ミミーとモングラン
日曜日の午後
小学五年生のポールと
一年生のリデラの兄妹は
釣りに行く準備をしていた
釣りをするのはのポール
リデラは一緒についていくだけ
お兄ちゃんを待ってるあいだ
リデラは花壇を見ていた
風もないのに
ジャスミンが大きく揺れて
モグラが顔を出した
あら モグラさんこんにちは
やあ 今日も釣りに行くのかい
実はリデラちゃんに
大事な話があるんだけど・・・
ちょっとついて来てよ
えっどこに?
この下だよ
小さくなる魔法を掛けるからね
モンモン・・・モングラン・・
奇妙な呪文を唱えると
穴の中でリデラは
モグラの背に乗っていた
モグラの穴に入ったふたり
ここがモグラさんの街なのね
温かくて花の根っこの
いい匂いがするね
いらっしゃいリデラちゃん
僕の名前はモングランだよ
さっき言ったけど
お願いがあるんだよ
このあたりはもう
ミミズさんがいないんだ
だから土も元気がなくて
僕も寂しいんだ
・・・・
わかったわ!
だからジャスミンの花が
今年は少ないのね
色も去年より綺麗じゃないし
釣りに行く度に
餌にするって
たくさん採っていただろ
もう止めて欲しいんだ
そう言っていると
地上が騒がしくなって来た
ポールは釣り竿を自転車に挿し
道具箱を後ろに積んだ
よーし後は餌だけだな
おーい!リデラー!
ミミズを取るぞー
いつもの場所花壇の端っこに
ポールは向かった
ドスンドスン!と
ポールの足音が
モグラの穴に響く
天井からバラバラと土が落ちる
お兄ちゃんが
餌のミミズを取りに来たのよ
おーいリデラー
どこへいったのかなー
ブルドーザーのように
ガバっと土を持って行く
ポールの大きな手
モングランとリデラは
奥へ奥へと逃げ惑う
お兄ちゃんやめてよ!
ここにはもう
ミミズさんはいないのよ!
モグラのトンネルから
リデラの叫ぶが声は届かない
うわっきゃあー!
リデラは急な坂のトンネルを
転がるように落ちていった
モングラーンー!
助けてー!
もうだめだと思った瞬間
プニュンと何か柔らかい上に
跳ねるように落ちた
はあー助かったー
一体何の上にいるのだろうと
リデラは下をよく見た
うすいピンク色・・・
こんにちは?リデラちゃん?
大丈夫かしら?
わっ!あなた!
ミミズさん?
こんな深い場所にいたんだ
ありがとう助かりました
私の名前はミミーよ
モングランのお友達なの
よろしくね
ここじゃだめだよ
もっと下へ逃げて!
モングランが叫ぶ
振り返ると
ポールの指が見えた
お兄ちゃんってば
しつこいなー
もうやめてよ!
その時
大きく地面が割れて
空が見えた
わあ!大きな奴がいる!
ポールの声が地面に響く
そしてポールは
ミミーをつまんだ
きゃ!助けて!
モングラン!
リデラ!
モングランもリデラも
どうすることも出来なく
空に持ち上げられていく
ミミーを見上げた
なんてこと!
お兄ちゃん!
ミミーを離して!
ミミーは餌箱に入れられ
自転車に載せられてしまった
お兄ちゃんまって!
リデラは穴をよじ登り
追いかけた
リデラのやつ先に行ったのかな
ポールはそう言うと
自転車に乗った
待ってー!
自転車の前まで追いついて
両手を開いて立って見せたが
小さなリデラに気づくはずもなく
ポールは走りだそうとした
菖蒲の花びらで作った
紺色のサングラスをかけて
モングランが叫ぶ
リデラ!危ないよ!
ひかれてしまうよ!
あと1センチで
自転車がリデラにぶつかる!
その瞬間ポールは
急ブレーキをかけた
自転車の前のカゴに入れた
餌箱がまぶしく光りながら
ガタガタと大きく動いた
ポールは驚いた
ミミズの祟りかと思って
地面にひざまずいた
モングランがやって来て
ミミーに言った
ミミー!今だよ
呪文でリデラを大きくして!
ミミーミルミルマニー・・・
リデラは見る間に元に戻った
リデラは
餌箱からミミーを取り出し
両手に二人をのせた
小さくする魔法は僕で
大きくする魔法はミミーなんだ
ふたりで一つの魔法を
ジャスミンの妖精から
教えてもらったんだよ
リデラは泣きながら
うんうんありがとう
もうミミズさんをとらないから
安心してね
リデラ!
いったい何があったんだ
お兄ちゃん!
これはほんとうに庭の虫たちの
祟よ!呪いよ!
リデラはポールを脅かした
わかったよ
本当はさ昨日毛針を作ったんだ
だからもう生きた餌は使わないよ
念のためミミズを・・・
と思っただけだよ
リデラはミミーとモングランを
掘り返された穴に戻してあげた
妖精が嬉しそうに
花に座って見ていた
*** おわり ***