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第七話

「わ、さすが勇者。解毒が早いね」


 ゆっくりと起き上がると、男が安堵した笑顔で少女を見ていた。


「ありがとう。……勇者とゲドク、関係あるの?」

「あるよ。勇者と薬草やポーションは相性がいいみたいで、一般人より効果が出るのが早いんだ。薬が効きやすいってわけではないみたいだけど……ま、これも勇者の加護ってやつなのかな。教会とかで聖別されたものが一番いいみたいだしね」


 ふうん、と相槌を打ちながら手を動かす。確かにもう問題はなさそうだ。

 男の手にはくしゃくしゃに握りこまれた薬草があった。よく見る、その辺りにたくさん生えている薬草だ。少女の荷物の中にも常備されている、使い勝手のいい薬草だ。味はえぐいほど苦いが。

 意外な男の知識に驚きながら(普通、勇者についての知識は教会の人たちや王族に伝えられているものが多いと聞いた)、なにか引っかかりを覚える。


「……薬草……?」


 呟いた少女に、男は首を傾げる。

 先ほどのレイクワームの様子を思い出す。

 ポーチバッグに噛みついたとき、なぜか嫌そうにしていなかっただろうか。


「シグレくん」

「なに?」

「モンスターって、薬草が苦手なタイプもいるのかな」


 男はぱちぱちと目を瞬かせ、レイクワームの方を見た。なにかに納得したのか、こくりと首肯する。


「いるよ。薬草の種類にもよるけど、もしかしたらあのレイクワームは、このどこにでもある薬草が苦手なタイプなのかもねぇ」


 見て、と男が木々の方を指す。


「あの木の周辺にたくさん生えてるけど、あの辺りだけはぬかるんだりしてないよね。多分レイクワームが近付かなかったからだと思う」


 なるほど。見れば男の言うように他よりも荒らされた形跡が見られない。

 試してみる価値はあるかもしれない。


(でも薬草をどうしたらいいんだろう)


 食べさせてみたらいいだろうか。

 でも渡して素直に食べるわけがない。無理やり口に入れるのは危険だろう。毒を持つ牙がある。

 黙っているとモンスターは再び少女の姿を見失ったのか、きょろきょろと周囲を見渡している。長い首がゆらゆらと揺れているのが見えた。

 見れば見るほど動きはヘビのようにも見えるのに、形状はナマズやウナギに似ているように思えた。

 頭部の左右には申し訳程度のヒレがあり、ときおりパタパタと動いている。これだけ水中から頭を出し続けているのに呼吸に困っている様子はないから、魚のようにエラ呼吸だけではないようだ。


「エラ!」


 横で男がびくりと肩を揺らした。

 無視して少女は立ち上がる。今の声でレイクワームがこちらに気付いたが、少女は落とした剣を拾って駆け出した。


「シグレくんは下がっててね!」


 はぁい、と気の抜ける声を背に薬草の群生地に向かう。

 適当にひっつかんだ数本の薬草を持って少女はモンスターに向き直った。

 再び走る。今度はレイクワームに向かって。


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