彼女の姿
世界が歪む。
頭が酷く痛い。ズキズキと痛む。
気が付くと空を見上げている。
何でワタシは倒れているんだろう? ヨクワカラナイ。
周囲を見回すとたくさんの人が倒れている。
皆死んでいるのか、ピクリともしない。
それはとても怖かった。
何故ならこの場に立っているのはワタシ一人なのだから。
数百人もの人がここにはいた。何て事のない、ちょっとした誕生日パーティーの為に彼らは集った。
そう、今日はワタシの十何回目かのバースデーパーティーだ。
でもそんなのどうでもいい。
ここに倒れているのは知らないヒトばかり。
皆、大人ばかりでワタシのスクールの友達はここには誰もいない。何だかとっても空虚。
誰もがお世辞とか、心にも無い言葉をワタシにかけてくる。
やめて、そんなのイヤ。聞きたくないわ。
――リズ、今年のプレゼントは何がいいかな?
何年か前までは、パパはそう言ってワタシにプレゼントを買ってきてくれた。
とても嬉しかった。だって家にパパが帰ってくるんだから。
ワタシのパパはお仕事の関係で、普段は世界中を旅している。
だから、滅多に家に帰ってこない。
大きなお屋敷にはママやメイドさんが何人もいる。
だから、ひとりぼっちじゃなかった。
でも、ワタシにはパパとの思い出が少ない。
だって家にいないんだから。
だから、バースデーパーティーは本当に楽しみだった。
いつも忙しいパパがこの日は帰ってくるの。
あとパパに会えるのは、ううん、……家族全員で過ごせるのは、クリスマスからニューイヤーまでお預け。
だから、本当に楽しみだった…………それなのに。
――すまんリズ、今日はパパの仕事が終わらない。だから戻れないんだ。
あの日、パパはワタシのバースデーパーティーに来なかった。
何だかとっても空虚。
何だろう、これは?
何がそんなに嬉しいの? ……誰も心から笑っていないのに。
何がそんなに面白いの? ……誰も本心から笑っていないのに。
この集まりは一体何なの? 何の為の、誰の為の催しなの?
つまらない、つまらない、つまらない、つまらない。
もういいよ。
ワタシはいつもみたいに”お人形”さんと遊ぶから。
そうよ、ワタシにはあの子がいる。
ワタシの一番の友達で、妹みたいな、子供の頃からずっと一緒のあの子がいるんだから。
だから、もうこんなパーティーどうでもいいよ。
皆勝手にすればいいよ。ワタシも勝手にするから。
怒っても謝らないよ。だって、ここにはパパがいない。
ワタシが欲しかったのは、ただ……。
だから…………
こんな得体の知れない何かなんてもう見たくないわ。
皆何処かにいっちゃえばいいんだ!!!!!
