表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/34

17.知らない女の子が二人現れた、のんびりできない。

17話です。また新キャラ登場回。だらだらしてるだけの回でもある。

 お姉さん達から距離が離れたところで、俺とマオさんは歩く速度を元に戻した。

 俺は少し緊張しながら、背後を確認する。

 あのお姉さんは、どうやら追っては来なかったみたいだ……。


「大丈夫みたいだね……」


 隣を歩くマオさんの方に顔を向けて、俺はそう言った。

 ちょうどマオさんの頬を、汗の雫が伝うところを見た。


「はぁ……はぁ……そ、そうだね」


 艶のある唇を開いて、マオさんは少し喋り辛そうに言う。

 マオさんより高い身長の俺の速度に合わせて早歩きをして、マオさんは疲れたのか呼吸が少し激しい。

 それもしょうがないと俺は思った。


 だって……マオさんは今日出会った時から、何故か息が切れてたし。

 それから体力を回復する時間もあまり無い状態で、俺の速度に合わせての早歩きだ。

 マオさんが、疲れるのはしょうがない。


「少し何処かで、休憩する?それとも、ここで解散する?」


 足取りが重いマオさんに、休憩するか解散するか聞いてみる。


 俺もランニングをして若干疲れていたので、ちょうど良いと思った。

 今は、俺が話せるような話題も少ないし……体力消費してマオさんは疲れてるみたいだから、ここで解散して家に帰るのも有りかなと思えた。


 マオさんは汗で肌に張り付いた色素の薄い長い髪を、左手で払い……俺の方に顔を向ける。

 常に表情の変化が無いマオさんだけど……なんだか俺を見つめるその表情は、捨てられた子犬のように感じたのは気のせいなのか?

 まだ離れたくないと俺に念を送っているような、そんな眼をしている。


「……あたしは、まだ小守さんとお話したいから何処かで休憩したい」


 そう言ってマオさんは、俺の左手を握る力を強くした。

 どうやらマオさんは、俺とまだ話をしたいらしい。

 俺は特に話せる話題が無いけど、マオさんは俺とどんな話をしたいのだろう?

