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遠く近くの彼方此方  作者: 冬月 裕也
1/9

序章 who 1~2

少年は骸の様に遠くを見る。

1


正人の通う高校の図書室からは隣街が見える。

山に沿って家が立っている様子だの、街の中心部だのが見える。

その景色はどこまでも、霞んでいた。


正人は図書当番として出口手前のカウンターの奥で腰かけ頬をついていた。2、3人しかいない室内。ただエアコンの運転音が部屋中に鳴り響いていた。其の音を聞きながら、ぼんやりしていると

「中上君、またぼっと外見てる!」

豆鉄砲を食らったようにと、まではいかないが少々驚いてキョトンとしていた。

「あっ、陽夏(まりか)か、すまん。で、要件は?返却?」

「そう、これね。ごめん、少し遅くなっちゃった。」

「いつもはきっちり返却してくる陽夏が珍しいな。テストの影響?」

「うん、期末テストの勉強でよめなくて。」

「しょうがない。」

陽夏は正人と同じクラスの図書当番だ。今日は非番で普通の利用者として図書室を利用している。

正人はふと視線を窓の外へ向けた。

「もうすぐ夏休みだな。図書委員としていそがしくなるな。これから」

「本当にそうよね。正人は何か補習する予定?」

「いや、しない。部活が少しでもできないのはいやだからね。そっちは?」

「英語をね。」

「クラスの一位さんが偉い。」

夏休みの間は返されて無い本や、紛失した本が無いか地道に確かめる作業がある。それを炎天下でなくクーラーのかかった部屋でやるだけマシだがそれで三日は丸々潰れるのは痛い。さらに、二学期には体育祭や、文化祭の運営の補助もしなければならない。その割にはマラソン大会では、運営の補助はなく走らなければならないと楽と思われがちの図書委員は何かと大変だ。

「まあ、それなりに頑張るか。」

陽夏の鼻筋の通った美しい顔が優しく正人にほほえみかける。


2


午後7時頃

閉室した後、ちょっとした片付けをして正人は図書室を出た。

日も暮れ、ジメジメどんよりとした空気が肌にまとわりついて気持ち悪い。暗くて何も見えない下駄箱で僅かな光を頼りに自分の靴を出す。そんな中、生徒もあまりいないような校舎の中で放送が鳴る。

「部活動をしている生徒、及び部室などに残っている生徒は速やかに下校してください。繰り返します・・・」

先生の声に剣呑さを正人は覚えた。

「何かあったのだろうか。」そんなつぶやきを言う。

正人の自宅は学校から近いので歩いて登下校する。正人は帰宅途中ふとスマホ出し、ニュースを見た、誰かが結婚しただの、どっかの政治家が失言しただのと言うようなニュースとともに関心深いニュースがあった。

殺人事件だ。

場所はここから山のほうにある、窪淵地区だ。犯人は逃走中。わりかし近い地区なのでさっきのほとんど誰もいない校舎の中で下校を促す放送をしたのもうなずける。ここら辺で殺人事件がおこるとはめずらしい。

明日、何かしらの発表があるだろう。そんな事を正人は思いながら足早に家へ帰って行った。


次の日、この街はいつもどうりだったがどこと無く緊張に包まれていた。街中はパトカーが其処ら中を

行きかい、小中学校では保護者同伴で登校していた。テレビではトップのニュースとして報道されてた。テレビには良く知っている街の様子が流れてる。正人はそんな不思議な光景を見ながら一人で、朝食を摂っていた。

「ここら辺で、こんな事件が起きるなんて怖いわね。」

と、 正人の母が言う。

「本当にそうだ。ここじゃ珍しいんじゃないか。今日も多分学校で、何かしらの対応はあるとおもうよ。」

「できる限り早く帰ってくるのよ。心配するから。」

「言われなくても分かっているよ。」

そんな会話をしながら正人は朝食を食べ終わるとすぐさま家を出た。街中を歩く人々からは多かれ少なかれ恐怖の感情がにじみ出ていて、えも言えぬ緊張感が伝わってくる。ピリピリとした空気の中、学校へ行く。クラスの教室に入るとそこだけはいつもどうりの空気でほっとした。

「聞いたかよ、昨日の事件。ヤバいよな。」

正人へ話しかけたのはクラスで仲のいい野村 カイだ。

「ほんと、そこらじゅうピリピリして正直怖いよ。」

「どんな殺され方したかお前は知っているのか?」

「いや。知らない。」

「テレビじゃ報じてないけどさ、肩から腹にかけてバッサリと真っ二つにされたらしいぞ、要は袈裟斬ってやつだよ。被害者の身元は分からないが、10~20代の女性が被害者らしいぞ。」

「一体どうやればそんな斬り方できんだよ!」

「本当、気味悪いよな・・・」

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