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22.どうやら中二病の女の子が再来するらしい。

22話です。

「ふぅ……今日は濃い一日だったな」


 俺は薄暗い部屋のベッドの上でそう呟く。


 夕飯も食べて、お風呂も入り、後は寝るだけだ。

 ネトゲは……ステラさんには悪いけど、本当に疲れたので……ステラさんのゲーム内のメールボックスに、今日はログイン出来ないと言うメールをPCから送っておいた。


「本当に疲れた……なんだか目蓋が重い」


 暖かい布団の中で俺は今日を思い返すと、怒涛のイベントラッシュの日だったのかなと思った。

 現実でイベントラッシュとか……ゲームじゃないんだからと思われるけど、実際にゲームみたいにイベントが次から次へと起こっていたのでそう思うしかない。


「もう眠いし……今日はもうこれで、終わりだよな?」


 ―――フラグを立てたつもりは無いけど……なんだか、これで終わりじゃない予感がするような?


 窓際を見上げると、遮光カーテンの隙間から月の光が差している。

 次に薄暗い部屋の中をゆっくりと見渡してみるが、特に問題になるような事は無い。


「何も無い……今日はいろいろあり過ぎて、心配性になっているのかな?」


 そう呟き……うつらうつらとする意識で俺は、何となくもう一度……遮光カーテンで閉められた窓を、見上げた。


「暗い……?」


 さっきはカーテンの隙間から月の光が差していたのに……今は、真っ暗だ。

 何かが窓の外に立って、月の光を遮っているのか……。

 それとも……ちょうど月を隠すように、雲が横切っている最中なのかも。


「気にしても疲れるだけだし……寝よ」


 俺は布団を頭から被ろうと、したが……どうやらまだ俺のイベントラッシュ日は、終了の鐘を鳴らしてなかったらしい……。

 コンコンと窓ガラスを軽く叩く音が、俺の耳に届いた。


「まさか……」


 ベッドの上で布団を被った時に、誰か忘れているなと思っていたけど……そうか、銀髪の女の子の事をすっかり忘れていたんだった。

 先日の布団の中での事を、忘れている訳じゃないけど……。

 あの後……妹にも似たような事をされたので、ずっと銀髪の女の子を考えている余裕はなかったのだ。


 もう一度……コンコンと窓ガラスを叩く音が、聞こえた。

 まるで早くここを開けろと言うように……。


 ―――母さんは分からないけど……妹に見つかったら大変な事に、なりそうだから……しょうがないか。


 俺はベッドから降りると……窓の前に立って、遮光カーテンをゆっくりと開いて窓の外を見ると……そこには。


「………」


『うぅ……レイヴンよ、我が……くしゅん』


 猫耳がちょんと生えたニット帽子を頭に被り銀色の髪をツーサイドアップにした、眼帯をつけている中学生くらいの女の子が立っている。

 月の光に照らされた銀髪の女の子は、今日は服の色は黒を意識しているみたいだけど……中二病の衣装ではなくて、普通の可愛い女の子の服装をしていた。


『れ、レイヴン……とりあえず、部屋に入れて欲しいのだ。このままでは、我は……くしゅん』


 銀髪の女の子は身体を震わせて寒そうに両腕を摩って、俺を血のように赤い隻眼で不安そうに見つめている。外は日中は暖かくなったと言っても、その薄着ではまだ夜は寒い筈なので当然だろう……。


 このまま窓の外に銀髪の女の子を立たせて置くのも寝覚めが悪いので、俺は窓の鍵を外して……なるべく音を立てないように、窓をゆっくりと開ける。

 窓が少しずつ開いていくにつれて……外の寒い空気が部屋の中に流れてきた。


「はぁ……寒い」


 月の光に部屋の中が照らされて、俺の吐く息が白いのが分かる。

 何時までも窓を開けておくと、俺も寒くて震えてしまいそうだから……窓の外の銀髪の女の子に、部屋の中に入るように促す。


「早く部屋の中に、入って」


「夜更けに……お、お邪魔します……のだ。うぅ……凍えて死んじゃうところだったよぉ……くしゅん」


 くしゃみをする銀髪の女の子は、部屋に入るために窓の外でゴソゴソと靴を脱いでいるようだ。


「んしょ、んしょ……うぅ……寒くて手が悴むの……靴がなかなか脱げない~……」


 ―――寒くて余裕が無いのかもしれないけど……銀髪の女の子って、本当は普通に喋れるんじゃないのか?うーん……普段は意識してあの口調で話をしているのかな?