 基本的にコミュ症同士、話すより一緒にぼーっとしている事が多いのだが……。


「じゃあ、どこか休憩出来るところは無いかな?」


 そう言って俺は、周りを見渡す。


 近くに飲食できそうな店が、数店あるけど……気が進まない。

 店内には多くのお客さんが居るので、俺は行きたくないと思ってしまう。


 コンビニのような直ぐに店を出れるところは、わりと平気なのだけど……長い時間、他人と一緒に居るような飲食店などの空間は居心地悪くて駄目だ。

 自分でも分からないが人が密集している場所に居ると、息が苦しくなって……地上で溺れるような、そんな感じになる。


 数回そんな症状になって、もう飲食店や映画館などは行け無くなった。


 ……俺は行きたくないけど、とりあえずマオさんに聞いてみる。

 聞いてみてマオさんが行きたいのであれば、俺も覚悟を決めるしかない。


「飲食店とか平気?」


 マオさんは俺の言葉に、少し気まずそうに目を伏せた。

 無意識なのか、お店と反対側に俺の手を引っ張っている。

 珍しくマオさんははっきりと分かるほど、嫌と言う感情が顔に出ていた。


「無理……人多い所、苦手。それに、小守さんもあたしと同じでしょ?」


 マオさんは視線を俺に戻すと、俺の眼を見つめてそう言った。

 マオさんの方も俺と同じく、人が多い所にずっと居るのが苦手なタイプらしい。

 それに俺の事も理解しているみたいで、自分と同じでしょ?と聞いてきた。


「俺も人が多い所は、勘弁したいね」


「うん、小守さんはあたしと同じだと思った」


 そう言ってマオさんは、少し頬を緩める。

 その後歩きながら話した結果、人通りが少ない公園で休もうと言う話になった。


 ………。


 公園に着いた俺達は樹の匂いを感じる公園内で、俺とマオさんは木のベンチに座っていた。


 俺はベンチの背もたれに、体重を預けて休んでいる。

 そしてマオさんは俺の隣に座って、公園に来る途中で買ったペットボトルのお茶を飲んでいた。

 余程喉が渇いてたみたいでマオさんはペットボトルの蓋を急いで開けて、小さな口の中にお茶を流し込んだ。


「んん……んっ……ごく……」


「………」


 特に話す事が無いので黙っていると、マオさんがお茶を飲む音が聞こえてくる。

 何となく俺は、マオさんが小さな口で一生懸命にお茶を零さないようにして飲む様子を眺めてしまった。

 俺は喉はあまり渇いてないし、ただ座っているのも暇だからマオさんを観察してしまうのはしょうがないと思う。


「んっ……んぐっ……ごく、ごく」


 渇きが潤って来たからなのか、マオさんの表情はトロンと表情が緩んで来ている。

 表情が緩んでいるとは、基本無表情のマオさんの些細な変化を感知した俺から見たらだけど。


「ふぅ……ぺろ……えっ?」


 ペットボトルから口を離すマオさんは、唇の隅に残ったお茶の雫をピンク色の舌で舐め取る。

 お茶を飲み終わったマオさんは、俺がじっと見ていたのに気がついたみたいで……飲んでいるところを見られた事が恥ずかしいらしく、顔を赤くして俯いてしまった。


「なんで……見てたの?」


 顔を伏せたまま、マオさんは俺に聞いた。

 マオさんは空になったペットボトルを、両手で持っている。


「暇だったから……何かごめん」


 その時マオさんの手に持つペットボトルの中央部分が、くしゃっと潰れる。


「こ、小守さんなら……別に見られても……良いけど。でも恥ずかしいから、あまり見ないでね……?」


 耳を真っ赤に染めたマオさんは俯いてた顔を、こちらに向けた。

 いつも通り無表情で顔は真っ赤だが、特に怒っている雰囲気ではないみたい。

 それから俺達は、特に何をするわけも無く……時間が経過する。


「………」


「………」


 ガチャガチャと潰れたペットボトルを、マオさんは手持ち無沙汰に弄っている。


 あれっ?変だな……マオさんが俺と話したいと言ったから、公園に来たんだけど?

 俺は横目で、オマさんの方を見ると……マオさんもこちらを見ていたらしく、慌てた様子で顔を背けた。


「マオさん、話って何かな?」


 このままだと時間がただ過ぎるだけだし、聞いた方が早いと思う。

 マオさんは背けた顔をゆっくりとこちらの方に戻すと……俺の顔を窺うと言い難そうな雰囲気で、唇を開く。


「えと……お話って言うのは……」

「あーーー!男の人がいる!」

「みーちゃん、待ってよー」


 マオさんが何かを言おうとした……その時、別の方向からの声に止められた。


 赤いランドセルを背負った女の子が二人、バタバタと音を立ててこちらに向かって来たのだ。

 走っているせいで、スカートが捲れて下着が見えているが……そんな事より、男を見せろ!と言わんばかりにこちらに走ってきた。


 一人は短いツインテールの勝気そうな女の子と、もう一人は清楚そうな前髪パッツンヘアの長い髪の女の子だ。

 勝気そうな女の子が、清楚そうな女の子より先に俺の前に来た。


「ねぇ、ねぇ、お兄ちゃん!お兄ちゃんは本物の男の人なんだよね♪」


 勝気そうな女の子の好奇心旺盛なキラキラした大きな瞳が、俺の顔を覗きこむ。

 瞳に映った俺の顔は、すごく困ってそうだった。

 実際、突然の事態に困っている……。

 チラっと隣を見ると、話をする途中で止められたためか……口を開いた状態で、マオさんが固まっていた。


「う、うん、本物の男だけど?」


 困惑気味に俺が男だと言った途端、勝気そうな女の子はぱぁっと向日葵の花のような笑顔になった。

 腕を上げて、わーいと喜んでいる。

 男と答えただけで、何故か喜ばれたんだけど?


