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5.どうやら同じ引き篭もりじゃなかったらしい……。

5話です。6話は明日か明後日です。


「兄さん……兄さん……起きてください。もう、朝ですよ?」


 心地よい揺れに俺は、意識を覚醒させる。

 だが、まだ目蓋を閉じたままだ。

 まだ眠いのだ……遅い時間まで、ステラさんとゲームをしていたので起きたくない……。


『ナナシキさん……今夜は寝かせないよ?』とかステラさんが言うもんだから、冗談かと思ったら本気で寝かしてくれなかった……。

 結局、朝日が昇る時間までステラさんと狩りをずっと……だ。


「良いんですか?朝ご飯が冷めちゃいますよ兄さん」


 妹の声が耳に届く。


 もちろん、良くないが……。

 まだ寝ていたい……それに冷めたら電子レンジで温めれば良いんだ。

 俺引き篭もりだし、急がなくて良いのだ……。


 引き篭もりライフ、今日も絶賛絶好調……はい、しゅうりょう……。


「……うーん、起きないですね。……そうだ♪」


 一瞬布団の中に冷たい空気が入ったと思ったら、すぐに何か柔らかく暖かい温もりが左腕を包んだ。

 なんだ……なんだ……左腕が動かない……でも、眠くて……まあ、良いか。


 今の俺は大抵の事じゃ、起きる気力がわかない。

 もうね……眠いんだ。

 ステラさんが、突然スパルタ特訓とか言い出すから……くぅ……。


「兄さんのお顔がこんな近くに……くふふ♪」


 おっと……一瞬、寝てたのか?

 一瞬寝かすんじゃ無くて、長時間寝かせてくれよ……。


「兄……は……。だから……テ……」


 なんかぼそぼそ耳元で誰かが呟いてるような……。

 何を言っているんだ……?


「兄さんは……が好き。だから……」


 俺が何が好きだって?

 もうちょっと……大きな声で。

 それにしても、左腕全体が暑いな……それにまだ動かないし。


「……は妹……。だ……ス…ラ…はいらない」


 意識が途切れ途切れになるから……駄目だ眠くて……上手く聞こえない。


 ………。


「ふぁ~あ、あれ……もう10時だ。朝ご飯は、あった……ラップが掛けてある」


 どうやら俺は眠っていて、朝食を持ってきた妹に気がつかなかったらしい……。

 机の上に朝食とメモが置いてあり。


『電子レンジで温めてください♪ユキより』とメモに書いてあった。


 俺は机の上の電子レンジを手に取り、一階の電子レンジに持って行き温める。

 中で朝食が回る回る回る……。

 この待つ時間が退屈だが、得に退屈を潰す手立ては無い。


「今日はどうしようかな?ネトゲは……うーん、今日は止めておこうかな。自分でも分からないけど、今日はそんな気分じゃないみたいだ……。うん、今朝までやってたし……疲れてるんだきっと」


 レンジの電子音が鳴る、朝食が温まったようだ。

 お米の匂いが、とても良い……食欲が沸く。

 今日は居間で食べようっと。


「いただきます」


 ………。


「本当にどうしようかな?ネトゲはやら無いなら……外に出るかな」


 だって何だか、ネトゲを本当にする気力が沸かないのだ。

 だからちょっと外に出て、リフレッシュしても良いだろう?


 普段着に着替えて、何時もの帽子を被る。

 何時ものように母さんに注意しながら、外に出る。


 一応財布は持ってはきたが……特に目的が無いので、近所を散歩だ。


 十分くらい歩いてみたが、思った通り襲われない。

 ただ注目するだけだ。


 人通りの多い所を選んで、歩いていれば安全だと思う。

 それからさらに十分後……。


 じーっ。


 公園のベンチで疲れたから休んでいたら、偶々通ったらしい色素の薄い髪の女の子が俺に何か言いたげな目腺を送ってきた。


 頻りに腰まで長い髪を触ってから、ニヤリと口角を上げる。


 何度も何度も繰り返される……さすがに疲れたのか、俺の隣に座る女の子。

 背もたれまで深く座ると、女の子の脚が地面を離れて宙をプラプラさせている。

 今度は……恨めしげに俺を見つめ始めた……俺に何をしろと?

