2.暇だからネトゲやろう
2話目です。今日は夕方まで忙しいので3話目は、今日の夜中か明日になるかもしれません。
「ネトゲ……ネトゲ……っと、この世界にも元の世界と似たようなタイトルがあるんだな」
今日も俺は自室で引き篭もり続行中。
先日、妹に”一生引き篭もってろ”と言われたので、今日もまた引き篭もり生活をエンジョイしてたのだが……暇なのだ。
引き篭もり生活を勧める妹は絶賛学校で勉学中なので、俺は一人自室で本を読んでたりするのだが……この世界の元の俺のマンガは、どれも少女漫画っぽい展開なのだ。
少年漫画……俺が居た世界の少女漫画の男版みたいなやつだ。
まあ、ラヴストーリーも好きだが……俺の部屋にある漫画はどれも少年漫画、熱く燃え上がるような漫画は一冊も置いてない。
さすがにラヴな展開ばかりな漫画に飽きて、パソコンで楽しそうなネトゲを探している。
「おっとこれ結構面白そうだな……俺の世界にもあった、有名MMORPGに似てるし」
タイトルは伏せるがノービスから始まり3次職が実装されてるRPGの、この世界版みたいな奴だ。
俺は早速登録をして、ソフトをインストールして起動する。
始めはアップデートタイムである。
「まあ、始めはノービスからか……こつこつ、レベルアップ作業も嫌いじゃない」
俺は引き篭もりだから、時間はあるのだ。
焦らずのんびり、MMORPGを楽しむ事にするか……。
……。
『ようこそ、この世界に!新たに生まれた戦士よ!』
ゲームが始まって、キャラクター作成、チュートリアルと続いた。
そこの所は話を省くとする、説明を延々と流すだけ出し……。
俺は剣士を希望したので、剣士ギルドがある街に転送された。
あっ、ちなみに男キャラを選んでいる。
『では、転送を開始します。良い旅を』
ざわざわ……。
実際に人の声のざわつきはないけど、俺が転送された場所は人が行きかう通りだったみたい。
所々でプレイヤーキャラが、世間話したり、武器の取引をしたりしている。
まあ、このあたりは前の世界とは変わらないのだが……プレイヤーキャラがある意味、逆転してた。
「男のキャラクターばかりじゃないか……って事は、これほとんどネナベか?」
元の世界でネトゲやると女性キャラクターが多い時がある、それはある程度ネカマが居るからだ。
その逆転現象が、この世界では起きてるみたい。男キャラクターの中身は、女性みたいな感じ。
画面いっぱいに男キャラが……別に不満はないのだが、せっかく可愛い女性キャラもあるのにと思った。
「ま、まあ……俺は出会いを求めて、ゲーム始めたわけじゃないし。ゲーム……そうゲームを楽しもう。始めはスライムでも狩るかな」
ゲル状のモンスターのスライム、このゲームの最弱モンスターだ。
男キャラー達の間を抜けて、草原フィールドに出る。
見渡す限り、スライムがプヨンプヨンっと跳ねて移動していた。
俺と同じように、スライムを狩っている人達がちらほら……当然、男キャラだ。
女性キャラはどこ?
「人多いし、少し街から遠くなるけど奥に行くか……スライムが、ギリギリ再配置される場所で狩るかな」
俺のキャラクターは、スライムと他プレイヤーの間を擦り抜けて奥へと進める。
人も居ないしスライムも沸く場所が合ったので、そこで俺はスライム狩りを開始した。
それから永遠とスライムを狩り続けて、そろそろスライムハンターの称号を得ても良い感じになった頃。
『こんにちわ、少し前から狩を見させて貰ったけど……もしかして、新規さんかな?』
スライムを狩ってヒャッハー楽しいーーー!と謎のハイテンションで、俺がスライムだけを狩る男になっていた時。
画面の隅に何時の間にか、初の女性キャラクターが居た。
俺は狂気状態から深呼吸をして正気に戻して、女性キャラの人の質問に答える。
『そうですよ、今日始めたばかりです』
俺のキャラクターの頭の上に吹き出しが出る。
声を掛けられたけど、ネトゲでも俺のコミュ症が発症しそうだ……。
無意識に身体の震えが出る……落ち着け俺……ネトゲは初めてじゃないんだ……。
元の世界ではオフラインのゲームが専門だ、ネトゲは初めてじゃないが慣れても居ないのだ。
『やっぱりそうだよね。ずっと飽きないでスライム狩るだなんて、新規さんぐらいしか居ないもの。だから……そろそろ、もうちょっと強いモンスターに挑んでも良いんじゃないって教えてあげたくなって……よけいなお世話だったかな?』
ゲームを始めてから、けっこう時間経ってるし……ずっとスライム狩っていたんだな。
喉も渇いてきたし、妹が持ってきた緑茶のペットボトルの蓋を開けて飲む。
そして、キーボードを叩く。
『いえ、助かりました』
うむ……それしか、言えない。
いざ、話掛けられたらネトゲでも言葉が詰まってしまう俺。
このゲームの初心者だし、ゲームの話題は無いからなぁ。だからって現実の話を、ネトゲに持ち込むのはそれもちょっと……と言うか、俺引き篭もりだし。
『うん、良かった。それでね……もし、もし良かったらなんだけど?あたしが君をサポートしたいんだ、良いかな?あっ、サポートって言うのは、このゲームの初心者さんがある程度一人でゲームを楽しめるようになるまで付き添って手助けをすることだよ』
この人は初心者の俺の手助けをしたいらしい……。
なんて……親切な人なんだろう。
コミュ症の俺にはこう言う、引っ張ってくれる人が居ると大変助かる。
女性のプレイヤーキャラを良く見ると、ステータスを底上げしたり、回復専門の神官キャラだった。
このゲームの女性神官キャラも、少し見える生足がエロイな……。
もちろんキャラはドットだけど……だが、それが良い!
