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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

大晦日の婚約破棄~除夜の鐘は破滅への足音~

作者: 善玉令嬢

いつもの


公爵令嬢のイザベラは自分の婚約者が嫌いだった。

王子のアルフォンスは極東かぶれだ。白塗りにした顔にちょん髷と呼ばれる奇っ怪な髪型に(それがし)と言う変な一人称。全てが極東の島国の(さむらい)と呼ばれるこの国の騎士階級に相当する者達の真似事だ。


「あんな極東かぶれの馬鹿は此方から願い下げですわ」


イザベラは隣国の王太子であるエドワードと幼い頃からの恋仲であった。

そんな彼が今宵の年末パーティーでイザベラに求婚する。

こちらが悪者になる心配も無用だった。平民の聖女であるリンと恋仲のアルフォンスは今宵のパーティーで婚約破棄を計画していたのだ。これであちらの有責で婚約を解消できる。


そして迎えた年末パーティー、イザベラのエスコートもせずに奇妙な白塗りメイクと袴を履いたアルフォンスがリンを隣に侍らせ声高らかに宣言する。


「某は貴様との婚約を破棄するでござる!」


計画通り。

イザベラの心は歓喜で一杯だ。


「あらあら、私は一向に構いませんが何の後ろ楯の無い平民が王宮で生きていけるのかしら?」


冷静に反論するイザベラにリンがボソボソと呟く。


「····今日は大晦日、清らかな心で····怒ると幸せが逃げる····極東の教えだ」


アルフォンスは流石リンだ!と称賛するがイザベラは頭がおかしくなったか元からおかしいのかとしか思えなかった。


「極東の魂····餅を皆で食べよう」


リンの合図で王宮の高位貴族の出身のメイド達が美しい佇まいで雑煮餅を提供する。


「これこれ!新年はこれを食べねば迎えられぬ!」


会場の貴族達は餅と呼ばれる白い固まりの入ったスープを珍しがる。


「こんな不潔で汚い色の食べ物を食べられるわけがありませんわ!」


イザベラを担当していた黒髪のメイドは困惑する。


「フン!王宮のメイドに黒髪の平民など紛れ込ませて····穢らわしいですわ!」


黒髪は平民に多い髪色でイザベラは平民が嫌いだ、雑煮を黒髪のメイドにぶっかけるも咄嗟にアルフォンスが抜刀し雑煮を真っ二つにする。一刀両断された雑煮は貴族令息達にかかりリンのお掃除魔法でキレイにされる。


「貴様····自分が何をやったか解っているのか?」

「平民などただの数ですわ!代わりはいくらでもいます!」


口論の最中に遠くからゴォーンという重厚な鐘の音が響く。


「これは何かな?聖女殿」

「除夜の鐘だ、新年が始まる」

「皆の者あけおめでござる!」


貴族達は昨年の苦労を水に流し新たな年の幕開けに明けましておめでとうと挨拶し合う。


「これグミよりモチモチしてるな!おかわりを要求する!」


エドワードはすっかり餅に夢中だ、イザベラの事など眼中に無い。


「くだらない····せいぜい馬鹿同士馴れ合ってなさい」


イザベラは捨て台詞を吐き退場する。


「あっ逃げた」

「愛は勝つでござる!」

「これ納豆って言うのか!餅に合うな!」

「あんこ餅もいけるな」

「ずんだ餅がトロけますわ~」


会場はすっかりお祭り騒ぎだが黒髪のメイドだけはイザベラの後ろ姿をしっかり見据えていた。


屋敷に着いたイザベラは父である公爵に報告する。


「お父様!王子は平民の魔女に誑かされました!至急陛下に報告し····」

「黙れ愚か者」


公爵は冷たく突き放す。


「今宵のパーティーは極東の国との国交樹立記念パーティーだ。我が国の魔法インフラに欠かせない魔水鉱が豊富に採れる国なのだ、機械文明の極東には必要の無い産物で逆に我が国で採れるダイアースが彼方のエネルギー生産に必要な品のため国交を樹立したのだ!貴様が侮辱したあの方は極東の大使様で極東は黒髪の民族だ!」

「そんな····」

「そして極東の魂と言える料理をぶちまけただと····殿下が今日の為に彼方の侍の格好をしていた事すらも考え及ばんとはな····」


イザベラは膝から崩れ落ちる。


「極東の文明は我が国など遥かに凌ぐ、今日の遺恨を清算しケジメを着けねばな」

「ま····まさか····」

「お前も貴族だろ?」



翌朝、獄中のイザベラの前に置かれたのは美しい切子細工の器。それが毒杯だと悟り己の浅はかさに絶望する。



事切れたイザベラを遠くから見ていた極東の大使とリン。


「ここまでする事はございませんのに」

「我が国のケジメ····他国の文化にリスペクトを示せない者に王妃は務まらない····」

「流石は国交樹立の立役者さんですね」

「·····」


大使が地上へ出た後にリンは口角を不敵に上げてニヤリと笑うのであった。




▼▼▼▼


数ヵ月後、白塗りを落とし美しい青年となったアルフォンスはリンとの結婚式を挙げていた。

極東の神社での神前婚、アルフォンスの袴姿は多くの女性参列者を虜にした。

二人が投げたブーケを受け取ったのはエドワードだが中に入っていた餅を取り出して食べる。


「何だ?花の中にまた餅が入ってるぞ!ラッキーだ!」


ぶっちゃけブーケはどうでも良く餅まきで盛り上がり三三九度の盃が交わされた。


その後、二人は平和に国を治めた。


fin

今年もよろしくお願いいたします!

やはり中世の貴族の世界はハードですね····

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