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8.この世界にも中二病が存在するらしい。

8話目です。9話は明日か明後日になるかも。

『お、お前、俺の裸を見るんじゃねぇ!』


『ご、ごめんなさい!』


 俺は今……動画サイトの公式配信された、大人の女性に人気のアニメを見ている。

 その人気のアニメは……男達のぎりぎりの露出が人気の要因みたいで、実際俺が見ている話も何度かイケメンの男が何らかのトラブルに巻き込まれて肌を主人公と思われる女の子の前で露出させている。


 それを見て、俺はげんなりとした気持ちになる……。


「元の世界のアニメが見たい……この世界のアニメ、男成分多すぎやしないか……」


 この世界に来て引き篭もりでいられるのは、大変有り難かったけど……マンガ・アニメ・ゲームが元の世界とは変わってしまったのは痛かった……。

 引き篭もりの俺はネットで美少女の露出が多めの男向けアニメを良く見ていたのだが……なのに、この世界に着てからそんなアニメなど見れていない……。マンガも同じだ。


 未だにハプニングでイケメンの男の肌を露出されているアニメの動画を閉じて、かわりに家の周りの地図を表示させた。


「俺の見たいアニメやマンガは、この世界の住人には需要が無いみたい……」


 男女の役割が逆転した世界で、二次元美少女の裸とか誰得だって感じなんだろうな……この世界の住人は。

 この世界にも同性愛者もいると思うし、そちらの層には受けると思うけど……一般受けはしないのだろう。


 しかし……しかしだ!

 元の世界を思い出せ!確かに男向けのマンガやアニメやゲームがあったけど、男向けのだけだったか?

 否……断じて否!ちゃんと二次元が好きな女性向けのマンガやアニメやゲームは確かにあった。


「なら、この世界にも……男向けの二次元コンテンツがある筈だ」


 少年漫画はあったのだ……その他にも男向けの商品は販売されていると予想する。


 カチカチ……カチ。

 地図を拡大させて、家の周辺を詳細に表示させる。


 家に一番近い……お店はどこだ……あった、ここだ。

 マンガやアニメを取り扱っている専門店なら、男向けの商品も取り扱っている筈。

 ちょうど今日は平日だし、妹も学校に行っているみたいでチャンスだ。

 ステラさんには、今日は用事があって一緒にゲームは出来ないと言っておいた。


 何時もの普段着に、帽子を被り……財布をポケットにいれて、準備完了だ。


 ………。


「あ、ありがとうございました!またのお越しをお待ちしております!」


 耳まで真っ赤にした店員のお姉さんに見送られながら、俺は店を出る。


 まあ、専門店だけあって確かにあった……お店の隅っこの方にだけど。

 とりあえず、手前にあった新作コーナーの男向けのマンガやアニメを何個か買ってみた。

 大人買い出来たのは、元の俺がお金を使わずに貯めていたので再び元の俺に感謝だ。


「うーん……」


 一応……買ってみたのは良いのだけど。

 手に持っているお店の紙袋の隙間から中を、覗いて見る。


「あまり期待しない方が、良いのかもしれない……」


 この世界の人達の萌と、俺の元居た世界の二次元美少女の萌えが一緒とは限らないから不安なのだ。

 ……とりあえず、表紙の絵は合格点だったので中身は家に帰ってから確認してみよう。


 俺は視線を前方に戻して、家へと歩みを進める。


 ……家へと歩みを進めて、だいぶ時が経った頃。


「見つけたぞ……我の前世の伴侶……レイヴン・クロウ!」


 住宅街に、魔法少女アニメのヒロインっぽい声が響いた。

 俺は、「おっ、アニメ声!」と思わずその声の主の方に顔を向けて仕舞う。


 ちょうど住宅街で、人の通りが少ない狭いこの道を塞ぐように俺の前にツーサイドアップにした銀髪で片方に眼帯をした赤い瞳の中学生くらいの美少女が現れた。

 服装はセーラー服で……確かこの辺りの中学生の制服だった記憶がある。

 他の中学の制服とか興味なかったし、曖昧なのはしょうがない。


「どうした……レイヴンよ?前世の生涯を共にした伴侶たる我の事を忘れたとは、言わせんぞ?あの漆黒の夜に、我とお主は……未来永劫我と死んでも一緒に居ると誓ったではないか?」


