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14.肉食系妹に抱かれて眠る草食系兄。

14話です。落ち込んだ主人公が、妹に癒される回?です。

 俺は朝食後に、特にする事なくベッドの上で横になる。


 ついさっき、ショッキングな事実に気が付いたのだ……少しは横になって、休みたくなる。

 落ち込んだら何もせずに精神を休ませたほうが、立ち直りが早い気がする……。


「はぁ……俺には何が残ってるのかな?」


 引き篭もりの俺に得意な事は、あるのか?

 高校にも行かずに、引き篭もってる俺に何が出来る。

 妹は俺を養ってくれるらしいが……本当にそれで良いのか?


「どうしようこれから……」


 将来が不安になってくるのは、引き篭もりだからか……それともこの世界に来てしまったからか。

 落ち込む事があると、今まで不安に思っていた事が次々と頭に浮かんでくる。

 ベッドの上で、身体を丸めてじっと壁を見つめる。


 どうやら俺は妹に力で負けたのが、そうとう精神の負担になったらしい……。

 この世界では女性が強いとは、知ってはいたけど……まさか、この世界の男じゃない俺が負けるとは思ってはいなかった。


 何だかんだで、男としての力に自信があったのだ。

 その自信が挫かれると、さすがに凹んでしまう。

 ご飯を食べたからって、直ぐには再起できない……。


「何だか寒い……こんなに今日は冷えてたかな?」


 特に手や足が冷える……。

 精神が参ってる時とかに良く手足が冷えるのだが……何でだろうね。


「大丈夫ですか兄さん?私がお身体を温めましょうか?」


 耳元に妹の鈴を転がすような声が、聞こえた。

 妹はまだ部屋に帰って来て居ないと思っていたので、突然聞こえた声にびくりと肩を震わせてしまう。


「!」


 横に寝転がっている俺の背に、妹の豊かな胸が押し付けられる。

 服越しに伝わる温かさと、水風船みたいなぷにぷにとした感触がなんだか心地が良い……。

 さらに俺のお腹に妹の白魚のような手が回されて、妹が俺に背後から抱き付いた形になった。


「すみません……女性の私が男性の兄さんに、抱きつくのはいけないとは分かってはいるのですが……ベッドの上で身体を丸める兄さんが、とても寒そうでしたので……」


 妹は俺の耳元近くで喋るので、ゾクゾクとした刺激が背筋に走る。

 背筋を震わせていると、妹はもっと温めないといけないと思ったのか……背中に押し付けている二つの塊をさらに強く押し付けた。


 通常時なら女性の胸の感触に慌てた筈なのだが……今は妹と身体を密着させた部分から感じる、温かさが心地よくて慌てる気が起きない。


「いや、本当に寒いから助かるよ」

「くふふ、兄さんの役に立てて良かったです。それにしても……今日は少し寒いらしいですから、寒がりの男の人はもっと寒いのでしょうね……。女の私は兄さんとこうしているだけで……熱くなってくるので、そうでもなかったりするのですけど♪」


 背中越しに妹の心臓の、どくんどくんと強い鼓動を感じる。

 その鼓動の強さに呼応してか、背中に感じる体温が上がってきているような気がした。

 俺の背中にじわりじわりと妹の熱が伝わり、段々と精神が癒されていく気がする……。


 おかしな話だが……妹のせいで精神が参ったのに、原因の妹に癒されている。


 少しの間、無言の時間が続いた。


「すぅ……はぁ……すぅ……はぁ」


 耳元で妹の呼吸音が聞こえてくる……ただソレだけだけど、何故か落ち着く。

 近くに人が居る、自分が独りぼっちじゃないと感じられるだけで不安がすっと消えていくのだ。

 俺のいた世界では、この精神が不安定になっていた時は一人でベッドの上でまるまっていただけだったが……この世界では、妹が近くに居てくれた。


「ずいぶん温かくなりましたね兄さん……?ですけど、もう少しこうして居ても良いですよね」

「うん」

「じゃあ、もっと兄さんを温めて上げますね♪」

「ありがと」

「いえ、いえ、私が兄さんにもっと触れて居たいだけですから」


 俺のお腹に回された妹の小さな手が、俺のお腹を優しく撫でる。

 まるで子供にするように、優しく……安心させるかのように。

 昔母さんに、お腹が痛いと泣いた時に同じ事をして貰った事を思い出した。


「母さんも、同じ事をしてくれたな」

「くふふ、母さんと私は親子ですからね?似るのは当然ですよ」

「俺もそうだけどね……」

「はい、そして私の兄さんです♪」


 背中越しに、妹が嬉しそうに笑ったのが分かった。

 何時もはどこか焦りを感じているような妹の声が、今は少し余裕があるようなそんな声だった。

 俺も妹と話す事に、若干緊張感が取れてきた気がする。


「こうやって一緒に横になって……兄さんとお話するのは、初めてな気がします……以前の兄さんは、私の事を見てくれませんでしたから……」

「そうか……」


 以前の俺はこの世界の妹の事に、関心がなかったのか?

 うーん、以前の俺について調べてみたけど……日記なんて見つからなかった……。

 いや……あれは、そうなのか?