ドットキャラは、3Dモデルとは違う素晴らしさがある……。
『じゃあ、お願いします』
お願いする事にした。まだこのゲームを始めたばかりだし、それに誰かと一緒にゲームをしてみたい。
まあ、一緒にゲームと言うか俺が一方的に支援される立場なんだけどね。
『ほっ……ありがとう。あたしの名前はステラ。よろしくね、ナナシキさん』
本当はナナシにしたかったんだけど、もう使われてますって出たので無理だった。
ナナシとかカッコイイネームは、やっぱり使われてるよね。
だから、ナナシに一文字加えたナナシキと言う名前にした。
『こちらこそ、サポートありがとうございます。ステラさん』
どうしても、言葉が硬くなる……先輩のステラさん見たいな、柔らかい言葉を使いたいなぁ。
よし、ステラさんを見習っていこう。
それからステラさんと一緒に、低レベルエリアで狩を始めた。
ステラさんは初心者の俺の狩りが退屈な筈なのに、何も言わずサポートをしてくれる。
俺のレベルはだいぶ上がったが、申し訳なさも心に貯まってきた……。
その事をステラさんに、言ってみると。
『あたしの職業は神官だから、人助けが好きでサポートをしてるの。だから、あまり気にしなくても良いよナナシキさん?こういうロール……人助けをする神官の演技も、MMORPGの醍醐味だから。あたしも十分楽しい、ナナシキさんとはwin-winな関係だと思うよ』
笑顔のアイコンをだして、そんな俺を気遣う事を言ってくれるステラさん。
大人な人だステラさんは……昼間からネトゲしてる俺とは違う。
昼間?何か気になるが……まあ、良いか気にしないでおこう……。
『ところで……ナナシキさんは、男性だよね?間違ってたら、ごめんね』
ん?男キャラ使ってるし、中の人も男だが……その質問はどういう意味なんだろう?
とりあえず質問に答えておこう、世話にもなってるし。
『はい、そうです。男です』
”!”マークのアイコンがステラさんの頭上に出た。
これは驚いてるのかな?街でネナベの人も居るし、一応確認のために聞いたのかな。
男女で話す内容も変わるし、俺をネナベだと思って変な話題を振らないようにしてくれたのかも。
気配りも出来るステラさん……俺もこれからのネトゲ人生、気配りにも気を付けよう。
『そう……男性なんだ。なんかそうかなって、見ていて思ったけど……うん、あたしの思った通り』
何が思った通りなんだろう……まあ、ステラさんは良い人だから、悪い意味じゃないだろう。
それから母さんがお昼を知らせに来るまで、ステラさんと一緒に狩を続けた。
俺が男と言う前よりステラさんの動きが、機敏になったのは気のせいだろうか?
『ごめんなさい、お昼なので落ちます。ステラさん、サポートありがとうございました』
時刻は12時過ぎて、俺のお腹の時計もお昼だと音で知らす。
『あっ、待って!』
ログアウトボタンを押そうとしていた所で、ステラさんから待ったが掛かった。
なんだろ、何かこのゲームに関する注意があるのだろうか?
手に持つマウスから、手を離してステラさんの言葉の続きを待つ。
『次……そう次も、あたしがナナシキさんをサポートするから。あたしとフレンド登録しないかな?もし……嫌なら断っても良いよ?あたしは全然気にしないから……、でも、その……』
ああ……ネトゲで良くあるフレンド登録ね。元の世界のネトゲでも、友達居なかったからすっかりフレンド登録の事を忘れてた……。”友達になろうよ!”そんな一言を言うにも、勇気が入るんだ俺には。
『えと、その、あたしはまだ、ナナシキさんにこのゲームの楽しさを十分に教えてあげられていないから!だから……ナナシキさんが次ログインした時に直ぐに迎えに行けるように、フレンド登録をお願いしたいかなって……でも、サポートが駄目でもフレンド登録だけでも……』
元の世界のネトゲボッチ時代を思い出していると、ステラさんのフレンド登録したいと言う気持ちのチャットが流れている。
そんなに俺の事が心配なのかステラさんは、お世話に成っているのでフレンド登録ぐらい喜んでする。
何時かは俺がステラさんの盾となり、二人でパーティを組んでダンジョンを攻略したいな。
そうすると聖騎士が良いのか?それとも物理攻撃が得意な騎士が良いのか……あとで、調べるかな。
『俺でよければ、フレンド登録お願いします』
俺のその一言で、ステラさんの言葉が止まった。
それから2,3分沈黙が続いた……あれっ、もしかしてこのパソコンフリーズしてる?