 

 一つ気になった事が……目の隈だ。

 なんか俺と同じく徹夜したご様子、女の子の頭が若干ゆらゆら揺れている。

 眠いのだろう……俺と同じく。


「眠いな……?」

「うん、あたし眠い……ふぁ~あ」

「ふぁ~」


 欠伸は移る。

 太陽のポカポカした暖かい光に、俺達二人はベンチで肩を寄せ合ってゆったりしていた。

 お昼頃に俺達は、お互いお腹が空いたので目が覚めた。


「お腹空いたな……」

「……うん、お腹空いた」


 何時の間にか俺の膝の上に頭を乗せて、顔を赤くしながら横になっていた女の子。

 気がつかなかった……どうやら、俺は寝ていたらしい。

 自分では眠らずに、起き続けていたつもりだったのだけど……。


「……」

「……」


 これは、どうすれば良いんだ?

 目が覚めたら、何時の間にか女の子が勝手に膝を枕にしてたけど……。

 うーん、ちょうど手を置きやすい場所に頭があるし乗せてとくか?


「……っ!?」


 手を頭にポンっと乗せたら女の子の身体が、ビクンって震えたけど……大丈夫か?

 おっ……この前は、なんかボサボサ髪だったけど……今触った感じだと、すごく滑らかだ。


「髪の毛、ちゃんと手入れしてるのな……」

「……っ!うん!うん!ヘアケアは大切……!」


 女の子はなんか嬉しそうに、頷いている。

 良く分からないが、嬉しいのだろう。


 それでなんかそのまま、女の子の髪を触り続ける俺。

 こう……指の間を、滑らかな髪の毛が通る瞬間が堪らない感じ?

 触り心地が癖になった……。


 ぐぅー……。


 お腹が抗議していらしゃる。

 もう限界だと……。


「俺、家に帰るから」

「わかった」


 女の子は俺の膝上から身体を起した。

 その時、腰まで伸ばした色素の薄い髪の毛が宙を舞う。

 俺もベンチから立ち上がり、公園の入り口に向かう。


「………」

「………」


 この女の子も同じ公園の入り口から出るのか。

 俺達は公園を出る……。


「………」

「………」


 俺はチラっと横目で、女の子を見る。

 家が同じ方向なのか……。

 あれから十分が経った。


「家は同じ方向なの?」

「………うん」


 女の子は、俺から顔を背けて一言呟いた。

 俺は思った……あれは嘘を着いていると。

 すごく分かりやすかった。


 まあ、良いか別に悪さをするとか考えてなさそうだし……。

 この後、直ぐに家についた。


「じゃあ、俺ここだから。またどこかで……」


 ぐぅー!


「……俺の家で、お昼ご飯食べてくか?」

「……良いの?」

「まあ、友達って言えば母さんも邪険にしないだろと思う」

「ありがと!」


 ガチャ……。


 俺は家の扉を開けて、母さんの部屋に行ったが……運悪く出かけたようだ。

 居間の机の上に、仕事の用事でお昼は作れないと書いてあった。

 たまに母さんが仕事で、お昼を作れない時がある。

 その時は俺が自分で、適当に冷凍食品を電子レンジで温めてお昼ご飯を済ましている。


「母さん、居なかったからご飯と冷凍食品を温めるだけになるけど良いか?」


 玄関でぼーっとしてた女の子に声を掛ける。

 どうやらまだ眠いらしい。


「うん、大丈夫」

「じゃあ、家に上がって」

「お邪魔します」


 俺は居間に女の子を通して、椅子に座って待ってもらう事にした。

 女の子は背筋をピンと伸ばして、何故か真剣な顔になっている。

 どうしたんだろう?


