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遠く近くの彼方此方  作者: 冬月 裕也
6/9

呪詛 2

2

もう・・・ここまでか・・・みんなを守れなくてすまない・・・

何を言っているのですか。しっかりしてください。

完全に我々の負けだ・・・しかし・・・

弱気な事を言わないでください。あなたはまだこのクニを、

もはや無理だ しかし・・・万年先も忘れん。



!?僕は飛び起きた。全身から滝のような汗が流れている。

瞬間、胸から右手にかけて痛みが走る。

瞬間、大きな混乱が起きる。

見覚えの無い土壁、新しく張り替えたばかりであろう障子、そして和室を不自然に照らすLEDの照明。起きたばかりのまだ一割ほどしか回せない頭を無理に回して記憶とこの風景を脳の中で照らし合わせる。しかし、どこにも合うことは無かった。

ついさっきまで僕が寝ていた布団は白く、硬い。人が使っていない布団はただの布の中に出来るだけの綿を詰め込んだだけの感触だ。だからだろうか?どこと無く寂しさを感じる。建てたばかりなのだろうまだ人の体臭や皮脂がしみ込んでいないこの部屋も、寂しさに追い打ちをかけた。

しかし、畳の藺草の匂いが唯一僕の心に余裕を齎す材料となった。

心に落ち着きを取り戻しつつあった僕のいる部屋に一人の男が入ってきた。襖の開け方からすると乱暴な奴ではないらしい。三十前後の目の細い男だ。

「気分はどうだ?」畳に腰を下ろし一言。

「悪くはありませんけど・・・。」少々の混乱と共に回答。

すると、男はそうかそうかと頷きながら自己紹介を始めた。

「私は山口貴幸。ここで神主をしている。」

神主・・・、するとここは

「そうだ、五艮印(いつごいん)神社だ。」僕の思考に気づいたのだろう。先回りして云った。

「五艮印神社・・・!!僕は土砂崩れに巻き込まれて気を失ってたのか。」

それを聞いたタカユキとか云う男は細い目をより一層細めて云った。

「それは少し違う。確かに今、君は紛れも無く生きている。しかしだ、落ち着いて聞いてくれ。君は一度死んだんだ。」

整理がついてきた頭の中にまた一つ混乱の滴が垂らされた。今、僕が着ているのは制服ではなく甚平だ。土砂崩れに巻き込まれたのだから服も体も無事な訳がない。なのに僕の体は無傷だった。掠り傷さえもない。

「詳細は隣の部屋で話そう。君の所持品もそちらに置いてある。服と傘、それに鞄はこちらで処分させてもらう。それでいいね?」僕はこくりと頷いた。傘の事については弁償して謝ろう。

隣の部屋へは襖で直接行けるようになっていた。その部屋も和室で真ん中にちゃぶ台が据えてあるだけと云うとても単純なものだった。

入ってきた襖から見て男が奥で、僕が手前。そんな構図で二人向かいに腰を据える。それと同時に右手にある襖から湯呑を乗せた盆を持ちながら少女が入ってきた。

「面子が揃ったな。本題、君の一時的な死について話そうか。」


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