 机の奥にこの前、アニメDVDやマンガを隠した時に一応何か無いか調べたんだけど……奥にノートの1ページを雑に破いたのがあって、その紙にこう書いてあったんだ。


 ”そとにでたい””こわいおんなのいないせかい””だれか””こうかん”


 だいたいこんな感じな事が、書かれていた。

 書きなぐって書いてるせいか、俺が解読できたのは少ない。

 結構書いてあったのだけど、重ねて書いてある部分もあるから読めなかった。


 最初そのノートの切れ端を見た時、俺は呪詛かな?とか思っちゃったよ。

 手に持った時、「うわぁ!」って手を離したのはしょうがないよね。

 自分の机の奥に、こんなのが合ったら驚くって……まあ、別の世界の自分の机だけどね。


「でも、最近の兄さんはまるで別人にでもなってしまったかのように……こうして、私とお喋りしてくれたり……女の私に、男の兄さんのお身体を触らせてくれたりしますので……」


 妹は一旦言葉を区切り、俺の耳に唇が触れるくらいの距離で……。


「以前よりもっと兄さんの事が、好きになりました。くふふ♪」


 嬉しそうに妹は俺にそう言った。

 妹に好きと言われた俺は、若干嬉しく思う反面……複雑が気持ちになった。

 元居た世界の価値観がまだある俺には、こんな俺を好きと言ってくれる……例えアイドルのように可愛い容姿の妹でも……そうやすやすと、恋愛感情が上手く持てない。

 それは元居た世界でもそうだったので、これは人の本能なんじゃないかと思う。


 でもこの世界の人間は、兄妹で子作りとか拒否しないみたいなんだよね。

 医療が発展しているせいかな?

 まあ……男が減少している世界だから、兄妹で子作りは嫌とか言ってられないのだろう。


「この前、言いましたが……その……兄さんの子供をお腹に宿すのは、学校を卒業してからとお願いしましたよね……?」

「うん」


 そう確認するように言った妹の声には、若干緊張をはらんだ様子だ。

 言い難いのか言葉が続かず……もじもじと膝を擦り合わせている感じが、背後から伝わってくる。

 なので俺が続きを促した。


「それでどうしたの?」

「え…と……その、ですね?今のこの状況なら……兄さんと……えへへ」

「んっ?」


 どくんどくんと背中に感じる妹の心臓の鼓動が強くなってきている。

 さらに背中は温かいを通り越して、熱くなってきたので俺の背中はじっとりとした汗が吹き出てしまった。

 妹も暑いのか、俺の耳元に感じる息遣いが荒くなり始める。

 それとお腹を撫でていた妹の小さな手が、段々と上に上がって来て男の俺の胸を服の上から控えめに触ってきた。


「はぁ……はぁ……兄さん。わた……私、兄さんと……すぅはぁ」


 背後に居る妹の様子がおかしい……いや、元の世界の妹を知ってる俺には日頃お世話になっているけど、この世界の妹は何時でもおかしい存在に見えていたのだが……今現在は何時にも増して、おかしく思える。


「どうした様子が変だけど、何か病気なのか?」

「はぁ……んっ……くふふ…♪」


 駄目だ俺の声が聞こえてないみたいだ……いったい、どうしてしまったのか妹は?

 とりあえず妹の様子を確かめようと、身体を無理やり妹の方に回転させてようとしたが……。


「あむっ!」

「な、なぁ!」


 耳を突然甘噛みされて、俺は驚いて動作を中断してしまった……。

 妹の口内の熱が、俺の耳に伝わってくる。


「ほ、本当にどうしたんだ!?」

「くふふっ……兄さんとは学校の卒業まで子作りは出来ませんが、それまでの間……味見をしても良いですよね?答えは聞きません、もう我慢出来ないのです……さっきから、兄さんの良い匂いを嗅いでいるせいか……ずっと兄さんを襲いたい、襲いたいって身体がじんじんと疼くんですよ?」


 妹は熱の篭った声で俺の耳元で言う……。

 俺の事を、蕩けた表情で見ている妹の顔が目に思い浮かぶようだ。

 さらに前に回している小さな手が、俺の胸を服越しに優しく掴む。


「お、落ち着け!俺達は兄妹だぞ!?」

「それがどうかしましか兄さん?」

「!」


 妹は何か問題でも?と言うような口調だった。

 しまったこの世界では、そのいい訳は通じなかった……政府が妹との子作りを、問題にしていなかったのだ。

 この世界に来た初日に学んだじゃないか!


「それにまだ本番はしませんから、安心してください兄さん?ただ……今私のこの熱く火照った身体が落ち着くまで……兄さんで私を癒すだけですから……ぺろり」


 ぞくぞく……。


 背筋にゾクリと電気が走ったような感覚がした。

 妹の唾液の絡み付く舌に耳の淵を舐められて、俺は……ライオンの前脚に身体を拘束されて、噛みつく前に味見をされているシマウマを頭の中に想像してしまう。

 この場合、妹がライオンで俺がシマウマだ。


 どうやら……今まで俺は飢えたライオンの前で、逃げずに平気で地面に横になっていたシマウマだったらしい。


 俺と妹はお昼に母さんが昼飯の用意が出来たと言いに来るまで、布団の中でずっといた。

 とりあえず、妹はギリギリ耐えたみたいで良かったが……。

 俺の耳が妹に舐められたり噛まれたりでふやけていそうだった。

落ち込ませた兄を、自らの手で癒す妹。

まだ、女性に対する主人公の危機感が足りてませんので自業自得みたいな。

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