 準備が出来たのか寒そうにしている銀髪の女の子は窓枠に手を掛け、この前と同じ用に窓を跨ぐために……赤と黒と白のチェックのミニスカートから伸びる、黒のニーソックスに包まれた細く美しい脚を……見せつけるように高く上げた。


「………っ」


 男の性なのか……俺はまた銀髪の女の子が、窓を跨ぐところを横目でじっくりと盗み見てしまう。

 当然前回と同じ用に、銀髪の女の子は男の俺の眼を気にせずに窓をゆっくりと跨いで行く。俺はドクンドクンと心臓を高鳴らせながら、その様子を黙って見守っていると……。


「くくく……くしゅん……うぅ……レイヴンよ。そんなに我の下着を見たいのなら、遠慮せずに近くでじっくりと見ても良いのだぞ?我も隠れてコソコソ見られるよりは、堂々と見られてた方が恥ずかしくない」


 ちょうど俺の眼に、水色の縞パンがチラリと見えたところで声が掛かった。

 その声に俺は驚いて、肩をビクンと震わせしまう。


「!」


 俺の様子を見透かしたかのような銀髪の女の子の声に、我に返り……銀髪の女の子の方に顔を向ける。

 銀髪の女の子は口元をニヤリとさせて毅然とした表情で俺を赤い瞳で見つめているけど……頬は赤く染まり、照れているのが分かった。


「別にそんな事はしたく……」


 俺は見ていた事がバレていた事に、急に恥ずかしくなって……咄嗟に否定の言葉を口走ろうとしたら。

 銀髪の女の子の声に、遮られてしまった。


「レイヴン……男のお主が女の我の下着に興味を持つ稀有な存在なのは、前回でよーく分かっているのだ。だが我は男のお主が何故、女の下着に興味を抱くのか……それが分からぬが、そんなに女の我の下着を見ていた事をひた隠さなくても良いのではないのか?別に我は下着ごとき、お主に見られても怒りはせぬぞ?」


 銀髪の女の子は不思議そうな顔で、下着を見ていた事を否定する俺を見る。


 まあ、この世界の女性の銀髪の女の子の価値観なら下着を見られても平気だろうけど、俺の居た世界では女性のスカートの中身を盗み見たら怒られるか……もしくは警察の人にお世話になる。


 だから……この世界なら別に怒られる心配は無いと分かっていても、元居た世界の価値観が残る俺は条件反射で銀髪の女の子の下着を見ていた事を否定してしまうのだ。

 俺が否定しまう事を説明するには、この世界の人間じゃない事を話さなくてはいけないが……どうしようかな。


 銀髪の女の子から視線を外し、右手で頬を掻いて考える。


「ふむ……まあ……その事についてはレイヴンにも我に言えない事情があるのは、我にも分かった。だが……いずれは今世でも我と伴侶となる身。時が来たら……今我にも言えなかった事情を、詳しく話して貰うぞレイヴン?」


 俺がこの世界の人間じゃない事を、話せば良いか言いあぐねていると……銀髪の女の子は色々と察して、後で事情を話せば良いよと言ってくれた。

 そして何時までも窓を跨いでいる訳にも行かないらしく、銀髪の女の子は俺の部屋に足を着ける。


「あうぅ……外界の凍てつく空気に長く触れていたせいか……なんだか、背筋がぞくぞくするのだ。でもせっかくレイヴンとの一時の邂逅。今宵の我の目的を果たさなくては……よいしょ」


 銀髪の女の子はまた寒そうにぶるぶると身体を震わせて、窓の外に腕を伸ばして大きな紙袋を取り出し……部屋の中に俺に見えるように、その紙袋を目の前にドンと置いた。


「今宵はレイヴンが前世に着ていた衣装を再現した物を、我がこの凍てつく空気の中……前世の記憶を忘れているレイヴンに、一刻も早く記憶を思い出して欲しいがために届けに来たのだ!」

銀髪の女の子がまた部屋に来ました。

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