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第5話 未来都市Ⅰ

  

 魔法と魔術の違い。


 魔法は魔術の上位互換だと思ってください。

 

 未来とアドレスを交換しチャイムが鳴りSHR――ショート・ホーム・ルーム――の後、宙は担任に呼ばれた。話の内容は宙の思っていた通りの話だった。宙は軽く聞き流す。その中に気になる事がらが有った。“そういう事はほどほどにしろ。”とは何の事かと考えを巡らせたが、すぐにやめた。

 学校で宙が最も気にしていたのは勉強の事だった。しかし、其れは宙の杞憂に終わった。端的に言うなら宙は勉強が出来るように成っていた。もちろん、心当たりは1つしかない。数学、現代文と1年の時より確実に難易度の上がっている授業のはずが、たいていの事は教科書を見ただけで理解出来た。さらに三時間目の英Ⅱで宙は自分がただ頭が良くなっただけでないと気付く。

「はい、よくできました。次、これはかなり難しいな。次の日本文を10文字程度の英文に直しなさい。『電話で何か注文したら?』これを~お! 今日は初めて青野がいるな、せっかくだから青野にやって貰おう」

(なにが、せっかくなんだよ)

 宙は席を立ち抑揚のないはっきりとした声で答えた。

「Why don’t you order something by phone?」

 発音や言葉の強弱まで完璧だった。

「お、おお良くできたな。完璧だ、座っていいぞ」

 これはもちろん能力、言語理解の影響である。今や宙はありとあらゆる。国や異世界の言葉を、読み、書き、聞き取ることが出来る。

 その後、宙は授業が余りにも暇だったのでロシア人のAETとロシア語で猥談をしていた。主に女性のアンダーヘアーについてである。

 流暢なロシア語で猥談をしている二人を、教師を含めた一人を除くクラス全員が変な物を見る目で見ていた。ちなみに、その1人、未来は寝ていた。

 さらに事は、四時間目の現代社会の時間に起きた。宙は授業を聞きながらノートを取っていると……。

 Pipipipipipi

 最高神から貰った携帯電話の着信音が、授業中の教室に響く。

「まったく、こんな時に呼ばなくても……マリア」

<はい。宙様、何でしょうか?>

 宙はコンシェルジュ、マリアを呼んだ。閉じられたままの携帯電話からですら彼女は対応してくれる。

「最高神に伝えてくれ。もう少しTPOを弁えろと」

<はい、了解しました。しかし効果は薄いと思いますよ?>

「そんなの分かってる、気持ちの問題だよ。それじゃあ繋いでくれ」

<畏まりました>

「おい、青野。いい度胸だな、今は授業の最中だぞ」

「ごめんまた後で」

 宙は携帯電話をスボンのポケットに作っておいた亜空間に放り込む。

 担当の教師が額に青筋を浮かべ怒っている。生徒指導担当の教師で厳しいことで有名だった。生徒を恐怖で支配する、典型的な考え方の古い教師だ。

(よりによって、こいつの授業の時に呼ばなくても……それにしてもこいつ、ウザいな……消えて貰うか?)

「おい、青野!何、ぼやっとしている」

 普通の生徒ならこの剣幕だけで、震え上がりどうする事も出来ないだろう。しかし、宙には通用しない。

「まあ、先生。そんなに怒らずに。これで落ち着いてくださいよ」

 宙はそう言い制服上着の内ポケットに亜空間を形成。薄い茶封筒を取り出した。

「少ないですが。お受け取りください」

「なんだ、これは……」

 茶封筒の封を開け中身を見て固まる教師だった。

「三億あれば、かなり贅沢な生活が80年くらいは出来ます。先生が持ってる、その茶封筒の中の紙切れの“数字”が手に入れば先生は266年と半年くらいは生活出来ますよね?」

「……」

「それと実は用事が出来てしまって、早退したいんですが?」

「あ、ああ分かった」

「はい、それでは、さようなら。先生」

 宙は鞄を掴み教室を出た。その後の教師は、退職願いを出し学校を去って行った。

 

***


『おっそーい!』

「ごめん、ごめん」

 あの後、教室を出て靴の有る下駄箱に向かった。学校の閉じている校門をアグレッシブに飛び越えた後、最高神に宙から電話を掛けた。

「この辺に人は居ないな? ……よし、転移してくれ」

 宙は人気の無いビルの裏に回り込み最高神に頼んだ。

『別に転移する時に回りに人が居ても平気だよ?』

「なんでだ? 見られたら大変だろ。てゆうか、もう見られたし」

『平気、平気。僕がいつも使って宙を転移させている魔法陣はね。転移した人が<初めからここには居なかった>っていう概念を深層意識にまで刷り込ませるように成ってる分け、だから安心して』

「なるほど、それなら安心だ。それじゃあ頼む」

 宙は転移した。

 

***

 

界の狭間


「それで、今回は何をすればいいんだ?」

 前回、ここに来た時に出来ていた。この目が痛くなるほど煌びやかな空間で宙は椅子に座り紅茶を飲んでいた。

「今回もムシャムシャまた異世界でモグモグ歴史の改変をズズッ――」

「食べるか喋るかどっちかにしろ!!」

 最高神は向かい側の椅子に座り、右手の紅茶、左手にクッキーを持ちさっきからずっと食べては飲んで、飲んでは食べて、を繰り返していた。ちなみにこのクッキーと紅茶。最高神が≪万物独創≫なる創造系の最上位の能力を発動させて創ったものだった。この能力は最上位世界の最高神しか習得することが出来ないらしく。現存する≪万物独創≫を習得した存在は全世界で今のところ、この最高神ただ一柱らしい。