「ちーちゃん、本物の男の人だって♪わぁ、どうしよう!」


 勝気そうな女の子は、顔を清楚そうな女の子に向けて嬉しそうに報告した。

 短いツインテールが、ぴょこぴょこと身体の上下に合わせて尻尾のように跳ねる。


 一歩遅れて俺の前にやって来た清楚そうな女の子は困惑している俺を見て、申し訳なさそうに一度ペコリと頭を下げる。

 艶のある綺麗な黒い髪が、さらさらと宙に舞う。


「みーちゃんが突然話し掛けてごめんなさい、おにいさん。……みーちゃん、学校の先生が男の人に迷惑掛けちゃ駄目だって言ってたよ?」


 暴走気味の勝気そうな女の子を、清楚そうな女の子が注意する。

 注意された勝気そうな女の子は、えーっと不満げに柔らかそうな頬をぷくーっと膨らませた。


「でもちーちゃん、男の人だよ?それも若い男の人、珍しいよね!興味でちゃうよね♪」


「み、みーちゃん、駄目だよー……そんな事したら、怒られちゃうよきっと……あわわ」


 俺のフトモモを小さな手でスリスリと撫でる勝気そうな女の子、その様子を見てあわあわと涙目になる清楚そうな女の子。

 そんな清楚そうな女の子の様子が面白いのか、勝気そうな女の子はきゃはは♪と笑っている。


 俺も清楚そうな女の子ほどじゃないが、どうして良いか頭が混乱していた。

 今まで生きてきて、こんな元気一杯の女の子に出会う機会なんて無かったのだ。

 どう接すればいいのか、俺には分からない……。


「ちょっと、貴女たち……」


 隣で再起動したらしいマオさんが、何か言い掛けたけど……またもや、勝気そうな女の子の声で遮られた。


「ねぇ、ねぇ、ちーちゃんも、男の人に触ってみなよ?本当はちーちゃんも、男の人に興味があるんでしょ?ちーちゃんの部屋のベッドの下に、男の人が裸のほ……ごふっ!?」


 ぶん!と風切り音がしたと思ったらゴッ!と強く打ち込まれる音がした。


「「!?」」


 勝気そうな女の子の身体が……一瞬浮いた!?

 教科書とか入ってるランドセル背負ってる女の子が、浮いただと……。


 俺とマオさんは、その光景に言葉を失う。


 俺の見間違いでなければ、清楚そうな女の子が一瞬ブレたと思ったら……小さな手をグーに固めて、勝気そうな女の子の腹に打ち込んだ後だった。

 腹にボディーブローを打ち込まれた勝気そうな女の子は、痛そうにお腹を押さえて咳き込んでいる。

 そしてボディーブローをした清楚そうな女の子は肩を震わせて、顔を真っ赤にさせていた。


「げほっ……げほっ……ち、ちーちゃん、それ禁止……中身が出ちゃうよ……うぅ」


「ひ、酷いよみーちゃん……!わざわざ、おにいさんの前でそれを言うなんて……うぅ。この!この!もう怒ったんだから~!」


 ドス!ゴス!ガス!と重い音が、俺の耳に届く。

 これ……女の子が鳴らして良い音だっけ?


「げふっ……ちょっ……待って……あうっ!?ご、ごめん……アタシが悪かったから……ゆ、ゆるしてちーちゃん!」


 清楚そうな女の子は可愛らしい声で「この!この!」と 言うので、ポカポカと言うような軽めの効果音だと思ったのだが……実際は勝気そうな女の子への追撃音は、ドスッ!と言うような重めの音だった。

