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10.どうやら妹がネトゲに興味を持ったみたいです。

10話です。11話は体力が続いたら明日。遅かったら明後日。

 次の日の夜。


 先日の銀髪の女の子の襲来から、時間が経ち……今日も夜遅い時間になった。


 昨日あんな事があった俺だが今日も何時も通り、部屋に引き篭もりパソコンでネトゲをしている。

 だけど今日は、何時も通りに一人でネトゲをして居るわけではなく……。


「ねぇ、兄さん?この……商人のキャラクターをクリックすれば、回復アイテムが購入できるのですか?」

「うん、そうだよ」


 今夜は妹と一緒にネトゲをする事になった……。

 楽しそうにネトゲをしている俺を見て、自分もしたくなったらしい。


 今日も妹はパジャマの変わりに相変わらず俺のパジャマの上着を着ている。

 あれから定期的に俺の着ているパジャマの上着を借りに来ては、自分のパジャマにしているみたいだ。


 妹は俺の部屋に自分のノートパソコンを持ち込んで、俺達は同じ机に二台のパソコンを並べてネトゲをプレイしている。

 俺の机は大きめだけどパソコン二台は正直狭いと思っているけど……妹は曰く。


『兄さんと私で肩を寄せ合えば、問題ないですよね?』


 俺に問題ないと言いつつ……妹は恥ずかしそうに頬を赤らめながらも俺に身体を寄せて来た。

 そうして身体が触れた所から妹の暖かい体温が、じわじわと俺に伝わってくる。


 確かにこうして妹と肩を寄せ合えば、プレイするにはぎりぎり問題ないけど……普通に別々の机でやれば良いんじゃないか……?

 俺の部屋にはパソコン用の机だけじゃなくて、ローテーブルもちゃんとある。

 その事を妹に聞いて見ると、妹は顔を俯かせて……俺の袖をちょんと摘みながらこう言った。


『ほんとの事を言うと……私が兄さんとこうしたかったからです。ここ最近の兄さんは、妹の私の事を無視したりしないので……つい、甘えてしまいたくなりました。ご迷惑でしたよね……ごめんなさい兄さん』


 俯いていた顔を上げた妹は、少し寂しそうに笑った。

 俺は妹のそんな寂しそうな表情を見て……勝手に口から言葉を発していた。


『別に、迷惑じゃないよ妹が甘えるくらい』

『本当ですか?これからも、兄さんに甘えても良いんですか?』

『ほどほどにな』

『はい!』


 寂しそうな表情から、ぱあっと嬉しそうな表情に変わった妹。


 まあ、妹のあんな寂しそうな顔で”迷惑ですか?”と聞かれたら……俺には嫌とは言えない。

 もし、迷惑と言ったら……休み明け、俺と同じく引き篭もりになってそうな暗い雰囲気だったし……。

 それにこんな引き篭もりの俺に好意を持ってくれてる妹を、そう邪険に扱う事は出来ないよ。


 そんなわけで、本日の夜は妹と肩を寄せ合ってのネトゲだ。


 俺の横でニコニコしている妹は明日は学校が休みなので、夜遅くまで起きていても問題がないらしい。

 もちろん俺は引き篭もりだから、毎日夜遅くまで起きていても問題はないけど。


「兄さん、次はどこに行けば良いですか?」

「あ、ああ……準備は出来たし、街を出てスライム狩りかな。ついて来て」

「はい、兄さんについて行きます♪」


 妹は俺のキャラの後を着いて行く。


「………」


 それにしても……肩を寄せ合ってから、ずっと妹から甘い匂いがする。

 別にこの匂いが嫌とかじゃなくて、むしろずっと嗅いでいたいような匂いだけど。

 この匂いは香水なのか?

 いや、妹は既に風呂に入ったから……この甘い匂いは……妹の体臭なのか?

