第十二幕 ナオキの一日、そして…
炊事に洗濯、掃除に買い物…世の中の家事担当の人々はまったく大変だな。賢明なる読者諸君も、いつもこの生活が当たり前に思わずに、家事を担っている母、父、そして家政婦(夫)に感謝するのだぞ。
何故、急にそんな事言っているか、って?それは俺が家事の大変さを骨身に感じているからさ。もう誰だかわかったろ? そう、今回は俺、ナオキがお伝えしよう
ムサシ達の新学期が始まって早々と二週間が過ぎた。零の心配をかき消すように平和な日々に、俺も少し春の陽気に浸る余裕が出来たって訳だ。
かとは言っても毎日の掃除洗濯が減るわけでもなく、俺はホトトギスの歌声を聞きながら庭の一角に立ててある物干し竿に洗濯を干していた。
当然、ムサシ達は学校。零も今日は会議があるらしく朝早くに家を出た。ん、零の仕事?あぁ、話していなかったか…零のは意外も証券取引系の仕事に就いている。まぁ、アイツは昔からふざけてる割には成績優秀みんなの目標だった訳だから、大学卒ですぐに仕事見つけてそこそこ儲けてるわけだ。
しかし俺としてはそろそろ一ヶ所に落ち着いてもらいたいところだ。アイツももう**歳だからな、早くしないと負け組になるぞ、オイ。
かといっても、零も女だ。過去の事を引き摺っているのかも知れん。それが心配だ。もしも、ヤツが戻って来たなら…零も素直になれるのかもな。
洗濯を干し終わると、既に十二時に近づいてきた。あまり俺は腹が減ると言う感覚は感じないのだが、習慣というヤツだ、何か食べないと何故かスッキリしない感じがする。とりあえず、パスタでも作って済ましてしまおう。
『た〜らこ、た〜らこ、た〜っぷり、た〜らこ♪ パスタ』をたらふく食べた俺は次の家事をこなすべく玄関に向かっていた。玄関に向かってする家事といえばただ一つ。
分かる人は知っている。知らない人はお父さんかお母さんに聞いてみてくれ。
「武蔵さ〜ん! 郵便ですよ〜」
「いつもお世話様です、郵便局の黒ヤギさん」
郵便局の黒ヤギさんから俺は手紙を受け取ると、にこやかな笑みで微笑んだ。一応言っておくが、黒ヤギさんはヤギじゃないぞ。身長177センチ、体重70キロ、フツーの好青年だ。
俺は帰ってゆく黒ヤギさんをに手を振りながら見送ると、早速配達された手紙を眺めた。
「手紙なぁ…ん、神田家の本家からか」
神田あすかがムサシの学校に転校してきたのに関係がありそうだな。まさか無許可で転校してきたか、ありえない話ではないな、あの娘なら。
「とりあえず…ややっこしい事にはなりそうだ」
俺は手紙を黒ズボンのポケットにしまい込むと、そそくさと掃除を始めた。