 勝気そうな女の子は身体をぎゅっと丸めて、清楚そうな女の子の攻撃をじっと耐えてる。


「そ、そのあたりで赦してあげたら?みーちゃんだっけ?そのまま続けたら、怪我すると思うよ?」


 打撃音的に骨の一本二本逝ってそうだが……以外と勝気そうな女の子の肌には打撲の痕が残っていない。

 実際音が大げさだけで、実はたいして痛くもないのかな?とか思ってしまう。

 格闘技ならってないので、その辺りは分からない。


 ……もしかしたら、この世界の女の子達が特別なだけな気がするけど。


「はい……わかりました、おにいさん。うぅ……ぐすっ……恥ずかしくて、死にそうです……はぅ」


 清楚そうな女の子は顔を両手で押さえて、恥ずかしそうに頭を左右に揺らしている。

 それに伴って、長く黒い髪の毛が左右に揺れる。


 確かに、清楚そうな女の子が言うように死にそうだった……勝気そうな女の子の方が。

 勝気そうな女の子は出会って数秒でズタボロに、なった気がする……。

 この世界では良くある事なのかなっと変な事を考えた俺は、チラっと横目でマオさんを見ると……。


「………ぽかーん」


 どうやらこの世界の女子のマオさんでも、今の光景は異常だったらしい。

 また口を開けて、惚けている。

 俺もさっきの光景で、頭が真っ白になったからしょうがない。


「こほっ……お兄ちゃんありがとう、ちーちゃんを止めてくれて。それにしても、ちーちゃんは加減を知らないんだから。アタシじゃなかったら、このくらいじゃ済まなかったよ?」


 そんな俺の心配を他所にむくっと、みーちゃんと呼ばれた勝気そうな女の子は誇りを手でパタパタと落としながら立ち上がる。


 俺の思ったとおり、動きに支障が出るほどダメージを受けてないみたいだ。

 その証拠にアレだけの攻撃を受けときながら何処も筋肉を痛めていないみたいで、目の前で勝気そうな女の子はうーんっと伸びをしている。


「でもでも……!みーちゃんが、ワタシがママにも隠してる事を言っちゃうから……、うー……全部みーちゃんが悪いんだからね!」


 口を尖らせて清楚そうな女の子は、勝気そうな女の子にそう言った。

 ぎゅっと手を握りしめている所を見ると、まだ殴り足りないみたいだ……。

 勝気そうな女の子の一言は、そんなにも重かったらしい。


「………」


 確かに今思い起してみれば、この世界はいろいろと男女逆転している事が多い……だから、女の子からしたら男の裸が写った本などは”エロ本”の部類なのだろう。

 それを男の前で、お前は持っているとカミングアウトされたのだ。そりゃ……ズタボロにされても文句はいえないかもと思える。


 俺の居た世界で例えるなら……気になるお姉さんの前で、「こいつ、ベッドの下にエロ本隠してるんだぜ!」と友達に言われたようなもんだ。

 突然の友達の裏切りに激怒する筈。


 だから清楚そうな女の子に、俺は少し同情してしまう。


「うぐぐ……ちーちゃん、アタシが全部悪かったよ。ごめん……ごめんなさい……だ、だから、胸倉を掴むのは止めて欲しいなぁ……。ほら、お兄ちゃんも気にしてなさそうだから……ね、お兄ちゃん?」


 少し考え事をしていたら、第二ラウンドが始まっていた……。

 勝気そうな女の子は、また清楚そうな女の子を煽ったのか知らないが……胸倉を掴んで、持ち上げられている。


 現在ピンチの勝気そうな女の子は……俺に必死にウィンクをして、アイコンタクトを送っていた。

 勝気そうな女の子は幼いが可愛い系の女の子なので、きらきらした大きな瞳で見られると照れてしまう。


 だから俺は、少し俯いた……。


「ちょっ!?お兄ちゃん!?」


「初めて会ったおにいさんの前で、みーちゃんに恥を掻かされたの……。知ってる?男の人との自然な出会いは、とても貴重なんだよ?ママから聞いた話だけど……ほとんどの人は、政府主催のお見合いで相手が決まる事が多いんだって言ってたの」


 清楚そうな女の子は涙声で言った。


 そうなんだ……あれ、家の母さんはどっちだろ?と言うか……この世界の父さんの扱いは、どうなってるんだ?

 俺の居た世界では単身赴任してたから、この世界に来てからもあまり気にしてなかった。

 この世界の母さんは働いてるし、家事もしてる……そうなると、どうなるんだ?

