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28.どうやら女の子とぶつかって、俺はやらかしてしまったらしい。※挿絵あります

28話です。 主人公とは別の人視点で始まります。※挿絵あります。

☆ 女の子 A子


 私の名前は……とりあえず、A子で。


 現在、平日の街のとあるお店で大人の本……そう、クラスメイトが話題にしていたエロ本をついに買った!

 それも、沢山! お年玉貯金を、結構崩してまで念願のエロ本を買い漁った。

 両手に一つずつ不透明な袋を持って、私は胸躍る気分で家に帰る途中♪


「ふふふ……こんなに沢山あるんじゃ、今夜……私の身体持つかな♪」


 ”おかず”を沢山買い込んだし……性欲溢れる思春期の私は、ちゃんと眠れるか心配だ!


 ………。


 私は生まれて初めて、学校をズル休みした。

 どうしてかと言うと……知り合いに買っているところを見られるのが恥ずかしいので、誰にもバレずに男性の裸が載っているエロ本を買うためだけに学校を休んだ。


「はぁ、寒い……手袋くらい、すれば良かった」


 外はまだ肌寒い、勢いでエロ本を買ったのは良いけど……薄着で外に出たのは、失敗だった。

 首元を冷たい風が通り、私は首をすくめてぶるぶると身体を震わせる。


「それにしても、担任の先生が私の声だと気がつかないなんて……電話越しなら、声が違う風に聴こえるのかな?」


 朝にママのフリをして学校の担任に電話したら、怪しまれずにちゃんと休めた。

 それなりに仲の良い先生なので、作り声でも直ぐにバレるかと胸をドキドキさせていたけど……全然、疑われずにすんなり休めて驚いた。


 もしかしたら、私が仲の良いと一方的に思っているだけで……担任の先生には、ただの生徒Aくらいにしか思ってないのかもしれない。 だから作り声だろうが、地声だろうが電話越しならバレる事はないのかも。

 それよりも……。


「ママは、何て言うかな? ……学校をズル休みをした私の事」


 もしもこの事がママにバレたら、何を言われるか分からないけど……何時も一人っ子の私を放っておいて、夜遅くまで大人の男性が居るお店で遊んでいるのを知っているから……ズル休みくらいで、しつこく叱られる事はないと思っている。 ……と言うか、叱ってくれるのか分からない。


 ―――ママは、パパが居た頃は私の事を可愛がってくれていたけど……パパが家に帰ってこなくなってから……私の事を、全然構ってくれなくなっちゃったなぁ。 今日、私が学校をズル休みした事に気がついても……何も言わないで、平然と大人の男性の居るお店に遊びに行くんだろうね。


 娘の私より……そんなに男と遊ぶ方が、良いのかなママは……。

 私も大人になって、大人の男性が居るお店に行けばママの気持ちが分かるのかも知れないけど……娘を放って置く、大人にはなりたくないかも。 でも……子は親に似るって言うし、たぶん私もママみたくなると思う。


「娘とか今から考えても、しょうがないし……その前に、ママに似るとか以前に私には男の人との出会いも無い……。 今思うと、パパと出会って私を産んだママは勝ち組みだったんだね」


 ぼーっと考え事をしながら歩いていたせいか、路地を右に曲がると……そこにちょうど、誰かが居たのに気がついたけど回避が間に合わなかった。


「きゃっ!」

「おっと……」


 バサバサと乾いた音が鳴る。


 私は誰かとぶつかったせいで、地面にエロ本の入った袋を落としてしまった。

 落ちた勢いで、袋の中に入ったエロ本が路上に飛び出て大惨事になる。

 表紙が男の裸の本……主に私の性癖が分かってしまいそうな、タイトルの本が路上に散乱して自分でも顔がかっと熱くなるのが分かった。


 ―――あああああああああああああっ! 何て事を、何て事に、何で何で何で……!?


「……っ!」


 とんでもない事になった私は、思わずぶつかった相手を睨むように見る。

 偶然ぶつかってしまったので、相手が悪くないのは頭で分かっていても……誰かのせいにしたくなるのは、散乱した物が”エロ本”だからしょうがない。

 相手は私の腰に手を回して、倒れないように身体を支えてくれていたので目の前に居た。


「あっ……ごめん、その……いろいろとごめん」

「あっ……あぁ……あうあう……」


 ―――ああガガガがああああ画gbじょいじゃおああがおrじゃ!?


