第二十四幕 零の酒事情
あ〜、最近では男性より女性の方が権力を保持している事は明らかだ。特にこの零を見ていると、日本が再び、邪馬台国の様になるのもそう遠くないのかもしれない。
まぁ、この俺、ナオキはとっくの昔に慣れたけどな…
なぜ、俺が急にそんな事を思ったのには理由がある。
「こら〜! 起きなさいよ、この酔っぱらいオヤジ! 」
「フガーーーーー!むにゃ…」
「意味不明ないびきかいてるんじゃないわよ! 」
空になった日本酒の瓶を抱きながら可愛いんだかうるさいんだか分からないいびきを起てる神田 鉄に零は容赦なくその脇腹のローキックを放つ。
「なんで私に飲ませたあなたが私より寝てるなんておかしいでしょうが!男だったら、女酔わせて夜這いでしょうが! 」
「何、お前も酔った拍子に危なっかしい事口走ってんだ」
俺はローキックからニードロップに移行している零の首根っこをひょい、と掴み、持ち上げる。
「ひゃい!? な、何持ち上げてるのよ! 」
「…少し重くなったか? 」
「あなたに大根食わされてる時点で体重増えるわけ無いでしょ! さっさと降ろしなさいよ! 」
「昔はよくこうやって喧嘩止めてたよな」
「そうだったわよ…って、何、哀愁に浸っているのよ! 早く降ろさないとホントに許さないんだから! 」
酔っているのか、はたまた恥ずかしいのか。むー、と頬を赤くし、じたばたじたばたと猫のように暴れる零の首根っこから手を放す。
まぁ、人間は重力には逆らえない。
思い切り体重分、畳にヒップを叩きつけ、喘ぐ零を俺は軽くスルーし、鉄殿、と鉄の傍らへ足を運ぶ。
「鉄殿、そろそろ起きてくれないと物語が始まらないので起きてもらえますかね?」
「ぐがッ!? 」
「いびきで返事をしないで下さい」
「…むにゃう」
「可愛い子ぶらないでください。あなた、ボスでしょうが! 」
「…スピー」
「…零。俺、怒っていいのかな? …かな? 」
「ちょっと、どこから持ってきたか知らないけど見憶えある鉈、持つのは止めてくれない? 嫌な思い出なんだから」
正直、寝起きの悪い奴には慣れてはいるが、慣れは慣れであって嫌悪感は消えない。
「やっぱり私が起こすわよ、ナオキはその鉈どっかにしまってきなさいよ」
「…分かった。任せる」さあさあ、と促されるまま、部屋を追い出された俺は鉈を持ちながら台所へと向かった。
…数分後。
ドガシャャャャャャン!!!!
大部屋の方で、叩きつけられ何かが割れる音が神田家に響き渡った。
「な、何事だ!? 」
「親ビンのいる部屋からだぞ! 」
「何だ? どこの組の仕業だ!? 」
…すいません、犯人はウチの零で間違いありません。