そっか、……そのせいで皆死んじゃったんだ。
ワタシが殺した。
ここにいる大勢の人を殺した。
ママは何処? ママは…………。
ワタシ、そんなつもりじゃないんだ。
だって、本気で死んじゃえなんて思っていなかったよ。
でも、今ここには、ワタシしかいない。
嫌だ、嫌だ、イヤだイヤだイヤだ――――イヤ。
一人はイヤああああああああああ。
◆◆◆
「いやあ………」
晶はそう声を出すのが精一杯だった。
そこにいたのは不気味な赤い人の形をした、何か。
不自然な程に大きな巨躯を持ったそれは同様に真っ赤な鋏を両手で持っていた。
まるで現実離れした光景であった。
赤く巨大なそれ、は屋上に飛び出したクラスメイトの身体を断ち切ったのだから。
しかもそれは複数いた。三人、というべきか。
その三人は交互に鋏を動かして……次々と哀れな獲物を両断していく。
屋上はあっという間に鮮血に彩られた。
「ヒカリ、どうしたのでス?」
エリザベスが少し遅れて晶の側に来た。
「どうしたの、リズ。こんな所で……」
同様にクラスメイトの寿朱音も息を切らしてやって来た。
何故、晶が屋上に行かないのかを二人もすぐに理解したらしい。
屋上に飛び出せば、殺される。
だから動けない。
不思議な事に、赤いそれは三人には反応しない。
ボーッ、と突っ立っているだけ。
パタポタ、と鋏から血の滴を垂らすのみだ。
「し、下に、……戻ろう」
寿がそう言うと階段を降りようと振り向く。
「きゃああああ」
すぐさまに悲鳴が轟く。
晶、エリザベスも思わず振り向く。
すると、階段の下から真っ赤で不気味な獣が昇って来るのが見えた。その獣には目や鼻はついていない。だが何の不自由もないのか階段を昇って来る。
クンクン、と匂いを嗅ぐ仕草をしているが、その鼻らしき箇所には穴が空いてはいない。
目があるであろう箇所も同様に何も無い。
ただ、”口”だけは違う。
ガアアアアア、と呻き声をあげる獣の口は巨大だった。
そしてそのまま口には真っ赤な犬歯や無数に揃った歯が覗く。まるでナイフのようにも見える。
こんな獣に噛まれれば手足は容易に噛み千切れる事だろう。
獣はゆっくりと階段を昇る。獲物を見つけたのか、慎重に隙を伺う様な動きだ。
(このままじゃ死んじゃう)
晶は怖かった。死ぬのが怖い。…………なのに。
不思議と身体は震えていない。
理由は分からない。こんなにも怖いと云うのに。
「あかね、ヒカリ。屋上へ!!!!」
叫んだのは、エリザベスだった。
「でも上に行ったら……!」
寿は表情を引きつらせる。無理もない、屋上の惨事を目にしたらそれも当然だ。
「わたしがなんとかする、だかラっっっ!!」
だが、エリザベスは強い口調で声を荒げる。普段からは想像も付かない強い声。
下にいた獣も一瞬、その動きを止める。
だがその代わり、グルルル、と唸り始める。
どうやら攻撃態勢に入ったらしい。
「でも下の方が安全なん……」
寿はそこまで口にして状況を理解する。
階段へ向けて、得体の知れない何かが無数に歩み寄るのを。
それは様々な生き物に似せられている。
猫に犬は当然の様に、……それにこんな場所にいるはずもない生き物まで。
例えば、それはワニ、それはカバ、それはゾウ。
まるで動物園から逃げ出してきたかの如く、無数の生き物を象った赤い何かで出来たそれらがこちらへ向かって来るのが見えた。
「何よあれ?」
寿は恐怖の為か白目を向きそうになる。
「しっかりして朱音」
晶が彼女の身体を揺らし、意識が途切れない様にする。
「リズ、……大丈夫なの?」
晶の問いかけにエリザベスは大きく一度頷くと答えた。
「まかせテ」
と、ハッキリと強い決意を込めた声で。
「――いくヨ」
エリザベスの声を合図となった。
彼女は屋上へと勢いよく飛び出す。即座に赤いヒトの形をしたそれが反応。その鋏を向けてくる。
「リズッッッ」
晶が叫ぶ。
その瞬間だった。
それは実に不思議な感覚であった。
エリザベスには何故か視える。
目の前にいる赤い人の形をしたそれが一体何で出来ているのかが、はっきりと視える。
それは血液。それもそれぞれがたったの数滴の血液から、あれは形成されている、と。
それらがどうやって襲いかかってくるのかも彼女には視える。