うん、動いてた。そうすると、ステラさんの方のパソコンに異常が出たのかな。
『あ、ありがとうナナシキさん!今、フレンド登録申請送るからね!』
『ステラ様から、ナナシキ様にフレンド登録申請が送られてきました。YES/NO?』
もちろん、YESだ。
それ、ぽちぽちっと。
『ステラ様がフレンドに追加されました』
これで俺にも友達が……それも女の人の!
ちょっと緊張するな、ゲームでも。
『本当にありがとうねナナシキさん!また次回ログインしたら、あたしが向かいに行くから待っててね。もし、他の人が居ても着いて行っちゃ駄目だからね?』
ステラさんがそう言うなら、そうした方が良いのかな。
『はい、そうします。次ログインしたら、ステラさんを待ってます』
『あたしもナナシキさんの事を、ずっと待ってるから』
『ログアウトしました』
と言うか、次ログインしてもステラさんが居るとは限らないと思うけど……そこの所どうなんだろう。
もうログアウトしたし、ステラさんに聞けないなぁ。
ぐぎゅるるる!
「まあ、次ログインしてから考えるか。今はお昼ご飯を食べないとね」
俺は椅子から立ち上がり自室を出て、お昼ご飯が用意されている居間に向かう。
妹が言うには、お昼ご飯は居間で食事可と言う事らしい。
母さんに元気な顔を見せて来いと言う意味だろう、家族想いの妹だ。
俺はお昼ご飯の匂いを感じながら、階段を降りる。
☆ ステラ
初めは大量にスライムを狩る、ネナベの変なプレイヤーだと思った。
だけど……見ていると、もしかしたら初心者さんなのかな?と思うようになり。
つい、なけなしの親切心で声を掛けてしまった。
「まさか……男の人だったなんて。あたしって、運が良いみたい……ふふ」
ネトゲで実際に男と出会える確立なんて、かなり低い。
あたしは、顔に掛かる色素の薄い前髪を払う。
「それにフレンド登録もしてくれて……ナナシキさん、優しい」
女が多い世の中、どうしても男はちやほやされて傲慢になる。
自分は優しくされて当然だと男は、思っている。
なんで男ばかり優しくされるのだ……女のあたしだって、同じ人間なのだ。
優しくした分だけ、優しくされたい。
あたしは、親指の爪を噛む。
フレンド登録されただけで、ちょろいと思われがちだけど……。
あたしが男と見破ったプレイヤーに、フレンド登録申請が通ったのはこれが初めてだ。
何時もフレンド登録申請拒否と、出会い厨のレッテルが貼られてしまう……。
そのせいか、ある掲示板の出会い厨リストにあたしの名前がある。
削除申請をお願いしているが、何故か通らない……解せぬ。
ぐぅ……とあたしの部屋に、お腹を空いたと抗議の音がなる。
そういえば、何時ご飯食べたのかな……。
はぁ、コンビニ行くのだるいなぁ。
引き出しからあたしの財布を取り出す。
毎月、両親からあたしの通帳にお金が振り込まれる。
そこから、生活費やネトゲ代を出して生活しているのだ。
あたしは脚に力を入れて、立とうとする。
「うーん、この脂肪の塊いつも邪魔……」
あたしは椅子から立ち上がるのに何時も胸の大きな脂肪のせいで、前かがみに立ち上がらないといけない。これ重いし、夏場は汗疹も出るし散々だ。
自分の腕を鼻にくっつけて、匂いを嗅ぐ。
「くん…くん…、匂うかな?シャワー浴びてきたほうが良いのかな、めんどくさいなぁ」
その場で服と下着をぽいぽいっと、部屋に脱ぎ散らかす。
後でまとめて洗うので、良いのだ。
「そうも言ってられないしなぁ……」
お腹が空いては、ネトゲは出来ないのだ。
出来る人もいるだろうけど、たぶん飢え死にすると思うその人。
だからあたしは、お腹が空いたら無理しない事にしている。
「ナナシキさん、午後からログインするかな?それとも明日かな?」
今のあたしの頭の中は、その事でいっぱいだ。
こんなわくわくする気分は、久しぶりで人生生きてるって感じがする。
もし、ナナシキさんともっと仲良く出来たなら……リアルのあたしに会ってくれるだろうか?
それにもし、彼女とか居たら……。
「その時は二人目にしてもらうか……駄目なら奪えば良いんだ」
一夫多嫁のこの世界で、一人の男を独占なんてこのあたしが赦さない。
二人目の女の子のステラの中の人は、引き篭もりの女の子で実はコミュ症。ネットだと多弁な感じ。