第十七幕 序章の鐘は鳴り響く
あっ、どうも。かなり久しぶりで…いやはや全く、本気でオレはこのまま出れないと思った訳で…そして零ねーちゃんとナオキの話をしていた頃、学校では犯罪が起こったりした訳で…
こんにちは、久しぶりの登場、武蔵ムサシです。
「で、ムサシ…結局どっちにするんだ? 」
「何がだよ…」
この質問もさすがに聞き飽きた。まったく、翔の頭の中は女と機械の事で九割占めてんじゃないかと本気で思ったりした。
あすかが転校してきてから早、一ヵ月。あすかもようやく学校に慣れてきた感じだな。元々モデルとかグラビアもしてるみたいだし認知度は高かったらしい。
「いや、あすかちゃんは有名人だぞ。写真集だってバカ売れしてるしよ」
…詳細ありがとう、翔。頼むからこれ以上、オレのハートをウォッチングするのは止めてくれ。下手な事考えられんではないか。
で、ウチの蘭とは言うと…
「…おもしろくないわ」
「ら、蘭…どうしたのよ、そんな般若みたいな顔して…」
「おもしろくないのよ…まず、あすかが転校してきたこと。これが始まりだったわ」
「けど私はあすかちゃんはいい子だと思うけど…」
「あすかは悪い子じゃない事は私が一番よく知ってる。けど、本能が訴えかけるのよ、あすかに近づくな…みたいな事を」
「近づくな…ねぇ」
蘭の親友、渚ちゃんと向かい合いながら話す蘭の表情は暗い。あすかが転校してきてから蘭は疎い表情ばかり浮かべているな。
しかし…渚ちゃんも第五幕ぶりの登場だったな。これから目立ってゆくタイプか?翔よ、立場が危ないぞ…
「そういえばさ、蘭とあすかちゃんとムサシ君って昔は仲良かったんだよね? 」
「昔はね…いつからだろう、あすかが敵に見えてきたのは。昔から私よりも可愛いし、皆から愛されてた。何をしたって勝てなかった…いつでも私よりも一歩先を行ってたのよ。今じゃ負けてないのは胸の大きさくらいよ」
「女の私から見れば二人ともありすぎよ。羨ましい限りだわ」
「いや、これもなかなか不便でね…肩凝るし、正直…邪魔」
「蘭、それは贅沢な悩みよ」
……まぁ、今のところは蘭も大丈夫か。実際、あすかは蘭の事を毛嫌いしてる訳じゃないらしいし。意識しすぎなんだよ、蘭のヤツは。
「…ムサシ、やっぱりお前ってはあんな美女ふたりから愛されてるんだな」
翔が問い掛けてくる。オレはまさか、と首を横に振った。
「愛されてる訳じゃないさ…ただ、お互いいつも一緒にいたんだ。それが普通だった。欠かせなかったんだよ、昔は。あすかのあの発言は本心か分かんないけどよ」
「やだねー、鈍い男って…」
「ん、何か言ったか、翔? 」
「いやいや、別に…ムサシ、ある意味お前は幸せもんだよ」
「幸せねぇ…幸せっては何だよ?」
「ん、幸せか? 機械に囲まれて…」
「もういい、お前に聞いたオレが馬鹿だったわ」
なんて、たまに真面目な事を考えていた最中、マンガチックな恐っろしい〜事が起こる訳で…また次話であいましょう。
…うん、最後まで真面目だわ、オレ。