 銀髪の女の子は、包帯を巻いた右手で後ろ髪を払った。

 宙にきらきらと艶のある銀色の髪が舞う。

 その仕草は、ただでさえ美少女なので似合っていた。


「………?」


 俺はとりあえず後ろを見る……そして、前に顔を戻す。

 あれっ?あれれっ?俺の背後に……誰も居ないのだけど!?

 も、もしかして俺の事を、言っているのか目の前の女の子は?


「もしや……本当に我の事を忘れたのかレイヴンよ?」


 心配そうな顔をした銀髪の女の子が、俺の前にやってきた。


 どうやらレイヴンって言うのは俺でした……。

 レイヴン・クロウか……レイヴンもクロウも俺の曖昧な知識だと、どっちもカラスを意味する言葉だった気がするが……。

 まあ、とりあえず……見なかった事に……。


 俺は銀髪の女の子の横を……スッと他人のフリをしながら、通り過ぎようとする。

 俺は……誰も見なかった……良いね?


「んんっ?レイヴンよ……伴侶の我を置いてどこへ行こうとするのか?」


 ぐいっ!


 や、やめろー!服を引っ張るな!俺に黒歴史を直視させるなっ!

 そう……俺も、中二病経験者なのだ。

 今思えば……なんであんな恥ずかしい事をしていたのだろう、自分は世界で特別だと思っていたのだろうか?

 まあ、こんな世界に来てしまったんだ……確かに特別だと言えば、特別かもな。

 だが、今は自分の黒歴史を思い出している場合じゃない!


 服を掴む白魚のような小さな手を、俺は外そうとしたが……以外に女の子の握力が強くて、外れない!


「人違いです……本当に、レイヴン・クロウと言う人じゃありません」

「ククッ……久しぶりに再会した我に、照れているのかレイヴンよ?まあ、お主は昔から変な所で照れる癖があったからな……我はその無礼を赦そう」


 口元をニヤリとさせて血のように赤い瞳で俺を見る銀髪の女の子は、俺にそう言った。

 照れてねえし……勝手に赦されても意味が分からない。

 それにしても……この世界の女性って言うのは本当に男と同じくら力が強いんだな。


「その……服から手を離してはくれませんか?皺になるし」

「レイヴンよ……我も我慢が強い方でないのは、お主も知っておろう?良い加減に、我を他人のように接するのは止めにしたらどうだ?」


 他人だから!俺とお前は、今日出会った他人だから!

 中二病するのは勝ってだけど、他人を巻き込むのは止めてくれ!

 ああ……俺も他人を巻き込んだ記憶を思い出してしまった……。


『我の真の名は……ジャッジメント・ゼファー。故有って人間に転生をした。現世の名前は小守コモルと言う……よろしく頼むぞ……同士諸君』


 中二病だった頃の俺の、自己紹介だ。

 当然それをされた一般中学生は、ぽかーんとする。

 それから何か俺がやるたびに中二病全快を始めるので、当然みんな迷惑そうな顔になる。

 今思い出しても中学時代のクラスメイトの人達は、そんな俺をいじめないで居てくれた良い人達だったんだな。


「本当に他人ですから……!」


 やっと銀髪の女の子の手が外れた……と思ったけど。


「我を拒絶するのかレイヴン……もしやとは思ってはいたが、お主は我と共にした記憶を忘れているのだな?」


 銀髪の女の子は俯いて寒そうに身体を両腕で抱きしめて、本当に俺と前世を共に生きた記憶があるかのように俺が忘れて仕舞った事が哀しそうに言った。


 ……本当に俺は、この女の子と前世で会った事があるのか?


