男性が笑いながら言う「お嬢様まだ寝ぼけていらっしゃるのですか?いきなり死後の世界などと。とても怖い夢でもご覧になったのですね。ここは死後の世界などではございませんよ」微笑みながら話つづける男性に私は口ごもってしまった「ここはシーレ王国の宰相、あなたのお父様であられるセシル様の領地である”宵の地”の一角にあるお屋敷のあなた様のお部屋ですよ」へっシーレ王国?お父さんがセシル?どういう事、病院でたくさんの本を読んだから知識だけは年齢以上に豊富なつもりだけど、どの世界地図にもシーレ王国なんてなかった。というか私は純日本人だからお父さんの名前がセシルなわけないんだけど、、
私があまりにも動揺していたからか執事の様な格好をした男性は私にコップに入った水を手渡してくれた。
「お嬢様まだ記憶が朦朧としていらっしゃるのですね。仕方のない事です、あのような事件に遭われたあとですから」
事件?何を言っているのだ?「お嬢様はあのお仕事の最中に蛮族に襲撃され4日前”嵐の地”へと誘拐されてしまわれたのです。誘拐されたお嬢様をお父様は必死に探され、ついには国の軍まで動かし嵐の地からお嬢様を救い出したのがつい先日の事です。誘拐されている間、お嬢様は蛮族にかけられた魔法により意識を封じられていましたから、その副作用でしょう」。そっそんな事が起こっていたなんてかわいそうなスノウ様、と他人事のように思う。
「気分は落ち着かれましたか?今日はゆっくりお休みなってください。私が隣の部屋に常におりますのでなにかあればすぐに駆けつけますから」そう穏やかな声で優しく微笑むものだから私は言われるがまま眠りについた