決して自分の身体能力が上がったのではない。それは理解している。でもあの血で出来た人形が次にどう動くのかが、自分には理解出来た。
だから――、
鋏の両刃が獲物を切断する前にエリザベスはその身を低く沈める。そうしてまるでスライディングの様な勢いで滑り抜ける。
幸いな事にコンクリートで出来た屋上には赤い血溜まりが出来ており、程よく滑る。ドロリ、とした気色に悪い感触さえ無視すれば悪くない。
それよりも決して運動神経がいいとはお世辞にも言えなかった自分が、こんな動きが出来た事に正直驚いていた。
バシャッッ、とした血飛沫を飛ばし、彼女は手を差し出す。
まずは奥にいた血で出来た人形に手を添える。
それは確信があった訳ではない。だが、そうした方がいい、と何故か思えたからこその行動。
結果はすぐに出た。
その巨躯が瞬時に崩れ去る。
バシャリ、とその場で単なる血液へと還った。
あとは簡単であった。起き上がった彼女は鋏に手を触れて元の血液に戻し、さっきの人形同様にもう一体のそれにも触れた。
バシャリ、とその場に飛沫を飛ばして消えてなくなった。
残された一体についても特に手こずる事もなく、容易く還した。
「はぁ、はァ」
足元が震える。今更ながらに恐ろしさを実感した。一歩間違えれば殺されていたのだと、遅ればせながらに実感したのだ。
「リズ、今の一体?」
晶は今の出来事に理解がついていかないらしく、困惑した表情を隠せない。
寿に至っては明らかに彼女を怪物を見るような目で見て、……怯えている。
エリザベス自身も困惑していた。
何故なら、あんな感覚は初めてだったから。
初めて目にした、というのに。何故かその人形がどういう風に出来ており、どうすれば形を保てなくなるのかが理解出来た。
WGでイレギュラーについて学んだ座学で”人形使い”と”血液操作能力”についてはかなり詳しく聞いていた。
何故なら、エリザベスのマイノリティとして扱えるイレギュラーの系統がまさに先述した二つの複合技である、と予測がついたから。自分がどのような異能を操れるのか、というのを知る事は極めて重要な事であったから。
――結論で言うなら、血液による人形はかなり厄介な部類に入るイレギュラーと言えるわね。……何故か分かるかしら?
そう問いかけたのは、エリザベスに座学を教えてくれた九頭龍支部の副支部長である家門恵美であった。
「えーと、そうですネ。じぶんのちをつかうから、おうようがきくからですカ?」
――うん、少し違うかな。単に造るだけなら創造の方が優れているわね。
「じゃ、じゃあ……なにがでしょうカ?」
――そうね。人形の質かな。貴女、人形を造る時に何を思いながら造っているのかな?
そう言いながら、家門が指差したのはさっきエリザベスが指定されて造り出した家門ソックリに造られた人形。
突然の指示で慌てて造った物だが、家門は動かす必要はない、と言い切ったので何とか上手く造れた、と思った。
――貴女の人形だけど見事ね。動く事こそ無いけどこれ程の物を造り出せるのは。貴女、大した物ね。
◆◆◆
エリザベスが去った後。
家門は人形を眺める。先程から何度、目にしても驚く程の精度だ。これだけの物を作れるのはやはり凄い、そう思う。
(だけど…………何故?)
家門は思う。エリザベスはこれ程に他人に似せた人形を造り出せるにも関わらず……何故自分に似せた物に関しては造る事が出来ないのであろうか、と。
先日、動ける人形を造ってもらった際に彼女は確認したのだが、エリザベスは構造の単純な物であれば造れる。アメーバ状の生物等に似せた擬似的な人形であれば問題なく。
だが、それが人に似せた物となると途端に精度が落ちてしまう。
まるで、それを造るのが……。
(まさか誰かにその様に洗脳?)
そこまで考えてその考えを否定する。彼女は一種の記憶改竄こそ施されていたものの、洗脳等の形跡は無かったのだから。
(じゃあ、一体何があるの?)
◆◆◆
バシャ、パシャ。
不快な水溜まりを晶は歩く。
足元は完全に赤く染まる。敢えて周囲は見ない様に心掛ける。
何故ならそこにはクラスメイトの無惨な亡骸があるから。
(怖い、怖い)
晶は全身を震わせる。恐ろしかった。こんなの夢に決まっている、そう思いたかった。
(でも何故?)
