第14幕 時を止まれッ!ザ・…
突然だけど、私はスポーツカーが好き。というよりはぶっちゃけ、爆走出来るものだったらブレーキの無い新幹線でもフル改造の三輪車でも何でもいいのよ。えっ?交通ルール? あ〜、適度に守ってるから…
自称、スピード狂、武蔵零がお送りするわよ。
メーターは百キロを軽く越して右へ振り切れんばかりまで移動している。まわりの車は何事かと私の愛車を唖然と眺めている。
「お、おい、零…一般道路で百キロオーバーはまずくないか? 」
「いいのよ、私が本気出せば警察なんか簡単に振り切れるわ」
「振り切ればいいって問題じゃないぞ」
あなただってよくナナハンで爆走してるじゃない。人の事は言えないわよ。
神田家まではあと二十分かからないと思うわ。まったく、今からあのヤクザの親ビンと会うとなると憂欝で憂欝で…
「零…さっきから後ろで聞き憶えのあるサイレンが鳴り響いてるんだか」
「気のせいよ。耳が遠くなったんじゃないの? 見た目より年食ってんだから」
サイドミラーを覗き込むとパトカーのホワイトボディが群れを為してたわ。
『そこの暴走スポーツカー止まりなさい!! 一体、何キロ出してっと思ってるの! 』
「現在、107キロ…またまだ余裕のよっちゃんよ」
「いや…そういう事を聞いてるんじゃないぞ、警察さんは」
ナオキの忠告を軽く無視して私はアクセルをグクッ、と押し込む。エンジンの鼓動が車に響き渡る。いい音色だわ。まるで母の心音を胎内で聞いているような、そんな音色。
「ナオキ、シートベルト締めた?頭打っても知らないからね」
「お、おい!? 一体何する気だよ?」
「音速の壁を超える…」
「…音速って秒速何メーターだか知ってるか?」
「30メートルくらいじゃなかったけ?」
「その十倍近くあるぞ音速ってヤツは…」
私はまたナオキの発言を無視し、踏めるだけアクセルを押し込んだ。グッ、と重力が身体に掛かる。
「凄いわよッ、ナオキ! メーター振り切っちゃってる!! 250キロよ! 信じられる? 」
「出来ることなら信じたくない…」
「それなら夢だと思ってて」
後ろの警察さんはすでに姿を消した。まわりの車が止まってるように見えた。そう、これはまるで…
「ザ・ワールドよッ! DIOになった気分だわ!」
「危険なネタは止めろ。あとで何言われるか分からん」
「誰も私を止められないわよ!最高に『ハイ! 』ってヤツよ! 」
「分かった、分かったから畳み掛けるな」
こうして私は神田家に向かって爆走するのでした…あぁ、快感♪