第0話 宣伝と営業
この物語りは、フィクションです。実在の人物・団体・事件とは、いっさい関係ありません。
サイドA
そこは21世紀が到来して、10年ほど経過した、日本では一般的な家のリビングだった。
毎週放送の連続ドラマが、最後に気になる展開で終わりEDが流れテロップが流れ始めた。
リモコンを手に取りチャンネルを適当に変えていく。何も見る物が無いので、先程のドラマの次回予告を見るために、チャンネルを元に戻す。
するとちょうど次回予告だった。
次回予告も終わり、いよいよ見る物が無くなった。
リモコンで適当にチャンネルを変えていくと、有ることに気が付いた。
“全てのチャンネル”が“同じCM”を放送していた。
それは、《その気になれば世界征服が出来るのではないか?》と噂される世界一の大企業の宣伝CMだった。
『皆さん、こんにちは』
その人物はとても美しくかった。肩口で切りそろえられた髪は一点の曇りの無い銀色で、癖が全く無いストレート。
肌は透き通る様に白く。瞳は綺麗な碧眼だった。
顎のラインはシャープで、とても小顔。
それでいて若干の幼さを備えた顔立ちは16歳ほどに見えた。
『私達は、エンジェル・カンパニー・グループです』
彼女の声は抑揚が無くハッキリとしていた。
『エンジェル・カンパニー・グループは本日で創設65周年、これからも、その年の最先端技術が、時代遅れ感じるほど機能的な最先端技術の提供をモットーに邁進して行く所存です』
『私達、エンジェル・カンパニー・グループは工業、医療、様々な科学技術を誰にでも低価格で提供し、皆様の生活をより便利で豊かな物にして行きたいと考えています』
『これからもエンジェル・カンパニー・グループをよろしくお願い申しあげます』
サイドB
そこは窓すらない、とある一室だった。しかし窓か無いからと言って薄暗い印象は全く受けない。
それどころか室内はとても明るく、広く、そして荘厳な雰囲気すら有った。
置かれたインテリアは、どれも洗練されたデザインで機能と美しさを両立し、壁に掛けられた絵画はどれも一流の物ばかり。
そんな一室には二人の人物がいた。
一人は40代後半程度の男、もう一人は16歳程度の少年だった。
少年は、シンプルな上下黒のスーツを着ていた。
ワイシャツのみが白く、ネクタイ、革靴、腕時計に至るまで身につける物が黒一色だ。二人はそれぞれ椅子に向かいあう様にして座っていた。
男は、軍服の様な服を着ていて、胸に着いた数々の勲章から相当に地位の高い人物だと分かる。
男は、額に汗を浮かべ、少年に縋り付く勢いで何かを懇願していた。
相当焦っていて、男の顔はすでに死人の様な顔色だった。
その時――部屋全体を揺らす様な爆発音が引く響いた。
男は小さく悲鳴を漏らし、頭を抱える。
一方の少年は、そんな揺れと爆発音などどこ吹く風と、言わんばかりに表情一つ変えない。
音が収まった後も淡々と男に受け答えをしていた。
少年は、自ら持参したノートパソコンをテーブルの上に置く。男は、何だ、その箱はと言わんばかりにそのノートパソコンを見た。
少年は、スーツの懐からメモリーを取り出しセットする。
そしてノートパソコンを半回転させディスプレイを男に見せた。映像が流れ始めた。
『皆さん、こんにちは』
男の顔に驚愕の色が浮かぶ、動画という物を初めて見たであろう男は、さぞ驚いているはずだ。
『我々は、バッド・エンジェル・カンパニーです』
その人物はとても美しかった。肩口で切りそろえられた髪は一点の曇りの無い銀色で、癖が全く無いストレート。肌は透き通る様に白く。瞳は綺麗な碧眼だったが、今は黒いサングラスを掛けており、うかがい知るこてが出来ない。
顎のラインはシャープで、とても小顔。
それでいて若干の幼さを備えた顔立ちは16歳ほどに見えた。
『バッド・エンジェル・カンパニーは、本日で創設65周年、これからも、その時代の最先端兵器が、時代遅れに感じるほど効果的な最先端兵器の提供をモットーに邁進して行く所存です』
『我々、バッド・エンジェル・カンパニーは、お客様のニーズにお応えした様々な兵器や人材を対価さえ頂ければ誰にでも提供いたします。我々が提供する兵器や人材にきっとお客様はご満足頂けるでしょう』
『これからもバッド・エンジェル・カンパニーをよろしくお願い申し上げます』
「では、これから総帥からのメッセージを伝えます」
少年は今までの事務的な態度から打って変わり、口元に微笑浮かべとても嬉しそうに、自慢する様に口を開く。
男は、少年の言葉を聞くと、聞こえるたびに震え上がっていた爆発音に、もう震える事はなかった。
たしかに男の目には希望と強い信念の色が蘇っていた。
初投稿です。
不定期ですが、よろしくお願いします。