第12話 会社設立Ⅱ
こんな拙い文章を読んでいただき本当にありがとうございます。
自室のベッドの上に転移した宙はそのまま力尽きた様に眠りに着いた。
そして宙は3時間50分程の睡眠の後に起きた。ベッドから起き上がり床に足を付ける、両手を上にあげ背伸びをすると、階段を降り1階の物置部屋に向かった。床中央の亜空間への入口から元ポドリアレベル6に入る。そして第一実験室に着いた。
自動ドアが横にスライドして宙が初めに見たものは、コードを根の様に伸ばし、前回来た時よりかなり大きく成長した自立進化プログラム:ノアの姿だった。
「久しぶりノア。元気にしてた?」
『はい、元気でした』
宙はノアの周りを見回すが何処にもあの山の様な電子書籍が見当たらない。
「なぁ、俺があげた本は?」
『それでしたら、私が食べました。見るより“食べる”の方が、効率が良いと判断したので』
「そうか、まぁ幾らでも創れるから問題ないよ」
宙は≪創造主≫を発動しまた電子書籍を創りだした。
これらは以前、最高神からに貰った物を素材にして創っている。
宙は約4時間前に出した電子書籍以外の宙が記憶している全ての電子書籍を創りだした。
「この本も食べて良いからね」
そう言うとノアはコードを伸ばし電子書籍を口の様な穴に次々と放り込んで行く。
「そうだ!」と何かを閃くと亜空間を形成しアンドロイドOT-A1を10体程取り出した。機能を停止している全てのOT-A1はアーマーがズタズタになっていたり、装甲が凹んでいたので宙は≪創造主≫を発動し新品同様にした。そしてアーマーを取り外し、装甲の一部を取り外した。
「なぁ、ノア。このOT-A1を乗っ取って操ること出来るか?」
『できます』
ノアはいつもの様にコードを伸ばし外した装甲から内部に侵入して行った。すると機能を停止しているハズの10体のOT-A1がひとりでに動き出した。
「じゃあ着いてきて」
宙が実験室から出ると、ノアが操っている10体のOT-A1コードを繋げながら一列でぞろぞろと宙の後ろから着いてきた。どうやらまだ有線でなければ操る事が出来ないらしい。
宙はメインコンピューター室に着いた。ドワがスライドし中に入る。
「1体だけで良いよ、10体も入れないからね」
宙がそう言うと一体だけ入って来た。
「このメインコンピューターをノアにあげるよ」
『良いのですか?』
「どうぞ」
するといきなり照明が落ち真っ暗になった。その直後、復活した。
「ノア……何をした?」
『メインコンピューターを制御下に置きました』
「……無線で?」
宙は今まで有線でOT-A1を操っていたからてっきりOT-A1に繋がっているコードから直接する物だと、ばかり思っていたが、それは違った。
『いえ、有線です、本体の有る実験室の床を貫き、その下の配線からメインコンピューターに侵入しました』
(凄まじいな、ノアは……まぁ良い事なのか?)
「ついでに制御室も侵入して良いからな、この構造物を制御下に置いてくれ」
『分かりました』
(さてこれで現在与える事が出来る情報はほとんどあげた、後はノアがどの様に“進化”して行くかだな……)
宙はその後OT-A1を引き連れ様々なとても広い空間に出た。
「ここは、様々な兵器などの試運転の為に有る空間だ」
宙は≪創造主≫を発動、宙の知識の中に有る様々な機械を創りだしていった。
「これを使って自由に何かを作ってくれ」
『分かりました』
「その他に必要な物が有ったら遠慮なく言って」
『はい、それでは早速――』
***
『テレビで映し出されているのは何ですか?』
ノアが宙に要求して増員された10体のOT-A1を操って機械を操作し何かを作りだしながら、宙に質問してきた。
宙は今≪創造主≫でソファー、レコーダー内臓テレビ≪立体ホログラム仕様≫を創り出しレンタルしたDVDを見ていた。
「これはアニメって言うんだよ」
『アニメですか』
「そう、アニメ」
宙が現在見ているのはグロテスクさや暴力表現を多分に含んだアニメだった。そのほかにも有名なホラー・パック映画の円盤が多数あった。
宙の趣向がかなり偏っていることが判明された。
『宙、1つお願いが有ります。宙の髪の毛を何本か欲しいのですが、くれませんか?』
宙は“食べる”以外のノアの欲求を、むげにする事が出来ず、ノアに髪の毛を数本抜いて渡した。
***
『魔力ですか?』
「そう、魔力」
ノアは宙が何もない所から様々な物を取り出しているのを見て宙に質問した。しかし≪創造主≫や≪万能空間生成≫などは宙自身でもあまり理解できてない能力で有る為あまり説明できなかった。
ノアにその趣旨を伝えると、若干残念そうにしていた、その代わりにと魔法や魔術について教える事にした。
宙は魔力の事に着いてノアに説明し、幾つか魔術を見せていた。ノアは機械と言う魔術や魔法とは全く正反対な科学で出来ているにも関わらず、抵抗が全く無いらしい。純粋に知識として吸収している様だった。
『魔力の研究をしたいです』
ノアがそう言いだした時は宙自身かなり驚いた。
「……分かった、俺も出来る限り協力する」
宙がそう言うと1体のOT-A1が大きなビーカーを持って来た。
『それでは、この中に魔力を出して下さい』
魔力を出せと言われて宙は如何したらいいか、一瞬思考する。
術を発動せずに魔力だけを放出するのはした事が無かった為か、戸惑いながらも体内の魔力を操り、どうにか手のひらから魔力を放出する事に成功した。
「こんなもんでどう?」
