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3.そうだお菓子を買いにコンビニへ

3話目です。4話は明日か明後日になりそうです。

 ある日、ネトゲをしてて俺は思った。


 足りない……何か足りない。

 何が足りないか、俺は手が何かを求めるようにさ迷う。

 そして、空のお菓子の袋を手に持つ。


 そう、お菓子だ!


 妹はご飯を用意してくれてはいたが、お菓子は最低限しか用意してくれない。

 これでは引き篭もり生活の楽しみが、半減してしまう。


 これには妹曰く。


「兄さんが太ると健康に悪いので、今日はこれだけです。これも兄さんの健康のためなので、我慢してください」


 そう言って、少ししかお菓子を貰えない……もう、コンビニに行こうかな?

 元の世界でも近くのコンビニに行く事くらいできた、この世界でもちょっと行って帰って来れるだろう。

 妹に外に出るなと言われてるけど、別に少しぐらい良いだろう……。


 それに……バレなければ良いのだ、バレなければ!


 俺は空のお菓子の袋を、くしゃっと潰してゴミ箱に入れる。


「とりあえず、帽子かぶっとこ……」


 普段着と帽子で、外に出ようと思う。財布は机の中にあったので、中身を見て見ると万札があった。

 それも数枚……どういう事だ?ああ……これは貰って使わなかったに違いない。

 この世界の元の俺は、きっと外に出る機会がなかったのだ。

 だから、お金を使わずに机の中に仕舞っていたのだろう。


「有り難く使わせて貰うよ、この世界の元の俺」


 この世界の元の俺に、感謝して財布をポケットに入れる。

 さて……準備は出来た、妹は今は学校だ。

 あとは母さんだけか……母さんは仕事してるから、静かにしていればバレないかな?


 ………。


 うむ、問題なかった。

 ちょうど母さんは、忙しそうに誰かと電話で話をしてて気がつかれなかった。

 さっさと行って、帰って来ようっと。


 ガチャ。


 玄関のドアを開けて、一歩外に踏み込む。

 青空で良い天気だ。


 俺の眼の前の街並みは、元の世界とはちょっと違うがだいたい同じみたい。

 これなら、コンビニも同じ位置だろう。


 家を出てコンビニに向かう途中……。


「やっぱり……みんな、俺を見てるんだよなぁ」


 俺は帽子を深く被ってる筈だが、どうやら体格でバレバレらしい……。

 女の人達は露骨に俺の事を男か確認してこないけど、俺の事をじっと見ている。

 それも粘つくような……、何か執念を感じる目腺だ。


 ……これだけ、人が多いんだし……妹の友達のお兄さんみたく、襲われたりしないよな?

 確かに妹が心配症になるのも、分かるかも……。

 それも俺は今一人だ、もし……人通りが少ない道にでも、行ったらアウトだと思う。


 俺は帽子をもう一度、深く被り直す。


 さっさとコンビニに行って、家に帰った方が良いかもしれない。


「いらっしゃい……ませ?」


 女性の店員さんに何故か疑問系で、迎えられた俺。

 その店員さんは俺を凝視している気がする……どうやら、俺が男と気がついたのかもしれない。

 これは、早めにコンビニを出た方が良いな。


「……ごめんなさい」

「こちらこそ、ごめん」


 角で胸の大きなラフな服装の女の子と正面衝突しそうになり、とっさに謝った。

 目の前の女の子は、色素の薄い髪を腰まで伸ばしている。

 この子も、目が少し死んでる以外は美少女の部類だ。


「……男の人?」


 一応俺の方が背は高いが、下からこう覗きこまれるように顔を近づかれると緊張する。

 女の子は目が死んでるが仮にも美少女なのだ、そんな子に顔を近づけられるとドキドキしてしまう。

 それになんだか、この子から石鹸風の良い香りがする。


「そうだけど……?」


 黙っていても進展しないので、そう答えておく。

 相変わらず女の子は、無表情で俺を見つめる。

 何だろうこの状況?引き篭もりと目が死んでる美少女がコンビニで見つめ合う、俺とこの子の物語がこれから始まるって言うのか……?


「珍しいね男の人が、コンビニに居るなんて……」

「うん、お菓子買いに久しぶりにコンビニに来たから……」

「……そう」

「……うん」


 二人の会話が終了した……。


 何となく分かったぞ……この子も、俺と同じコミュ症だ!