 後で母さんか妹に、聞いてみるかな。


「ちーちゃんは恋愛結婚したかったんだ……ごめん、アタシはそんなちーちゃんの出会いを潰しちゃったんだ。本当にごめんねちーちゃん……」


 勝気そうな女の子は、涙を流して声を震わせて謝っていた。


「みーちゃん、ワタシも痛くしてごめんね……本気だったから、痛かったよね。ワタシのママは良く、恋愛結婚したかったって寂しそうに言ってたから……ワタシがママの代わりに、恋愛結婚するんだって!ずっと男の人との出会いを、待ってたの。それを親友のみーちゃんに、邪魔されて裏切られたって……ぐすっ……うぅ……」


 また考え込んでたら……何時の間にか二人は手に手を取って、仲直りを始めていた。

 終始置いてけぼりで、俺の前で繰り広げられる展開に……俺は引き続きぼーっとその様子を眺める事にする。

 ちなみに隣のマオさんも口は閉じてるけど、俺と同じく訳が分からないよと言いたげな顔だった。


 ………。


「アタシとちーちゃんは、ずっと友達だよ!」


「うん、うん!ワタシとみーちゃんは、ずっと友達!」


 アレから数分で、泣いていた顔が晴れやかな笑顔になっていた。

 可愛い女の子達が、仲良くなるのは良いのだが……。

 隣を見ると、不機嫌そうなマオさんが俺の服の袖を掴んで……もう、ベンチを離れたいと訴えている。


「そろそろ、帰ろうよ小守さん……」


「そうは、言っても目の前に居るから……帰り難いね」


 目と鼻の先で、友情を題材にした劇みたいな事をやっているのだ立ち上がり難い……それもゲストは俺。

 本人達はまじめかもしれないが、付き合わされる俺とマオさんは堪らない。


 ちょっとそこ退いてとか……言い辛い展開なので、ベンチに座りっぱなしだ。


「あのお兄ちゃん……その……あのね?」


「頑張ってみーちゃん……!」


 勝気そうな女の子が、手を前でモジモジさせて何か言い難そうにしている。

 その背後には清楚そうな女の子が、心配そうな顔で勝気そうな女の子を見ていた。

 何だ、何だ、次は何が起こる?

