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第三十一幕 梅雨時々惨劇

朝から雨が降り続く梅雨の六月。やはり日光の光をさんさんと浴びなければ新しい朝が来たという実感が湧かず、少し眠い武蔵ムサシがお送りします。


「おはよー、今日も朝から雨だね」

真っ暗な空の下、まるっきり朝だと言う感じがしないまま、起きてきたオレでありましたか、それはオレだけじゃなかったらしくて…

「ふぁあぁぁ…おはよう、ムサシ」

「おはよー、零ねーちゃん。なんだかいつもより眠そうだね」

そりゃあそうよ、と寝癖が目立つ髪を手櫛で無理矢理直しながらテーブルに着く零ねーちゃんは不満そうに答えた。

「この暗さ、まるで今から夕食みたいよ」

「ホント、そうだよね。朝起きたらこれだものね…ところで、蘭は?」

オレは零ねーちゃんの目の前の椅子に腰掛けると、まだ、まだ起きてこない熟睡大魔王の顔を思い浮べた。

「蘭?そろそろ起きてくるとは思うけれど、ちょっと見てくるわ」

「零ねーちゃん、くれぐれも、くれぐれも!気を付けてね」

「…わかってるわ、マイブラザー」

と、零ねーちゃんはオレに向かってウインクすると、髪を掻き上げ二階にある蘭の部屋へと向かっていった。ん〜なにやら朝から事件の臭い…。

「ん、起きたのか、ムサシ」

「あっ、ナオキ…おはよう」

ああ、とコーヒーをオレに手渡すナオキ。この人は朝でも昼でもテンションが変わらないなぁ…。

「蘭はまだ寝てるのか?」

「うん。今ねーちゃんが起こしに行ったよ」

「ふむ…蘭の寝起きの悪さは天下一品だからな。なにやら心配な気が…」

そうだね、とコーヒーを格好よく口に含むオレだったが…。


ドガシャャャャャン!!


「蘭ー!私よ私!ち、ちょっと、みぎゃぁぁぁぁ!」

…と、朝から口に含んだコーヒーをテーブルにぶちまける事になってしまった。憐れなり、オレの一時の格好つけ。

「な、ナオキ!?今のは…?」

「ん、零の断末魔だ」

「あなたはどんな時でも冷静なのね…」

「…では静かになった所で零の最期でも見に行こうか。骨くらい拾ってやらんとな」

「あ、もう事切れたこと前提なのね」

オレとナオキは先程とは違い忽然と沈黙を保っている二階へと足を運ぶ。蘭と隣のオレの部屋は階段を登ったらすぐにあり、その向かいには零ねーちゃんやじいちゃんの部屋がある。二階はウチの家族のプライベートゾーンなわけ。

「扉は閉まってるね」

「ふむ、零が閉めたのだろうが、密室にしようとしたのが逆に仇となったな」

「蘭の逃げ場も無くしたけど自分の逃げ場も無くなっちゃったんだよね」

「そうだな…さて入ろうか」

と、ナオキは『熟睡中』と可愛い天使のキャラクターのプレートが立て掛けてある蘭の部屋のドアを二、三度ノックした。

…返事はない。中にいるハズの零ねーちゃんの声もまったく無い。

「蘭、勝手に入るからな」

と、ナオキがドアを開けると…オレ達を出迎えたのはピンク色の女の子らしい部屋とベッドの脇に持ち主を護るように座る大きなクマのぬいぐるみ。それを中心に取り囲む小さなキュートなぬいぐるみ達。そして、そんな可愛らしーモノ達に囲まれ、天使の寝顔を浮かべる我が家の低血圧大魔王。

「おや、やはりウチの大魔王はまだ夢の中だな」

「な、な、ナオキ!?アレッ、アレ見て!」

と、オレはクローゼットを指差した。そこには…頭からクローゼットに突っ込み、ピクリとも動かない零ねーちゃんの姿があった。覚悟していたけど、まさかこれほどとは…。

「まったく…クローゼットが台無しだな」

「着目点はクローゼットじゃなくて、そのクローゼットに突っ込んでる零ねーちゃんでしょ!?」

「…蘭がやったんだろうな」

ナオキはクローゼットに食べられたみたいな格好で動かない零ねーちゃんに近づいた。オレも近づいてみると、見事に頭から逝った後が痛々しいほど残っている。蘭のお気に入りのピンクの水玉模様のパジャマの裾に付いている水玉が、いつもよりやけに多かったり、赤く見えたりしたのはオレの見間違いじゃないらしい。

「というか、ここは密室だったんだから蘭以外の犯人はいないでしょ?」

「いやいや…案外、あのクマが零を吹っ飛ばしたのかもしれん」

「まさか…あれはぬいぐるみでしょ?」

と、オレは大きなクマのぬいぐるみを見る。これは蘭がまだ小学生の頃、誕生日プレゼントに朝蔵家…蘭の親に貰ったものだ。

「そんな事よりこれからどうするの?」

「どうするって…起こさないとな。眠いから学校休むとか言えんだろ」

「けど…零ねーちゃんの後は追いたくないんだけど」

「それはオレだって一緒だ…だが、起こすしかないだろ」

ナオキは用心しながらスースー、可愛らしい寝息を発てている蘭のベッドへと近づいてゆく。

「とりあえず…第一チェックポイントとして布団を剥がす」

「まずは声掛けるのが第一チェックポイントじゃない?」

「今更、声を掛けたところで起きるレベルじゃないだろ、コイツは」

と、ナオキは蘭の掛け布団をひっぺ返した。そこにはパジャマが良いようにはだけて胸元オープンの蘭が。なぜ、そうウチの女性陣はそう無駄にエロスなのか。

「うぅ〜ん…」

と胸元オープンの蘭には寒かったのか、少し唸り、身体を捻る蘭。そんなに動くと只でさえイエローゾーンの格好が青少年にはNGのレッドゾーンに達するから止めてくれ。

「よし、次だ。ムサシ、悪いが目覚まし時計を貸してくれないか?」

「えっ?別にいいけど、蘭の目覚まし時計使ったほうが早いんじゃない?」

するとナオキは黙って零ねーちゃんの横を指差す。そこにはバラバラに朽ち果てた…多分、目覚まし時計がその生涯を不本意に終えていた。なぜか、誰かの赤い体液が破損した目覚まし時計に付着しているかはオレと君の秘密さ。