 すごく同類臭がするこの子から、俺と同じ引き篭もりの匂い。


 じーっ……。


 会話が終了したが俺と女の子はその場で立ち止まっていた。俺はどうすれば良いのか困って、女の子は不健康に白い手をもじもじさせて、俺の顔をじっと見つめて”もっと話し掛けて!ねぇねぇ、話し掛けて!って言うか話しかけろ!”と言う念を俺に送ってくるのを感じる。


 俺にはこの子の事が分かる……学校行ってた時に、俺も話し掛けて欲しい時。用がある時、同じ事してる……。

 これやられる側になると、焦るね。

 何か、俺が言わないとって焦る。


「それじゃあ、俺はお菓子買うから……」

「そう……なんだ」


 そう言って俺は女の子の横を通り過ぎる。

 通り過ぎる時に、女の子の色素の薄い長い後ろ髪がゆらゆら揺れた。


 お菓子コーナに向かう俺の背中に、ひしひしと女の子の視線を感じるような気がした。


 これしかなかったんだ……引き篭もりだし、同じ引き篭もりでも何を話して良いか分からないし。

 ここで別れないとぐだぐだになるのは必須だから……。

 それにずっとコンビニに居たら、母さんや妹に外に出た事バレるかもしれない。

 心の中で罪悪感がじわじわ溢れる中、俺はお菓子のコーナーに向かいポテチを手に取る。


「梅干味か……」


 俺は酸っぱい味はあまり試した事は無い。

 いつもは、コンソメ味を良く買っている。


「それ、美味しいよ梅干味?あたしは、それ好き」

「そ、そうなんだ?」


 当然のように俺の横にさっきの女の子が……居る!?

 あれー?さっき別れたよね?

 それから、ちゃっかり俺の服の袖掴んでるけど……今度は逃げるなって事かな?


「じゃあ、これにしようかな」

「あたしもそれにする」


 俺と女の子は梅干味のポテチを手に取り、買い物カゴに入れる。

 それから俺と女の子の二人は、ぼそぼそ呟きながら同じお菓子を自分のカゴに入れていく……。

 傍から見たら男女が寄り添って、何を買うか談義する。すごく恋人っぽいな……でも、隣の女の子とは初対面で赤の他人なんだが?


「ありがとうございました!是非またの起しをお待ちしております!」


 お釣を俺の手を包むように渡してくれた女性店員さんの熱烈な声に送られながら、俺は家に帰ろうとしたのだが……。


 ぐいっ……ぐいっ……と小さな手で俺の袖を引っ張られる。


「俺は家にこれから帰るんだけど……?」

「ちょっと……待って。今……探してる」


 女の子は俺の袖を左腕で掴んで、何か必死に服を弄って何かを探してるみたいだ。

 服を弄るたびに女の子の大きな胸がぶるんぶるんっと上下するので、俺は視線に困って別の方を向いた。


「えっ……」


 視線の先に艶のある黒い髪を後頭部に二つに結った、アイドルのように可愛い女の子が友達と談笑していた。


 俺が視線を向けたその先に、妹が歩いていた。

 現在、友達と談笑中だ。


 まずい……。


 妹は……まだ、こちらに気がついた様子が無い!

 これならまだ間に合う、今すぐ見つからずに帰ればチャンスがある。


「用事が出来た、ごめん待って居られない。じゃあ!」

「え、えええ……待って、アドレ……」


 女の子の袖を掴んでいた手を、外して家に帰る道を走る。

 この女の子には悪いけど、俺は今妹に見つかるとヤバイ。


 何がヤバイって、俺の妹は俺の事を一生面倒みる条件に他の女を見るなと言っていたのだ。


 さらに……俺との子作りの話から、死ぬまでの人生設計まで俺に数時間におよび語ってきた。

 その後生まれ変わったらの話までする重たい女の俺の妹が、今の状況を見たら火を見るよりも明らか。


 完全に俺の自由な引き篭もりライフが、終了を告げるに違いない……。


「はぁはぁ、運動不足だ、これ」


 俺は手にビニール袋を持って、人の視線なんて気にしてる暇なく走る!

 完全に自業自得なのだが、そうも言ってられない状況。

 家に着いたので、母さんに注意しながら自分の部屋に戻る。


「はぁ、はぁ、はぁ」


 息が荒いが気にしてられない、急いでコンビニの袋を隠す。

 後は……後は、そうだ服を着替えないと……急げ、急ぐんだ俺!

 汗で濡れてるとか気にしてられない……この際、上半身裸になったほうが早い気がする。


「よいしょっ……」


 ガチャ……と俺が上半身裸になった時、部屋の扉が開いた。


「兄さん、ただいま……戻り……ました?」


 妹が俺の部屋に入って来たが、どうも様子が変だ?

