序章 who 3
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昼休み、正人は図書室へ本を借りに行った。
図書室に入るなり正人は声をかけられた。司書の先生だ。
「正人くん、新宮さん見なかった?」
「見なかったですけど、いないんですか?」
「そうだよ。彼女が当番を忘れるとは珍しいな。」
彼女は真面目で成績優秀、また一年にして委員会をまとめ上げると言うかなりしっかりとした性格だ。
手伝いますかと言ったもののいいよと正人は断れてしまった。なので、昨日事件について何書いてないかと新聞を見てみたがもうすでに知ってる情報しかなかった。まあ当然かと肩を落として図書室をでた。
教室に向かって歩いていると陽夏を見かけた。図書当番だったことを伝えるため、正人は彼女の名前を呼んだ。しかし、返事が無い。
「なんだ?あいつ」
「気づいて無いのかな」
今度は近づいて手を取る。「まりっ・・・」
彼女が怖い顔をして正人を睨む。
手がとても冷たかった。
「何か用?」
鋭い殺伐とした声で言ってきた。いつもの優しい声じゃない
「何か怒っているのか?」
別に、と素っ気ない答えをして彼女は下に目をやる。
「なんかおかしいぞ、今日の陽夏。どうかしたのか?」
下を向いていた顔がハッとこちらを向き、また正人を睨みつけている。
「なに?」
正人はついに黙りこんでしまっていた。
「あっ、ごめん。今日、図書当番だから。」
「そう、用件はそれだけ?」
そっけない態度とともに彼女は正人の手を振り払い図書室へと向かって行った。正人はその後ろ姿を見ていてどこかもの悲しく思っていた。