 ぶつかった相手は、一度ぶつかった事に対して謝り……次は、散乱した私の買った本を一瞥して、もう一度申し訳なさそうな顔をして私に謝った。

 こちらも前方不注意なので私も、相手に謝らなければならないのだが……今の私はそれどころじゃない。

 ぶつかった相手が、私と同年代くらいの好みの男の人だったからと言うのと……。


挿絵(By みてみん)


 それも……それも、わ、私の買ったエロ本を、目の前の男の人に見られてしまったから。

 私は……頭が沸騰して、何も考えたくない……いや、何か言い訳を考えなくちゃいけない気がする!

 こう言う時の定番のいい訳は……。


「と、ともひゃちのだかぁらぁ……! そぉれぇ! ともだひぃのだからぁ!」


 例え嘘バレバレでも、そういい訳せずにはいわれない。


「こ、この本は、友達のなんだ……?」


 私より背の高い男の人は、私のかみかみの言葉に困惑した表情だけど……私の言ってる意味は、理解してくれたみたいだった。


「そ、そう! こ、このいかがわしい本は、友達のだからね……! 私のじゃないの、分かった!? はぁ、はぁ」

「う、うん……分かったから、落ち着いて」

「はぁ……はぁ……すぅ……はぁ」


 息が苦しい……息する間もなく喋ったせいもあるけど、目の前に居る男の人が目と鼻の先に居るせいだ。

 それも腰を支えられて体が密着しているので、男の人の体温を直に感じてしまう。 そんな状態で落ち着いてなんて居られないのは、女ならしょがない事。


「とりあえず、落ちた本を早く拾わないと……って、うぉ!」

「い、いいからぁ!? わらひが拾うからぁ……!」


 男の人の温もりが私から離れたと思ったら……なんと、私のエロ本を拾おうとしている。 とっさに私は、男の人が触れる寸前のエロ本を回収した。


「でも……早く拾わないと、他の人が来ちゃうと思うけど?」

「だ、大丈夫だから……はぁ、はぁ……自分で拾うから、それには触らないで……!」

「わ、分かったよ」


 他の女に見られるなんて、この際私にはどうでも良い事。

 今は目の前の男の人に、私のエロ本を触らせない事が優先順位だ。

 私は自分でも信じられないほどの、俊敏さを発揮して本を拾っていく。

 男の人に……買ったばかりのそれも、今晩の”おかず”に使おうとした本を触れさせる訳にはいかない想いが私に信じられない力を与えた。


 ………。


 全部の本を回収した私は、疲れ切っていた。


「んっ……はぁ、はぁ……」

「大丈夫?」

「だいひょうぶ……です」


 異常な身体能力の代償に、どんでも無い程疲れるのは当たり前。

 身体は疲れ切ってるけど、休めば問題無い。

 だけど……私の心は、今も警報が鳴り響いて、全然大丈夫じゃない。

 よりにもよって、男の人に私のエロ本を見られたのだから……。


☆ 小守コモル


 路地の角で、ぶつかった女の子の持っていた袋の中身は……この世界のエロ本だった。

 それも男の裸が写る表紙を見る限り、女性が読むエロ本なのだろう。

 俺は、とんでもない事になったと焦った。

 今日は午後から母さんが出かけるので、俺はこっそりと家を出る事が出来た。


 外の空気は美味いなと、青空を見ていたのがいけなかったのだろう……路地の角で、ボブヘアの可愛い女の子とぶつかってしまったのだ。


 咄嗟に女の子の身体を倒れないように支えたけど……女の子が両手に持っていた袋を、地面に落としまい。 さらに……他人に絶対知られたくないだろう、エロ本を袋の中から飛び散らせてしまった。