 今までに無いほど顔を真っ赤にして、鼻を抑え例えようのない表情をしている。


「にひぃはん、なんではらかなんですかぁ!」


 どうやら、「兄さん、なんで裸なんですか!」と言いたいらしい。

 妹は鼻を抑えているからか、ちゃんと発音できないみたい。

 上半身だけだし……別に男の裸とか、興味ないだろ……。


「別に上だけだし、男の裸なんて見てもつまらないだろ?」


 そう思ってる事を言ってやった。

 だけど、妹は俺の言葉に何言ってるんだコイツと言った顔になる。

 どうやら俺は、この世界の妹にまた変な事を言ったらしい……。


「兄さん、良いですか!?男性は無闇に女性に自分の裸を……例え上半身だけでも、見せるものじゃありません!妹の私だから良かったものの、もし他の女だったら襲われてますよ兄さん!」


 耳まで真っ赤にして腰に左手を当てた妹は、俺の上半身を右手で指差した。

 良く分からないが……妹が言っている事は、どうやらこの世界の常識らしい。

 男と女が逆転してるなら、この世界の女性には男の裸は刺激的みたいだ。


 現に妹は鼻から血をぽたぽた流しているし、膝を擦り合わせて何だかモジモジしてる……。

 この世界の女性は、興奮しやすいのか?


「分かったよ……さっさと服を着れば良いんだろ?」


 新しいシャツを出そうと、タンスに手を伸ばしたら妹からストップが掛かった。


「待ってください兄さん……。その……他の女の前ではいけませんが……私の前では、良いのですよ?だから兄さんは、まだそのままにしててください……はぁ、はぁ、ごく」


 もじもじと相変わらず膝を擦り合わせている妹は、顔をだらしなく蕩けさせながら兄の上半身を凝視している。さっきまで、真面目な事言ってたのに今ではこれだ……忙しいな。


 妹は俺に視線をロックオンしながら学生鞄の中からスマホを取り出して、急いで何か操作するとスマホのレンズを俺に向ける。


 カシャ……カシャ……。


 あれっ?これは現在盗撮されてるのか……俺?でも、どうどうと本人の目の前で撮影してるし……盗撮なのだろうか?うーん、別に妹だし……俺も上半身ぐらい撮られても恥ずかしくないしなぁ。

 まあ、いいか……。


 ……数分後。


「そろそろ、寒いし服着て良いかな……?」


 俺は顔を下向けて、そう言った。

 運動して汗をかいた後って寒くなるよね……それで現在少し寒くなってきた、さっきまで暑かったけど。


 俺が服を着て良いか聞いた妹は現在床に寝て、俺をローアングル撮影をしている……だから俺は、顔を下に向けたわけだ。


「……すごくレアです。スーパーレアです。これは鍵を掛けないと大変な事に……兄さんのこんな姿を友達に見られたら、私の兄さんが襲われちゃいます……。絶対に友達にはスマホは、貸せませんね!」


 絶賛自分の世界に入っていて、妹は俺の話を聞いてなかった……。

 妹は片手でスマホの画面を弄って、何かしてるみたいだ。

 もう片方の手は、艶やかな桃色の唇を触っている。


 そして妹は未だに脚を動かすので、瑞々しい綺麗なフトモモがスカートから剥き出しになりちらちらと覗く。この世界の女性の妹は全然気にしないようだが、俺は気にしている……。

 その事を何回か注意して見たが、分かってもらえなかった。

 

「はぁ……」


 もう、勝手に服を着てしまおう……何だか肌寒くなってきたし。

 妹がローアングルで撮影する事が、最近多いなと思う。

 この世界に来てから、今日まで妹がローアングル撮影をしてた事が数回あった。


 妹曰く、「なんだか最近の兄さんが、とても素敵で撮らずにいられないのです!」との事。


 元の俺と今の俺に何か違いがあるらしい……。


 そういえば……コンビニに居た、あの女の子はなんだったんだろう?

 なんだか同じ引き篭もりとして、俺は気になる……。

 それに別れる時、俺に何か言ってたし。

 次、もしコンビニ行った時に出会ったら……こちらから話掛けてみるかな。


「あ、脱いだ服……洗濯しないと」


 脱いだままの服を、放置してたの忘れてた。

 俺は脱いだ普段着と汗で濡れたシャツに手を伸ばすが……。


「あれ?兄さん……これとこれ、どうしたのですか?」


 復帰した妹に、普段着とシャツを先に回収されてしまった。

 どうしよう……バレなければ良いとかコンビニ行く前に言ってた気がするが、一日もたずにバレそうだ!


「ちょっと、運動したんだ……ほら、俺引き篭もりだからさ。運動しないと、太るから……」


 きっと俺は今、目が泳いでいるだろう。

 妹は俺の普段着を触る。


「確かに兄さんは、運動してたみたいですね……触ってみると少し濡れてます」


 良かった、バレてない。


「じゃあ、普段着と……兄さんの汗で濡れたシャツを、私がいつも通りに洗濯してお返ししますね」

「うん、いつもありがとう」


妹はシャツをどうするのか、洗うだけなのかな。

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