 俯いている銀髪の女の子の声が、嘘を言っている声では無かったので……俺はもしかして本当に、忘れているのか?と思ってしまう。

 分からない……俺は本当にこの子と、前世で一緒だったのか?いやいや、そんな訳が……。


「レイ……ヴン、我は……とても哀しいぞ。ぐすっ……、我だけがお主と共にした記憶がある事が……レイヴン、レイヴン、レイヴン思い……うぅ……出してよぉ」


 ぽたっ……ぽたっ……と地面に水滴が落ちる。

 ついには銀髪の女の子が泣き出してしまった……どうすれば……?


 銀髪の女の子の頭に、手を置いて撫でてみる……アニメやマンガのイケメン主人公ならこうする。

 俺の主な情報はそっち方面だから、女の子の慰め方なんてこれしか思い浮かばない……。


「うっ……俺は君の言うレイヴンか分からないが……もしかしたら、そうなんだろうな」

「うん……うん!レイヴンは何者かの妨害を受けて、前世の記憶を忘れているだけだ……!我と再び一緒に過ごせば、きっと思い出す筈だぞレイヴンよ!」

「そうか……」


 撫で撫で……。


「ふにゃぁ……もっと、もっと我を撫でるが良いぞレイヴンよ……」


 コンビニで出会ったマオさんにもやったけど、俺は実は髪を触るのが好きになってしまったのではないのだろうか?

 銀髪の女の子は何時の間にか、足をモジモジさせている。

 俺を見上げる女の子の顔は、何時の間にか涙が引っ込んでいた。


「レイヴン……その……この後、我と……えと……漆黒の夜の再現をしようぞ?」

「漆黒の夜の日に何をしたかな……俺は忘れてるから」

「我と子作り……したのだぞ」

「!」


 この子と俺は前世で大人の関係になっていた……だと?

 銀髪の女の子は、恥ずかしそうにしながらも俺の手を取り……どこへと歩き出す。


「どこに?」

「我の転生した身体が生活する家に、向かっている……そこでこづ……いたっ!」


 どっかからか空き缶が投げられて、銀髪の女の子の頭にヒットした。

 銀髪の女の子は頭を痛そうに摩りながら、犯人を捜すように周りを確認する。


「小守さん……そいつ、ただの中二病だから……勘違いしちゃ駄目」


 何時の間にか傍に居たのか、マオさんが俺と銀髪の女の子を見ていた。

 相変わらず大きな胸だ……。


「むむっ……お前はどこの機関の者だ!我とレイヴンの邪魔はさせんぞ……!」

「邪魔はさせない……ね。なら、どうやって邪魔するの?」


 マオさんは銀髪の女の子の前に来て、見下ろした。

 銀髪の女の子は、そんなマオさんに怖気づいたのか身体を引く。

 あの死んだような目でじっと見られれば……そりゃ、そうなるわ。


「クク……我の魔の力がそなたを八つ裂きにして見せよう……だが、ここでは我が伴侶のレイヴンに迷惑が掛かるから止めておこう……命拾いしたな人間の雌が」


 またしても口元をニヤリとさせて銀髪の女の子は、マオさんにそう言った。

 言われたマオさんは無表情のままだけど、眉をピクピクさせてる。


「小守さん……コイツに用があるから、家に帰って良いよ?それとコイツが言った事……前世がどうとか、アレはコイツの頭の中の話だから。こう見えてコイツは、中二病をくすぐる作風で有名な中学生マンガ家だから」

「何故それを!?」

「この前、雑誌の取材受けたでしょあなたは?この前買った、マンガ雑誌にあなたのコメントが書いてあった」

「我不覚!」


 銀髪の女の子は、マオさんに首元を捕まれてズルズルと連れていかれた。

 本当に中二病患者だったのか……前世とか言われて、少し信じちゃったよ。


「れ、レイヴン!我を助けるが良いぞ!」

「大人しくして……あと、小守さんに迷惑を掛けたら駄目」


 どうやら俺は、マオさんに助けられたらしい……。

 とりあえず帰るか、マオさんの言った通り。

中二病登場、マオさんが助けなかったら主人公はどうなっていたやら。

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