「お、男の人の手料理をご馳走になるから……!」


 嫌、冷凍食品を温めるだけだが?


「例えそうでも、男の人の手料理なの!」


 真顔でそう力説されると、何も言えない……。

 お腹空いたし、早く作るか。


 ………。


「ご馳走様でした」


 満足顔の女の子、そんなに俺のお昼ご飯に満足したのか……。

 この世界の女の子は、未だに分からない。

 俺は二人分の食器を、台所に持って行く。


 母さんは仕事だし、自分で洗うかな。


「あたしが洗う」


 俺が洗おうとした時、横から女の子が俺のスポンジを奪い食器を洗い始めた。

 小さな手で、食器をきゅっきゅっと洗う姿は慣れた手付きだ。


「親の手伝いとかしてたの?」


 女の子の手が止まる。

 少し俯いて女の子はぽつりと呟いた。


「両親は別の所で生活してるから、あたしは独り暮らしで仕方なく得意になった」


 親と別居してるのか?

 この歳で、独り暮らしなんて……大変じゃないのかな。

 その小さな身体で、俺より立派に生活してるのか……。

 引き篭もりの同士かと思って悪かった……。


「別に珍しくもない、今のあたしみたいな女はこの世界で多い」


 こちらを見た女の子の表情は無だった……。

 特に自分の境遇に悲観している様子も無い。

 女の子の手は動き出した。


「親は男が欲しかっただけ、女は要らなかったそれだけの話」

「………」

「大丈夫、そんな哀しい顔しなくても良い。お金は毎月沢山貰ってるから」


 重たい……またしても重たい話が。

 妹は重たい女でこの女の子は重たい人生。

 この世界の女の子は、何か重しを背負わないと生きてはいけないのか?


 なんなんだこの世界は!


☆ ステラ /  マオ

 

 台所の空気が重たい……。


 なんか悲劇のヒロイン見たいなお話に、してしまった……。

 男の人の同情するような目腺が……心に刺さる!


 さっき男の人に話した事は、本当の事だが……両親は仕事の都合で海外暮らしで、後継者に親戚のお兄ちゃんを選んだから。女のあたしは自由に暮らせと親は言ってた。


「おまえも来るか?それとも日本に残るか?まあ、日本に残るならいろいろ用意してやるが?」

「いやいやいや……外国語分からないあたしには海外無理だって!パパとママだけで行ってきてよ」

「パパはマオに一緒に来て欲しかったがしょうがない……寂しくなったら電話するんだぞ?」

「まあ、気が向いたらねー」


 親が恋しくなったら、電話のコールで一発だ。

 後は、あたしみたいに親が海外で仕事してて、日本に残りたい人は同じく独り暮らししてる筈だし。

 そう珍しい話じゃないよねって事なんだけど。


 どうしてこうなった……。

 男の人の目腺は完璧に悲劇のヒロインを見る目だよ……。

 あたしの口下手が、完全に悪い方向にいった感じ。


 あたしは実際、親の金で自由に遊び惚けてる引き篭もりなんだけどなぁ……。


「同じ引き篭もりだと思ってたごめん……」


 謝られた……!男の人に謝らせてしまったよ!違うよ同じ引き篭もりだから……!

 あたしも同じ仲間だから!


 この後、とりあえず今頃になってお互いの名前を教えて解散する事にした……。

 男の人の名前は小守コモルさんと言うらしい。

 今日の教訓で得た事は、口下手直さないと誤解が広がると言う事だった……。


「なんか手伝えるような事が、あるならここに電話して」


 ドアの前で別れ際に、覚悟を決めたような表情の小守さんから電話番号をゲットしたが……。

 これで良いのかあたしは?

主人公の妹は寝てる兄の耳元で同じ事を呟きはじめた……催眠かな?

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