それなのに、そうそれなのに。晶はこうした事態にも関わらず、この惨状を客観的に見ている自分がいる事に気付いていた。
寿は今にも泣き出しそうだ。不安なのだろう、無理もない。
だから晶は彼女の肩に手を添えて、軽く抱き寄せる。
昔、……そう一〇年前に家族を事故で失った時に自分の兄がそうした様に優しく。
(何故なんだろう?)
そう、怖いのに。怖いはずなのに。どうしてかは分からない。晶の目はいつの間にか周囲を見回している。
心が震える。何か、そう何かをしなければいけない。何故かは分からない。だけど、そう思う。
「はぁ、はァ……」
エリザベスは肩で息をしていた。さっきから彼女は階段を上がろうとしていた血で象られた人形を元の血液へと還していた。
もうどれだけの人形をこうして片付けただろう。途中から数える気にもならない。
無数の人形を相手にしていて彼女はふと思う。この動物達に使われているのは自分の血液だと。勿論、根拠などはない。だが分かるのだ。この血が自分の物である、と。本能的に。
(ど、どういうこト?)
困惑しながらも最後の人形を還し、何とか晶と寿の待つ屋上に戻る。
足元がふらつく。想像以上に疲れたらしい。
エリザベスが戦闘を行ったのはこれが初めての事だ。
彼女はWGの関係者ではない為に訓練を受けた事はない。
(むりいってでも、きたえたらよかったかナ)
「きゃあっっ、バケモノ!!」
寿の悲鳴があがる。思わずエリザベスは慌てて周囲を見回す。だが、周囲には誰もいない。
ピチャッ、血が滴る音。
そしてふと、気付く。自分の手が、足が、服が、顔にも……、
今の自分の姿……全身を鮮血で血塗れになっている事に。
それは彼女の中でとても嫌な何かを思わせる。
鮮血の中に誰かが立っている姿が浮かび、
そしてその姿が彼女の中で何か弾ける。
「うわああああああああ」
エリザベスが頭を抱え、その場に膝をついたその時だった。
キイィィィン。
何かの音が聞こえ、屋上が爆ぜた。
「うう、っっ」
晶が目を覚ますと誰かが目の前に立ち塞がっている。
そして、エリザベスの目には今まで見た事のない、危険な光が宿っている。
◆◆◆
(一〇分前)
一本の通信が届く。
彼女の元に。
それは一見すると誰も気付かない音。
だが彼女にはハッキリと聞こえる音だ。
これは彼女の為に用意された特殊な音。
犬笛に近い周波数の音波で、常人の聴力では聞き取る事は不可能。
この通信が届く時、それは彼女に任務が入る時だ。
迷う事なく彼女は”フィールド”を展開した。
彼女以外のクラスメイトは全員が即座に意識を喪失した。
彼女の放つフィールドの効果で睡眠状態に陥ったのだ。
「◇◇◇□◎◆◇□@&#§£¢」
彼女もまた聞き取る事の出来ない音で返事を返す。
何を言うのかその内容自体は問題ではない。
この周波数帯で返事を返す事こそが最重要なのだから。
ジジッ、通信機が周波数を切り替えたらしい。ノイズが入る。
僅かな間が空き、今度は通常の音声が聞こえてきた。
――こちらはピースメーカー。聞こえていますか、サイレントウィスパー?