 直ぐに謝り、落ちた本を拾おうと手を伸ばしたけど……女の子に、「その、本には触らないで」と言われて本を拾う手伝いが出来ない。


 申し訳無いと思う気持ちがあるのに、本を拾う事が出来ずに俺はその場に立っている事しか出来なかった。


 ………。


 女の子が全部の本を回収したので、俺は声を掛けた。


「んっ……はぁ、はぁ……」

「大丈夫?」

「だいひょうぶ……です」


 俯いて表情は分からないけど、何だか酷く焦っているような気がする。

 何に焦っているのか、あの本を見る限り分かるけど……俺にはどうしようもない。

 だからこの場を見なかった事にして、一声掛けて立ち去るのがベストかなって思った。


「じゃあ、俺は行くから……」


 そう言って女の子の傍から立ち去ろうと、すると……服の袖を、軽く掴まれた。


「待って……」


☆ 女の子 A子


 このまま、男の人に立ち去られたら……その後の私は、この事を思い出すたびに「あの時、ああすれば良かった。 こうすれば良かった」とか思うのだろう。

 だから私はこの酷い出来事を無駄にしないために、男の人との繋がりを手に入れよう。


「本を見られた……」

「それは……ごめん」

「だから、連絡先教えてくれない?」

「ん? 何で連絡先を教えないと、いけないのかな?」

「本を見られたし……連絡先を教えてくれないの?」

「うっ……それは」


 何故か男の人は私の本を見た事を申し訳なさそうにしているので、そこを責めて連絡先を手に入れてみようと思う。

 少し気になったのが……テレビとかネットとかで聞く普通の男の人なら、この本を持っている私を気持ちが悪い物を見るような目で見る筈なのに……目の前の男の人は、こんな本を持っている私の事をそんな目で見てこないので不思議に思った。


☆ 小守コモル


 連絡先ね……母さんにスマホを制限されたから、教えたくても無理なんじゃないか?

 チラッとボブヘアの可愛い女の子を見ると、瞳をうるうると潤ませていた。

 何となく保護欲が、出そうなほど可愛らしい女の子。


「うーん……」

「駄目なの……うぅっ」


 女の子は、手で顔を覆った。

 その様子に、俺は胃がキリキリ痛む。


 目の前に居る女の子は、俺にエロ本を見られて精神がボロボロの筈……ここで男の俺に、連絡先は教えられないと言ったら……たぶん、止めを刺してしまいそうだ。

 何か……何かの連絡先は無いか?


 ―――パソコン……タルタルオンライン……メルアド……んんっ? そうだメルアドだ!


 母さんにスマホを制限されているなら、パソコンのメルアドを教えれば良いんじゃないか!

 今までパソコンのメルアドは、ゲーム会社や動画サイトの登録する時しか使っていなかったけど……他の人との連絡など出来たの忘れていた。


「教えられるのは、パソコンのメルアドだけど……良いかな?」


☆ 女の子 A子


「はぁ……あの人のメルアドを、手に入れちゃったぁ♪」


 今日は学校をズル休みをして、エロ本を買ったのに……神様のイタズラか、それとも運命なのか……私は、好みの男の人のメルアドを手に入れてしまった。

 家に帰ってきた私は、手に持っていたエロ本を部屋の片隅に投げ捨てて……スマホにメモした、男の人のメルアドをずっとニヤニヤしながら眺めていた。


「エロ本なんかより……実物の男の人の方が、素敵だよね」


 大量のエロ本を買ったのに、それを開かず……私は、今日出会ったあの男の人を思い浮かべる。


「小守コモルさんか……ふふふ」


 別れ際に、お互いの名前を教えて別れた。

 小守コモルと忘れないように、口に出していると……小守と言う苗字に、聞き覚えがあるような気がした。


「んんっ……小守……小守……うーん? あっ……隣のクラスの小守ユキと同じ苗字だ……!」


 学年1,2を争うあの秀才と苗字が同じとか……嫌な予感がしてきた。

 まさかそんな偶然あるわけ無いと、私は冷や汗を拭く。

 あの小守ユキは、いろいろと噂がある事は一部の人は知っている。

 私はほとんど知らないけど……”ある事”が関わると、人が変わるらしい。


 チクチクと胃が何故か、痛んだ。


「うーん、なんだか……身体が寒くて、胃が痛いし……学校明日も、休もうかな……?」

あべこべ世界のエロ本ってどんなのだろうと、ふと思ったのでこの話が出来ました。

挿絵を後から追加しました。

絵の都合で、女の子の髪型がセミロングヘアからボブヘアに変わりました。

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