 すごく気になるが……妹にこう言う事は、男として聞きにくい。


「えと……兄さんどうしました?」


 どうやら俺は、無意識に妹をじろじろ見ていたらしい……。

 妹はそんな俺の視線に、気がついたみたいだ。

 俺の方に顔を向けた妹は、きょとんとした表情になっている。


「いや、何でもない……」

「そう……ですか?」


 妹は不思議そうに首を傾げて、ゲーム画面に視線を戻す。

 だが、俺の視線が気になるのか……チラチラと横目で、俺を見る。

 匂いの事を聞くなら今だった筈だが、臆病な俺は誤魔化してしまった……。

 まあ、何時までも気になっていても、しょうがないし……俺もゲームに戻るか。


「スライムがこんなにも……これを全部倒すのですか兄さん?」

「そうだ、俺もここでスライムを沢山狩った」


 俺と妹は懐かしい狩場に来ている。

 俺がノービスだった頃に、大量にスライムを狩った所だ。

 今もお世話になっているステラさんと、出会った場所でもある。


 それで今日は、ステラさんがログインしてないのかと言うと……遅れてくると連絡が来た。

 どうやら親と電話をしていて、話が長引いているらしい。

 電話が終わればステラさんもログインすると思うから、ステラさんに今日は妹のレベル上げを手伝うと言わないとな。


「俺がスライム達を引き付けるから、その間に倒してくれ」

「分かりました兄さん!行きますよ……えい、えい!」


 なんかスライム攻撃するのに、声を出してる妹。

 ゲームで声出しちゃう人、たまに居るよね。

 俺も元の世界で、格闘ゲームしてた時につい声出る時あるし。


「えいや、とう、この……!」


 妹のキャラは、短剣をスライムに突き刺ししている。

 攻撃されているスライムは、何故か妹の攻撃に見向きもせずに俺に攻撃を続けていた。

 何でスライムが攻撃目標を移さないのかと言うと、俺がスキルを使用しているからだ。


『”挑発”』

『ぽよっ!』


 スキルを使う事により、妹に敵の攻撃目標が移らないようにする。

 これはノービスから転職して、剣士で得たスキル。

 いずれ、お世話になっているステラさんの役に立つために取得したスキルだ。


『ぽ……よっ』


 妹のキャラが、やっとスライム一匹倒した。

 キャラの足元に、ゼリー状の物体が散乱している。


「やりましたよ兄さん!スライム一匹倒しました♪くふふ♪」

「うん、良く頑張ったな」

「はい!」


 まだ、スライム一匹しか倒してないけど……ずいぶん嬉しそうだ妹は。

 ノートパソコンの前で、手をぎゅっと握ってガッツポーズをしている。

 一通り喜びを表現した妹は次のスライムを倒しに、向かった。

 そんな妹を見て俺は……。


 ふと……俺もスライム一匹にあんなに、はしゃいだ時期があったのかと考える。

 うん、無かったわ……普通にスライムを蹴散らしてたわ。

 そんな事を考えていると……システム音が鳴った。


『ステラ様がログインしました!』


 どうやら、ステラさんは親との電話が終わったみたいだ。

 フレンドのステラさんには俺の現在位置は分かるし、そろそろこちらに来るかな?

 おっ、早いなステラさん。

 もう俺の居るマップに来たみたいだ。

 マップにはステラさんの位置を表す、赤い点が表示されている。


「……兄さん、そんなにも嬉しそうにして……どうしました?」


 俺は嬉しそうな表情をしていたのか?

 そうか……俺は嬉しそうにしてたのか。


「ああ、俺の友達のステラさんがログインしたんだ。この前聞いてきた女の子キャラの人だよ」

「そうですか……それで、そのステラさんがもう直ぐここに来るのですか?兄さんと私が、遊んでいるのに?」


 妹は拗ねたような表情で、俺を下から覗きこむように俺を見る。

 黒い瞳が俺をじっと見つめる。

 その瞳に映る俺は、とても戸惑った表情をしていた……。


「ステラさんとは友達だし……来ても問題無いと思うけど?」

「兄さん……今はわ・た・しとゲームをしているのです。例え兄さんの友達でも、遠慮して欲しいのですが?それでステラさんには、兄さんから私と遊ぶのでステラさんとは遊べない事を伝えては貰えないでしょうか?」


 顔にお互いの息が掛かるほどの距離に、妹は顔を近づかせて俺にそう言った。

 俺は思わず仰け反る。


「まあ……俺はレベル上げに付き合ってるからステラさんとは遊べないけど、お話する事ぐらいできるよね?」

「兄さんと私が遊んでいるのに、他の女とお話する事なんて……あるのですか兄さん?ねえ、あるのか聞いてるのですが……兄さん?くふふ♪」


 何時の間にか拗ねた表情から、笑顔に変わっていた妹。

 妹の顔はアイドルのような可愛い笑顔の筈なのだが……俺は何故か妹のその表情が怖い。

 俺は逃げるようにゲーム画面に、視線を移す。


『こんばんわ、お昼ぶりだねナナシキさんって……リトルスノーも一緒!?』

「え、ステラさんと何時知り合いになったの?」


 どうやら妹は、俺の知らない間にステラさんと知り合いになっていたらしい……。

 妹は俺の視線を辿って、ゲーム画面を見るとクスッと笑って俺から離れる。

 そして、ノートパソコンのキーボードのパネルを叩く妹。


『お久しぶりですステラさん。今日は兄さんと二人で遊んでいるので、お帰りください』


 妹のキャラクターが、ステラさんの方に向いた。

 神官のステラさんは、俺達の所にやって来る。


『あたしは今来たばかりなのに、遊ばないで帰れるわけないでしょ?ナナシキさんのい・も・う・とのリトルスノーさん?』


『では、私と兄さん二人で遊んでいるので……ステラさんは、こことは別の所でお独りで遊んでください』


『あたしは神官。生憎独りじゃ、まともに遊べないの?だから、ナナシキさんと組む。分かったかな、ナナシキさんの妹?それに今、パワーレベリングしてるんでしょ?それなら、ナナシキさんはモンスターを引き付けるだけだから……今、あたしと話すくらいは出来るよね』