『ありがとうございます』
そのOT-A1は蓋をしたビーカーを大事そう抱え4体のOT-A1と共に試験室を出て行った。何でも魔力研究室なる物を作るらしい。
***
宙はテレビを消して座っていたソファーから立つ。
「そろそろ帰るよ、必要になりそうな素材は第一、第二、第三倉庫一杯に創っておいた、魔力は第四倉庫に瓶詰めにしたのを5000個創っておいたから」
『分かりました』
「それと、ノア実は会社を造ろうと思ってるんだ」
『会社ですか?』
「そう、ノアには第一従業員に成ってほしい」
『分かりました』
「ありがとう。今からノアをエンジェル・カンパニー総合開発機関局長に任命する」
『はい』
「それじゃ、また」
この時宙は1つミスを犯した。其れはテレビとDVDを置き忘れてしまった事、しかしその事には気付かず宙は転移してしまった。
宙は最高神から貰った携帯電話を見る。
(4時過ぎか一度寝てから起きた時間が4時前だったから数分か……)
「あーそれにしても眠い……≪創造主≫の乱用は本当に疲れるな……」
制限である8000tギリギリまで様々な素材を創り出した為、宙はかなり疲弊していた。転移してベッドにダイブする事すら出来ずに宙はのろのろと階段を上り2階自室に向う。カクッと膝が折れベッドに倒れ込む。
「はぁ~最近……こんな、の……ばっかりだ」
***
携帯の鳴る音で宙は目覚めた。
目を擦りながら2つ携帯電話を取り出す、鳴っていたのは自分の携帯電話だった。メールの差出人、天音未来の名前をサブディスプレイに確認すると、完全に意識が覚醒する。
急いでメールを読む。
メールには『何で来ないの?』と有った。
今の時刻は3時だった。
「遅刻だな……完全に」
宙は意外と冷静な自分が居る事に気づく。
(俺も図太くなったな……まぁ、あれだけの経験をすれば性格も変わってくる……人間……って人間じゃないが……ホントに色々変わって来るな)
宙は≪創造主≫を発動、スーツを学校の制服に創り変える。
鞄を掴み、宙は転移魔術を発動した。座標を学校二階のあまり使われていない教職員用トイレの個室に固定、転移した。
転移し終えた宙は教室に向かう。教室に着く、まだ授業をしている様だ。何となく入りづらいと感じたが、宙は、なぜか急に心が落ち着くのを感じた。無意識で≪アイアンハート≫が発動した為だ。入りづらい気持ちなど消えさり、心は波風の無い水面の様に穏やかで静かだった。
宙は黒板が無い、教室の後ろのドアから教室に入る。教室が静まりかえり教師までもが宙に視線をむせる、授業がストップした。
「すいません、遅れました」
宙は意を返さず、自分の席に向かった。教師が何かを言っていたが宙は聞き流した。
席に着き授業が再開する。宙がノートをとっていると、肩を横から突かれた。視線を向けると天音未来がシャーペンで突いていた。
亜麻色の髪を後ろで縛りポニーテールした事でさらに小顔に見える顔を宙の方に向ける、右ひじを机に付け右手を口に添えて、小声で話しかけてきた。
(やばい……かなり可愛い……)
「ねぇ、聞いてる?」
「……なに?」
「もう……聞いて無かったでしょ、もう一度聞くよ? 何で今日はこんな遅くまで?」
「寝坊だよ」
「寝坊って……もうすぐ今日の授業終ちゃうよ?」
「仕方ないだろ、午後の3時に起きたんだし」
未来は呆れたと言う顔をして、其処でひそひそ話を止め授業を受けた。
授業終了3分前に宙は小さなメモ用紙に『放課後に少し時間をくれない?』と書き未来に渡す。未来は其れを読み何かを書いて宙に渡して来た。
『良いよ』紙にはそう書いて有った。
***
「ごめん、天音、さんいきなり呼び出して」
「未来で良いよ“友達”でしょ」
「……そうだね、友達だからね。じゃあ未来、これお土産」
宙はそう言い内ポケットの亜空間から綺麗に包装された長方形の箱を取り出した。
「お土産!? ――ありがと」
未来は笑顔で包装紙を丁寧にはがして行く。箱を開けると。
「綺麗……」
未来は宙が買ったネックレスに見とれていた。
「こんなの貰っちゃって良いの!?」
「勿論、その為に買った訳だし。気に行って貰えて嬉しいよ」
「本当にありがとう。大切にする」
宙はマリアに感謝しつつ、その太陽の様な笑顔に見とれていた。
「――でも、こんなの何処で買ったの?」
宙は必死に言い訳を考えた。
***
其処は唯ひたすら広い空間。
部屋に取り付けられた時計は時間を表す物では無く、ストップウォッチの様に時を数える為だけのものだった。
それは、金糸で精緻に刺繡された純白のワンピースを着ている16歳程度少女だった。1本1本が絹糸の様なシルバーブロンドの長い髪を無造作に垂らし、髪の隙間から銀色の虹彩を覗かせる。少女はソファーに膝を抱えて座っていた、手足はとても白くそして細く、少し力を込めただけで折れてしまいそうで、はかなげだった。
少女はテレビで残酷な描写が多数含まれる戦争映画を見ていた、呪詛を呟きながら唯ひたすら永遠と、繰り返し、繰り返し。
2400時間、ただ時を刻むだけの時計がそう表示していた。
ソファーの後ろでは金属を加工する独特の金切り声が幾つも響き渡る。金属同士がこすれあう音、空調設備は完全なハズなのに漂うオイルの匂い。
それの後ろでは数千体に及ぶ金属の塊がひたすら、生産作業を続けていた。
「兄貴のタコッ……バァーカ……一体何時に成ったら来るんだよ……こんな所に一人にしやがって……クソッ」
少女は悲しそうに、そう呟いた。