第九幕 転校生の名前は神田あすかって言うんだって
新キャラ二人登場です!展開が苦しい?突っ込まないで…
さて…至って普通に登校したオレは、不安な面持ちのまま席におとなしく座ってる訳で。波瀾万丈高校ライフ、武蔵ムサシがお送りします。
ただ今、八時十分。ホームルーム開始まではあと二十分といった所。今だに隣の転校生の姿無し。
落ち着かない様子で自分の席に座るオレをクラスメイトは何やら不審な目で見ているが…気のせいだろうか? 特にむさい男共の視線が痛い。オレはそっち系の趣味は無いぞ。
それにしても……蘭のヤツはさっきからキョロキョロと何を警戒しているのだ?
何か悪いことでもしたか、うん?
「ムサシ、さっきから落ち着かないが、どした? まさかあの転校生待ちかオイ! 」
フーセンガムを膨らませながらオレの机の上に座るこの金髪不良男は、翔。
読み方はショウじゃなくてカケルだぞ、カケル。
オレとは中学からの付き合いだがヤツは見た目と違い機械オタクだ。自分で言ってた。
「オレはあの油の臭いと金属の重厚なボディ! それに囲まれてればご飯三杯は……以下省略」
みたいな事をオレに二、三時間語っていられる猛者だ。
「まぁ…一応そんなもんだ。昨日、オレは一日熟睡イン・ザ・ドリームだったからまだ転校生に会ってないんだ」
「その噂の転校生ちゃんはかなり会いたがってたけどよ。てか、お前が熟睡してただけで転校生ちゃんはな〜んも悪くないけどな」
「しかし翔…少しくらい起こしてくれても良いんじゃないか? 一日中ほったらかしはちとへこむ」
「それじゃあ、オレの発明品試してみないか?首輪なんだけどよ!脳が睡眠状態に入るとその首輪から数万ボルトの電流が…」
「いや、止めとくよ…」
過去に翔の発明品を試してみた経験があるが、一度川の向こうのご先祖様を見た時が多々あるのでもう二度と生死を彷徨いたくない。
「…来た!! 」
蘭の殺気が増した。というか教室内で殺気を出すな。
「おはよぅ〜。あっ、ムサシー! 会いたかったよ〜!!! 昨日は死んだように眠ってるんだもん」
殺気で満ち溢れた教室なぞものともせず、スライド式の扉を勢い良く開けた転校生はオレを見た途端、飛び付いてきた。
「ボク、はやくムサシに会いたくて早く家出たんだけど道に迷っちゃって…」
「イテテテテッ!! 痛いッ!てか引っつくなよッ! ん? なんか柔らかいモノが背中に…」
「ハァァァァ…喝ッッッ!!! 早く離れなさいよ、引っつき虫! 」
蘭の爆烈鉄拳によってオレは教室の床に爆音と共にのめり込んだ。セリフが無いのはそんな事叫んでる余裕が無かったって事。
「昔と同じだね、麻蔵蘭! 暴力で解決するなんて今時流行らないし、そんな拳ボクには当たらない」
「あなたこそッ!何調子乗って私の拳避けてるのよ! ムサシに直撃しちゃったじゃないの! 」
「ち、ちょっといいか? 全然話が読めん」
二人の間に翔はバチバチと散る火花を鉄板シールド(翔自作)で弾きながら割り込むと、二人の顔を見回した。
うん、オレ自身もさっぱり分からん。
「しょうがないわね、この私、麻蔵蘭が説明してあげるわ。私とムサシ、そしてこの神田あすかは小さい頃、ここら中を恐怖に陥れた元『黒い三連星』なのよ」
「…誰がマッシュで誰がオルテガだ? 」
「ハイ、そこ深く突っ込まない! …まぁ、あすかが転校してそれっきりだったんだけど」
「ボクが急に戻ってきたから蘭は焦ってるって訳♪ 」
「なるほど…要するに蘭ちゃんとあすかちゃんは旧知な訳で仲が悪いと…こりゃあ世紀の美女対決だな、オイ! 」
「おっ!? キミ、ボクの事知ってるの?」
「勿論。神田あすか、身長169センチ、体重ピーー(自主規制)キロ、顔立ち上の上、美しい黒髪をポニーテールにしてるのが特徴でバスト88センチ、高校生でありながらグラビアの撮影もしているアイドル! …だろ?」
お、恐ろしい…たった一夜でここまで調べあげるとは…一歩間違えればストーカーで捕まるぞ、翔よ。
「なるほど…要するにキミはボクのファンって事だね♪ けど、どんなに思われたってボクにはムサシがいるから…」
いるから…って、そろそろ誰か助けてくれよ、マジで起き上がれないんだからな!
「…で、アンタは何で戻ってきたのよ! アンタが来る時は厄介事持って来るに決まってるんだから」
「ん〜、ムサシを迎えにきた♪ 」
迎えって、地獄からの使者と化したか神田あすかよ…とりあえず今日はここまで! 次の話にはオレも回復しておきますので…