『そのパワーレベリング?とか知りませんが、兄さんと私が遊んでいる最中はステラさんとお話する事は出来ません。リアルで私と兄さんは楽しくお話をするからです。残念でしたね、兄さんとお話する時間はステラさんにはありません。今はもう夜ですのでログアウトして寝てください』


『いやいや……』


 どうしてこうなった?

 俺が知らない間に、妹とステラさんが知り合いになっていて。

 それで仲が最悪ときた。

 今も、妹は笑顔でノートパソコンのキーボードを軽快に叩いている。

 妹はゲーム画面に映るステラさんと口論中だ。

 ステラさんも、妹の事でヒートアップしている。


「んっ……?」


 じー……。


 口を挟める状態じゃないので、落ち着くまでまとうとしていたら……。


 ふと、誰かの視線を感じたので部屋を見渡すと……窓が開いていて、人一人分が通れる隙間が開いていた。

 そして……窓の開いた隙間からこちらを覗く、血のように赤い瞳。

 そういえば、あれから窓の鍵を閉めるの忘れてた……。


「………」

「………」


 俺と銀髪の中二病患者は、目と目が合うが……無言だ。

 どうやら銀髪の女の子は、この部屋の空気を察するスキルを発動したらしい……。

 無駄にハイスペックな中二病患者だ……。


 俺は銀髪の女の子がこの場に居ても危険なので……大人しく帰って貰いたいと思っていたが。


「よい……しょ……ふぅ」


 何故か銀髪の女の子は、俺の部屋に静かに入り俺の布団に潜りこんだ……。

 幸い妹はステラさんの事で今忙しいから、気がつかなかったようだ。

 それにしても何をしているんだ……あの子は?

 まさか、俺の家に寝に来たのか?


 まあ、帰り際にまた今夜来るとか言ってたし……。


「兄さん、そこに誰か居るの?」

「い、いや、誰もいないよ」

「そうですか……」


 妹は俺の視線の先を辿ったけど、何も居なかったので不思議に思ったらしい。

 少し部屋を見て、何も居ないのを確認して妹はゲーム画面に戻った。

 銀髪の女の子は、現在俺の布団の中に居るみたい。

 だから妹に見つからなかったようだ。


 俺も嵐が過ぎるのを、布団の中で待ちたい……でも。


「んっ?駄目ですよ兄さん、この後私とゲームの続きをするんですから?だから、もう少しお待ちください兄さん。今……この女を兄さんの傍から、追い払いますから……!」


 腰を浮かしたら、妹に座ってろと言われてしまった。


「こっち……こっちだレイヴン。我と一緒に寝ようぞ?」


 布団の隙間から顔を出して、銀髪の女の子は俺に一緒に寝ようと手招きをする。

 だが、無理だ。

 最低でも、今日は妹とステラさんのお話が終わらない事には……。


「もう、兄さんは私だけの兄さんだと言っているのに……!」


『ナナシキさんは、私と一緒が良いの。わかったかな?』


「眠たいのだろうレイヴンよ……?我と一緒に、永久の闇に堕ちるとしようぞ」


 ………。


 それから妹とステラさんの話が終わったのは、明け方だった……。

 妹とステラさんはお互い譲らないので、話は平行線。

 結局は、お互い疲れて解散する事に……。


「兄さん……お休みなさい」

「おやすみ……」


 妹は足元をふらつかせながら、自分の部屋に帰って行った。

 後でノートパソコンを取りに来ると言っていた。


「さて、俺も寝るかな……ふぁ~あ」


 そういえば……何か忘れているような?

 まあ、寝て起きてから考えようか……今は、とても眠い。


 俺は布団の中に脚を突っ込んだが……何か柔らかい何かを蹴っ飛ばしたようだ。


「ふにゃ……!?」


「なんだ……これ?ふぁ~あ、まあ良いか……」


 俺は柔らかいのを両手で掴んで、抱き枕にして眠った。

 その枕は何だか抱きつき返して来たけど、眠くて気にして居られなかった……。


「レイヴン……レイヴン……我は、幸せ過ぎて死ぬかもしれぬ……!だが、我に悔いはない!」


 枕がなんか騒いでたが、もう眠くて……おやすみ……。

銀髪の女の子は、とても幸せな表情で朝方主人公に見つかった。

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