忘れようにも忘れられない独特の口調とリズムだ、と彼女は相手の声にそう感想を抱く。
「ええ、聞こえています」
――よろしい。では貴方に任務です。
「こんな時間にですか? まだ日が高いです」
普段であれば、彼女が動くのは夜間。日中はまず動かない。
パートナーである零二とは違い、彼女は学生生活を極々平凡な女学生として過ごしているのだから。
予期せぬ、いや、予期はして出来てはいた。
この通信機を使っているという事が既に何らかの事態が悪化、進行している、という事なのだから。
――どうやら要注意対象であるベルウェザーが動いた様子です。
九条がそう言うと、彼女、つまりは桜音次歌音の持っていたタブレットに画像等のデータが送られて来た。
その中には一体どうやって収集したのかは不明であるが、ベルウェザー、つまりはNWEのこの街での支援者の一覧に、彼らの所有する不動産情報。
(よくもまぁ、調べたものね)
半ば呆れた様な声を洩らす。
――さて、件の人物ですが。
九条がそう言うと更にデータが送られて来る。
そこには一人の少女の顔写真が写っており、彼女の顔立ちから海外の人間である事は明白だった。
「……彼女がベルウェザーですか?」
――その可能性が極めて高い人物です。彼女を至急確保。場合によっては殺害も認証します。
そして彼女は素早く動く。
とは言っても、彼女には優れた身体能力等は備わってはいない。
学舎内を巡回する警備員や、トイレ等から出てくるかも知れない。うっかり見つかったりすれば手間だ。ちなみにさっき彼女がフィールドを張ったのは自分の教室のみ。
それにフィールドを余り大きく展開すると、他のマイノリティに気付かれる。そうすれば余計な戦いに発展するかも知れない。
(面倒くさいのは嫌だから)
そう思いながら彼女は中等部の屋上から、旧学舎へと視線を向けた。そして即座に気付いた。今、あちらで何かしらの戦いが起きている、と。
そして異常もすぐに察知する。
そのフィールドは二種類あるようだった。
その受ける印象から二人のマイノリティが少なくとも学舎にいる。一つは学舎へ近付こうとするのを阻害する様な圧迫感。
誰も近付かせない、という暗い意思を感じ取る。
もう一つ、こちらは一見するとそこまでの悪意を感じない。
ただし、それは表向き。仮初めの感覚。
こちらは、まるで甘い囁きの様な心地良さを与え、その場で無力化させる。彼女は持っていたスコープで観察してこのフィールドの意味を理解した。
得体の知れない何かが、倒れている生徒や教職員達から血を抜き出しているのを。
つまりは、こちらのフィールドは無力化した一般人から血を抜き取る為の物なのだ。
どちらがよりタチが悪いかは明白だった。
更に彼女は目にした。
屋上に続々とやって来た生徒がそこに湧き出した赤い巨人の様な人形惨殺されるのを。
更にそこに来たのは、晶であった。
(ヒカリちゃん――)
咄嗟に”音”を使おうとしたが、晶のいる位置と人形が近過ぎる。
桜音次歌音の扱う音は遠距離から攻撃が可能だ。
だが、その音は一種のミサイル攻撃の類であり。周囲をも巻き添えにしてしまうのだ。彼女には晶を巻き添えには到底出来ない。
だから彼女は飛び出した。急いで、少しでも、少しでも早く。
全力も全力だった。後先等考えてもいない。
ただひたすらに走る。一秒でも早く、その場に辿り着く為に。
手足の筋肉が千切れそうだ。でも構わない。
本来であれば姿を隠しての隠密行動こそが彼女の役割なのに。
桜音次にとっては、西島晶は大事な人間なのだから。
階段を昇り、屋上が映った。
そこで悲鳴が聞こえた。
(まずい――)
そこにいたのは、晶、恐らくはクラスメイトであろう女子生徒、そして金色の髪を、白い肌を血に染めたエリザベスの姿。
迷う必要等ない。桜音次はその声を出す。
狙いは目の前にいる。外すはずもない。
そうして今、彼女は晶の目前に立つ。
「え、なんで?」
晶が困惑の表情を浮かべていた。
それも無理のない事だっただろう、……何故なら。
彼女の目の前にいたのは、知り合いの子だった。
それも子供の頃からの。
自分よりも年下で、今年中等部に入ったばかりの女の子。
小さな頃から何度も一緒に遊んだ女の子。
家もすぐお隣りで、家にも泊まった事もある。
「ヒカリちゃん、大丈夫?」
そこにいたのは、星城凛。
幼馴染みの男の子である星城聖敬の妹であった。