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ダイヤモンドのプリンセス  作者: 本野 幸樹
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プロローグ 熱い夏の日

マウンド上の黒く染まった土をスパイクで均しながら美郷優里は空を見上げた。海のように澄んだ蒼い空には雲一つなく、八月の太陽が容赦なく日光を注いでくる。そのあまりの暑さに思わず被っていた帽子を脱いでから額の汗を拭った。まだ試合が始まってすらいないのにこの暑さなのだから試合が始まればどうなるのだろう、少し不安になる。

 帽子を深く被り直してから優里は振りかぶって投球練習を始めた。暑さに不満はあるが体の調子は悪くない。むしろ暑いからか体のキレがいつもより良いようにも感じる。その証拠に鋭い直球が捕手のミットに狂いなく吸い込まれて行った。

(良い感じかな……)

 多くの観客が詰めかけた阪神甲子園球場はまだ昼前だというのに殆ど満員状態でごった返していた。こんな大勢の観客の前で試合をするのは初めてだが不思議と緊張はしていない。

 数球投げてから優里は肩を回した。女性にしては高身長ながらスラっとした細い体には戦闘服である薄い桜色で彩られたユニフォームを纏いって長い髪は後ろでまとめてポニーテールにしている。そうした方が投げるときに気にならないのだ。

 そのまま数球投げ込んでから軽く呼吸を整える。

(改めて私達とんでもないところに来ちゃったな……でもやっとここまで来られた)

 夢にまで見続けた念願の場所、全国の球児、球女の憧れを一身に受けた甲子園に優里は立っていた。

緊張していないと言えば噓になるがそれ以上に高揚感の方が勝っている。小さい頃、初めて女子選手が甲子園でプレーしたのを観て以来、ここは自分にとって憧れ続けた場所だった。だから感じるのは緊張感より高揚感、そう考えながら口元をグラブで隠して少し笑った。緩んだ顔を見られたくないからだ。

 足元のロージンで指先の感覚を高めつつ、徐々に集中力も高めていく。雑念や雑音をシャットアウトし、ひたすらに集中していく。耳に入ってくるのは心臓の鼓動と仲間たちの声、そして試合開始を告げるサイレンの音だけだ。

 礼をして一番打者が打席に入る。見据えた瞳が優里を捉えて離さない。

 ここに来るまでに重ねた努力、犯した失敗、泥にまみれた挫折と屈辱、そして信頼できる仲間たちと掴んだ勝利。その全てが昨日のことのように感じながら優里は大きく振りかぶった。


 少女たちの長い夏が最高潮に向かって加速していく……


ちょうど一年前のこと

これの最初の連載を初めました。それは諸般の事情(と言うより私生活的な問題)で結局続きを書くことなく放置していました。

ちょうど一年経ってからまたこれを書くことになるとは。今度こそは彼女たちの活躍をしっかりと書き上げたいです。

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