「う、うんわかった、今持ってくるね」

と、オレは隣の自室に行くと、シルバーに輝く目覚まし時計を手に取り、待っていたナオキに手渡した。

「第二チェックポイントは言うまでもないが、目覚まし時計だ」

「分かってる、けど効くかなぁ?」

やってみないとわからんな、とナオキは蘭の耳元に目覚まし時計をセットする。

「第二の爆弾…スイッチ・オン!」


ピピピッ、ピピピッ、ピピピッ…


「うぅ〜ん…うるさい…うみゅ…」

「おっ、効いているな、なかなか」

オレの貸したシルバーの目覚まし時計は普通の電子音を蘭の耳元で響かせていたのだが、

「うみゅ〜!うるさい!」

と、寝ぼけた蘭にその輝くボディを捕まれ、

「塵へと消えろぅぅ!!」

と、クローゼット・イン零ねーちゃん目がけ…たか、どうかは分からないけど、松坂大輔もビックリな豪速急で投げ付け、オレのシルバーの目覚まし時計は零ねーちゃんに激突し、鈍い爆音を響かせながら空中分解した。

「……あっ」

「……うむ、次の手を考えるか」

「あの…零ねーちゃんに当たったんだけ」

「死人に口なしだ」

ハハハ、と乾いた笑い声を上げるナオキ。まさか零ねーちゃんに被害が被るなんて思っても見なかったみたい。

「けど、どうするの?もう朝食のスクランブルエッグが冷めちゃうよ」

「むにゃ…スクランブルエッグ?」

「おっ、反応したぞ。待てよ……もしかすると」

と、ナオキは何やらそそくさと階段を降りていってしまった。天使の寝顔の悪魔と、尊い犠牲者がいる部屋に残されたオレは、零ねーちゃんから視線を外す。死んじゃいないよね…

「ムサシ、少しどいてくれないか?」

「ナオキ…その両手に持ってるもので何する気?」

オレは、ナオキが両手に持っている朝食の皿を指差した。蘭の顔面にでもぶちまける気なのだろうか?

「蘭、蘭…朝食だぞ?今日はお前が好きな甘いスクランブルエッグだぞ?今、起きないとムサシに食べられるぞ」

「むにゃ!?…スクランブルエッグ」

ピクッ、と反応を見せる我らが大魔王。

「リビングで待っているからな。早く起きてこいよ、でないと…」

ピクピクッ、と再び反応する蘭。それを確認するとナオキは、戻るぞ!と俺と一緒に階段を降りる。

「さて…お寝坊大魔王は起きてくるかな?」

リビングへ戻りながらナオキが呟く。確かに蘭には反応があったからもしかして…。

「…おはよ、ナオキ」

と、階段を怪しげな足取りでやっと降りてきたのは、朝蔵 蘭、その人。

「おはよう、蘭。少し寝すぎだぞ」

「ん〜、だって暗いんだもん…」

「沢山の犠牲者も出た」

「ん〜、だってうるさいんだもん…」

と、まだ眠いのか、目を両手で猫の様にこすっている蘭はあたかも自分には罪の無いような言いぶりを見せる。

「蘭、少しは朝に強くなれよ。おかげでこっちは朝からドキドキハラハラの連続だったんだよ」

「ムサシ…私の分のスクランブルエッグ食べないでね」

「…誰が食べるか」

と、蘭はまだ疑っているのか早々にテーブルの自分の位置に座るとスクランブルエッグをスプーンでカチャカチャし始めた。

「あれ、ナオキ〜。零おねーさまはまだ寝てるの?」

俺とナオキの手が止まる。

「ら、蘭…憶えが無いなら、自分の部屋のクローゼットを見てこい。今すぐだ」

「へっ?いいけど…」

と、スプーンを置いて席を立ち、階段を登っていく蘭…。そして…

「キャャャャャャ!!!れ、零おねーさま!殺人事件よ〜!火曜サスペンスよ!ナオキ、救急車を早くー!」

「…やはり全く憶えていないか」

「大体予想はついたけどさ」

と、俺とナオキはお互いため息を吐いた。



その後、なんとか一命を取り留めた零ねーちゃんは、病院で今日の事を次のように話していました。

「あれは蘭じゃなかったわ…あれは、蘭の形をした悪魔だった…私を殺そうとしたあのつ、冷たい目は悪魔そのものだった」

と…。今日の出来事から蘭を無理矢理起こし禁止令は家族の中の暗黙の了解になりましたとさ。めでたしめでたし!

第一部はこんな中途半端で終わります。日常ってはこういうものではないのでしょうか? 区切りなんて無い、と。

















半分嘘です(泣)止む無く第一部にしました。


少したったら真面目に(ちゃーんとプロットを細かく書いて)連載しようと思います、ハイ(T▽T)


動物園SOSは……あの、その…ちゃんと直してから次回、載せます。ごめんなさいです。

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