 クッキーの破片をボロボロとテーブルの上に溢しながら全世界で唯一、万物独創を習得した存在はこう言った。

「じゃあ食べる!」

 最高神はテーブルの向こうの宙が見えなくなるくらいの大量のクッキーを作り出し飽きるまで食べていた。宙は呆れて怒る気にもなれずしばらく黙って見ていた。余りにも美味しそうに食べるため、1つくれないか? と宙が最高神に頼むと笑いながら快諾しクッキーを創り出してくれた。――クッキーの山がもう一つ増えた。

 

***


「それじゃあ本題に移るよ。今回の仕事はとある一人の男の殺害」

「お前が介入しようとするんだから、相当な事を仕出かすのか?」

「そうだね。名前はアウエル・シュテット。こいつがしたことを宙に分かり易く伝えるなら……ヒットラーを宇宙規模で行った」

「宇宙規模……ヒトラーのしたことを?」

「そう、こいつの行った戦争、迫害、虐殺。宇宙規模で行ったそれらで殺された人間は万じゃすまない」

「そうか……宇宙規模ってことはかなり科学の発達した世界なのか?」

「うん。リニアカー浮遊して走る車や宇宙船なんかも有るよ、でも確かワープ航行技術はまだ完成してないね」

「ふうーん、ロボットとかも有る?」

「あるね、アンドロイド、ガイノイド、バイオロイド。細かい種類まで入れたら星の数だね」

「だいたい分かった。で報酬は?」

「5000億」

「それはすごい、頑張らないと」

「よし! じゃあ能力の習得に移ろう!宙の現在のポイントは14万2000ポイントあるよ」

 そう言い、最高神の手の上に白銀の本が現れた。

「なあ。その世界の技術を俺が手に入れても問題無いだろ?」

「まったくないよ。むしろ片っ端から吸収して、宙自身の力にしちゃって」

「じゃあ完全記憶が出来る能力あるか?」

「あるよ。その名も≪完全記憶≫」

「そのままかよ!」

「まあ、そう言わないで、かなり強力で能力のON、OFFも出来る。さらに記憶した情報をもとに≪創造主≫で記憶した物を創りだす事も可能だね。5000ポイントだけど、どうする?」

「よし。頼む」

 宙の身体を白い光が包んだ。もう宙の慣れたらしく目を閉じ身じろぎすらしなかった。

「なあ、俺には魔法の才能が有るのか?」

 宙は初めての能力習得の時、最高神がそんなことを言っていた事を思い出した。

「有るよ、宙には魔術、魔法の才能がこの本にも全部じゃないけど、明りをつける魔術から、時空を操る魔法まで揃ってるよ」

「その本に有る魔法や魔術を全部覚えるとしたら今のポイント全部でどの位習得する事が出来る?」

「う~んそうだね~宙の今のポイントだとこの本の20%くらい?」

「そうか……今回の仕事にあれば便利な奴を優先して習得することは可能か?」

「もちろん、じゃあ習得?」

「よろしく」

 宙の同意に呼応するかのように本が発光し、本の表紙に書かれたポイントが0になった。

 慣れた能力の習得に宙はリラックスして居ると、今回は少し違う感覚があった。宙は体内で何か巨大なうねりの様なものを感じた。

「なあ俺の中にうねり?の様な物を感じるんだけど」

「それは魔力だね?どう大きい?」

 宙は意識を集中してより感じ取ろうとした。宙が感じたのは無限に等しい星々の輝き。

「これは……」

「ん? どうしたの?」

「うねりっていうか……」

「焦らさないでよ。小さくても笑わないから。魔力は無くても宙の魔法技術関係は超一流なんだよ。それに魔力は鍛えれば幾らでも……」

 それらが中心に向かって銀色の渦を描いていた。まさに……

「……銀河だ」

 宙の呟きに最高神が固まった。

 

***


「銀河って……うちの四大天使に匹敵するよ……宙はまだ、御前天使とは言っても見習いなのに……」

「そんなにすごいのか?」

「すごいなんてもんじゃないよ。一般の魔術師とは対比することすら馬鹿らしいほどの量だね。本の20%の魔法、魔術にこの莫大な魔力。今の宙なら向こうの宇宙船なんて一ひねり……はぁ~実は今回の仕事、少し心配していたんだ。まだ速いかな? って、後2、3回くらいは前回みたいに魔物退治でもよかったけど。前回の魔物との戦いがあまりにも見事だったから……どうする? 今なら止められる。いつかはこの仕事をしてもらうけど、今は止められる。まだ経験が積める」

「……くどいな。こっちの準備はもうできてる、速く送ってくれ。5000億と未来の技術が俺を待っているんだから」

「よし! 分かった。それでこそ宙だ! じゃあ早速送るね」

 宙は来るであろう、目がくらむほどの光に備え目を瞑った。

「世界名セイチェント、リカル星、スクル帝国、帝都」


 光が部屋に満ち、宙は転移した――



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