 身構える俺に、勝気そうな女の子は耳まで赤くさせて俺を熱っぽい目で見てきた。


「おにーちゃんの……れ、連絡先を教えてください……!お願いします!」


「ワタシからもお願いします!」


 二人から連絡先を、求められた。

 二人は俺を潤んだ瞳で、じっと見つめてくる。

 人懐っこそうな可愛い女の子達のお願いだが……。


「駄目だよ……小守さん、連絡先は教えないで。もう行こう、十分休んだから」


 立ち上がったマオさんが、俺の腕をグイグイ引っ張る。


 だが……さっきの光景が頭に残っていて、このまま俺が去ったら……また、この子達が仲違いをしてしまうのでは?と不安になった。

 それに勝気そうな女の子の、お腹を見る。

 さっき強烈な一撃で、痛そうにしていた……服の上からは、分からないが青痣になっているかも。

 もし、もう一度あの一撃を喰らったら……怪我どころじゃ済まないかもしれない。


 さっきは俺が居たから、清楚そうな女の子を止められたけど……このまま去ったら、あの子を誰が止めるのか。


「うぅ……ママ……ごめん、ごめんね。ワタシ……駄目みたい……ぐすっ」


「ちーちゃん……!?大丈夫だよ!きっとお兄ちゃんが、アタシ達に連絡先を教えてくれるから元気だして!」


「ほ、本当……みーちゃん?ワタシ達におにいさんが連絡先を教えてくれるの?」


「こ、こいつら、最初っから……!?」


 マオさんが唖然とした表情で、二人を見ているのが気になるが……俺は今はそれを気にしている余裕はない。


 そうだ……あの清楚そうな女の子は、ママのしたかった事を代わりに叶えるつもりだったのだ。

 それを勝気そうな女の子に邪魔をされて、仲違いになってしまった。


 恋愛結婚か……この世界で俺が、そんな事が可能なのか……可能か以前の前に、妹をどう説得するかが問題だと思うけど……それは横に置いとく。

 まあ、連絡先ぐらい……別に良いか。

 それを教えるだけで、可愛い二人の女の子の仲が悪くならない訳だし……。


 俺はポケットからスマホを取り出す。


☆ みーちゃん


 アタシとちーちゃんはさっき男の人が座っていたベンチに座り、スマホをニヤニヤと見つめる。

 男の人と連絡先を交換したのがさっきから嬉しすぎて、ずっとスマホのアドレス一覧を眺めていた。


「ちーちゃんが言った通りにしたら、上手く言ったね?」


 アタシは今回の作戦を考えた、ちーちゃんの方に顔を向けずに言う。

 ちーちゃんも今はアタシと一緒で、スマホを眺めている筈だから。


 さっきのお兄ちゃんとの出会いから、最後までのお話は全部ちーちゃんが考えてくれた事だ。

 今日は学校も早く終わって、ネット掲示板を見ていたら……男の人の目撃情報を見つけたので、以前からちーちゃんが考えていた事をやってみた。


「うん、みーちゃんとワタシなら、上手く行くと思っていたの……でも、やっぱりおにいさんとお話するの緊張して失敗するかもって心配したの」


 どうやらちーちゃんもアタシと一緒で、お兄ちゃんを前にして緊張して失敗しそうになっていたみたい。

 私達の周りにはほとんど、男の人が居ないのだ。

 緊張しないほうが、おかしい。


「やっぱり隣のお姉さんが、アタシ達の邪魔をしようとしてたね?」


「プランBを用意していて、本当に良かったの。それと……いろいろ、乱暴にしてごめんねみーちゃん」


 アタシのお腹をちーちゃんが撫でるけど、仕込んでいた物のせいで感触が分からない。

 このプランBはもし男の人との会話の途中に、邪魔をする人が居たらインパクトを与えて混乱を与える作戦だったのだ。

 もちろん作戦は成功、女の人は何かを言い掛けてたけど……驚いて結局何も言わなかった。


「ううん、服の中に仕込んでるコレ……叩くと大きい音がなるわりには、あまり痛くなかったよ。ちーちゃんのママは、すごいよね」


 ちーちゃんがママに頼んで用意していたコレのお掛けで、痛そうな音が鳴っていたのだ。


 普通に考えて、ちーちゃんのような女の子が同い年のアタシを一方的に殴るなんて変なのだけど……コレのおかげで違和感を、頭の中から消せたみたい。

 大きな音がなるたびに、お兄ちゃんは心配そうに見てたから……おかしなところを感じていても、アタシの事が心配でそれどころじゃなかったのだろう。


「みーちゃんには大変な役を押し付けちゃったから、ママにみーちゃんが痛くならないようにってお願いしたの」


「こんなのを用意出来る、ちーちゃんのママが何者なのか気になる……ちーちゃんもママが何をしてるのか知らないの?」


「うん……何時も聞いても、ワタシは知らないほうが言いって教えてくれないの」


「ちーちゃんのママは、ミステリアスだね……」


 まあ、ちーちゃんのママが何者なのかなんて今は、あまり気にならない。

 今はお兄ちゃんの連絡先が載ったスマホの画面に夢中だ。

 別に連絡するとかまだしない。

 それは、ちーちゃんが考える事だ。

 その方がきっと成功する。

 何時もそうだったから。


「ねえ、みーちゃん……ワタシとみーちゃんだけで、良いよね?おにいさんのお嫁さんは?」


 スマホの画面から顔を上げて、ちーちゃんの方に顔を向ける。

 ニコニコしたちーちゃんが、アタシに尋ねる。

 もちろん、アタシの答えは決まってる。


「うん、お嫁さんはちーちゃんとアタシだけで十分だよ」


 あのお兄ちゃんのお嫁さんは、アタシとちーちゃんだけで良い。

 他は要らない。


「良かったみーちゃんも、ワタシと同じで♪」


 小さい頃から一緒のちーちゃんとは同じ、それは当たり前。


「アタシもちーちゃんと、同じで良かった♪」


 これからはあのお兄ちゃんと3人一緒が当たり前になりそう。

主人公と妹より幼いキャラを、考えた結果。

二人のロリキャラでした。

長々と考えてたら、かなりの長さに……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=981153059&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