第十五幕 波紋疾走…危ないネタだな… byナオキ
今回は俺が話そう。あ〜、何? 今の状況を知りたいと…いや、別に困ることでもないのだが…誤解されてしまうのではないかと少々心配だ。けど知りたい? …しょうがないな。簡単に言い表わせば…
真っ黒服着た少し人相良くない男どもに囲まれてる。…状況が分かったか、そりゃよかった。
と、いう訳で神田家に着くや否や、殺気漂うスーツ姿の男どもに囲まれてる俺と零であったが、
「いや〜大層なお出迎えねぇ…参っちゃうわ、まったく」
と、この女はまったく危機的状況を飲み込んでいないらしい。どっから出てくるのだ、その余裕は。
「で…そこの道、空けてほしいんだけど? 」
「お断わりいたします。どこの誰とも知らない馬の骨を神田家に入れる事などできません。どうぞお引き取りください」
言葉遣いは丁寧だが、実際の口調は殺気に満ち溢れている。とはいってもこの女にはそんな生半端な殺気じゃ効かんぞ、ヤクザのお兄ーさん。
「んなこと言われても私たち、今日あなた達の組長に招待受けてるんだけど…聞いてないの?」
「そんなデタラメ一切聞いておりません、早々にお帰りください」
「…ナオキ、どうする?あの馬鹿親ビン、私たちが来る事忘れてんじゃないの? 」
「そうだな…すまないがお前のボスに聞いてきてくれないか?タケクラの客人が来たと」
「くどいッ!これ以上ここにいるって言うならぶっ殺す!」
急にキレはじめたぞ…カルシウム不足か? 牛乳を飲め、牛乳を。
「あら〜ぶっ殺すなんて汚い言葉使っちゃって…おねーさんショックだわ〜。坊やは牛乳飲んで早く寝なさい、私たちは坊やたちのボス、神田鉄に用があるのよ、邪魔しないで」
「…おい、おまえら…手加減しなくていい。バラバラにしちまえッ! 」
幹部Aの掛け声で十数人のヤクザのお兄さんが俺と零を囲み始めた。まったく血の気の多い奴らで困る。
「ナオキ〜、なんだか楽しい事になってるんだけど…やっちゃっていいと思う? 」
「…少しお教えてやれ、誰を相手にしてるかな」
そういうと零はニッ、と笑い指の骨を鳴らし始めた。零のストレス解消間違いなしだな。可哀想なヤクザのお兄さん。
「かかってきなさい、こてんぱんにしてあげるわ!」
「やっちまえッー!! 」
零目がけ木刀を振り回している男を零はひらりと避け、脇腹にストレート。ああ〜痛そうだな。そのまま零は左右の男の顔面に肘、拳を浴びせ、立ちふさがった男の腕を取り、曲がってはいけない方向へ回転させる。これが、関節技というヤツだな。
「こ、この女ァァァ!!」
「あらあら…隙がありすぎよ、お兄さん♪ 」
降り掛かった拳を右へ受け流し、がら空きの顔面にグーパンチ。ああ、見てられん。まるで子供の喧嘩に乱入してきたプロの格闘家みたいな感じだ。
「この女、強い…石垣さん、頼みます! 」
「オゥ、俺に任せろ」
なんだか強そうなスキンヘッドのお兄さんが出てきたぞ。手には金属バット。大丈夫か、零。
「ナオキ、アレで決めるわよ〜!!」
…危機感を少しは持ちなさい!相手に失礼だろうが、それじゃあ! …まぁ、とりあえず、例のアレか?
「死ねー!くそ女ッ!」
「隙がありすぎ♪ ひらりッてね! 」
相手の振りかぶった金属バットを綺麗に避けると零は石垣さんの懐に入り込む。そして俺は零の後ろでスタンバイ。
「オラオラオラオラッッ!! あなたを裁くのは私の『スタンド』よッ!! 」
ゴゴゴゴゴゴッ…
「オラオラオラオラオラオラッ…ふぅ。オラオラオラオラオラオラ…」
スタープラチナ、もとい、俺はノリノリの零の指示の下、石垣さんに一秒、五発の拳を打ち出してゆく。すまない、石垣さん。
「…で、まだ歯向かう気? 」
「ごめんなさい、もうしません」
仁王立ちした悪女の前にひれ伏す黒服のお兄さんをあの悪女はフッ、と笑い飛ばす。ん…やはりサゾっ気だな、こいつは。
「で、鉄とは確認したの、下っぱA? 」
「いたしましたっ!姐さんっ!どうぞ、こちらにどうぞ」
いつまにか姐さんに格上げされた零…鼻高々だな、この女。
「あら、ナオキ!早く来なさいよっ! 」
「ああ…」
十数人の黒服に囲まれた零の後を俺はゆっくりと付いていった。