第二十幕 ゲーマー蘭と…黒光り
二十話までいかせていただきました。これも親愛なる読者様のおかげです。これからもよろしくお願いいたします。
え〜と…私のシャイニングフィンガーでムサシの顔面を砕いた私こと、麻蔵蘭ですが、周りには敵がうじゃうじゃいる訳で…
「ちょっと、そこの格好のいいお兄さん達♪ 」
私は単身、後ろの四人を潰す…じゃなくて、邪魔にならないように拳と拳で語り合うため、物陰抜け道を駆使し、四人組の背後に回った。背後に回るのに体力使っちゃったわよ。
「あ゛ッ? 何か用か、ねーちゃん? 」
四人組の一人…ここではハゲとでも言っておくと、そのハゲが威圧感を漂わせながら私に近寄ってきた。
「いや〜別に対した用って訳じゃないんだけどね…」
私は満面の作り笑いを浮かべながら、手をぶんぶん振り、否定しとく。ホントは用ありまくりなんだけどね…
「あ゛ッ? ナメてんのか、ねーちゃん。極道ナメんじゃねーぞ! ゴラ! 」
「ナメてんに決まってんじゃないの、タコの八ちゃん! 」
「この〜アマ…痛い目に遭いたいらしいな!」
「何よ、私とやり合う気?? 」
あぁ、いいわ〜、このコメディ的な急展開。マンガチックな場面…悦の極みよ♪
「おい、ねーちゃん…相当痛い目に遭いたいらしいな…俺は女でも手加減できねーぞ」
「そのコトバ…そのまま返すわ。私も男相手に手加減できないかも」
ブワッ!と四人の殺気が私を通り抜ける。さすがはケンカのプロ。
殺気の出し方がチンピラとは違う違う。
「覚悟はいいか? ねーちゃんよ? 」
「いつでもゴング鳴らしていいわよ♪ 」
タコのスキンヘッドにあからさまにムカつきマークが浮かび上がる。
その瞬間、
私の可愛い顔面目がけて大きな拳が空を切り裂きながら向かってくる。
そう、向かってくるだけ。
ハエが止まっちゃうわよ、全く…
「麻蔵家、初伝…葛切り…」
私はハエの止まっちゃいそうなその拳をひょい、と避け、タコの懐に入る。
これが初伝、葛切り。
「懐、がら空きよ、タコさん♪ 」
タコの結構鍛えられてそうな身体目がけ、拳を放つ。痛かったのか、呻きながら頭を垂れるタコに私は待ってましたと、ぐっ、と足に力を入れる。
「ゲーマー歴十五年、麻蔵蘭が見せるはストリートファイター、ケンの十八番! 」
前足を一歩出し、身体を上へと捻りながら拳を突き立て真上へ舞う…これぞ!
「昇龍拳ッッッ!! 」
ケン直伝、昇龍拳はタコの顎にのめり込み、タコの脳天を揺らす。
まずは一人。
「一人…次は? 」
ドサッ、と地面へ倒れこむタコに恐がったのか、怯むあと三人の黒服。こんなかわいい私に怯むとこなんてないわよ。
「来ないなら、こっちから行くわよー!」
怯む三人の内、一人にターゲットを絞り、私は片足で飛脚、宙を舞う。
ここまで言えば分かるわよね、アレよ、アレ。
「竜巻旋風脚ゥゥゥ!! 」
「なぐはッ! 」
顔面に私の定価三千九百八十円のスニーカーがのめり込んだ、黒服。
あとの二人は…さすがにもう逃げ腰ね。情けない…
「どうする? 降参? 」
「…頭来た」
「へっ? 何言ってるの? 」
「お前…許さない」
今までびびってたはずの黒服片割れの空気が急に変わる。うぅ〜、嫌な予感…
「二人の仇、俺が、打つ…」
「その喋り方…いやな予感しまくりだわ」
私が少し後ずさると、その片言男は懐から、何やら黒光りする金属性の重量感漂うアレを取り出した。
あう〜、嫌な予感的中…
「プロを、怒らせる、それ、命知らず」
片言男は明らかに殺意の視線を銃口と共に私に向け、その引き金を引いた。