第十二話
「団体さんだねぇ」
視線を滑らせ、地形を確認する。人の手が入っていないから平らな地面ではないが、それなりにモンスターが闊歩するからか、デコボコとしているものの歩きづらそうなところは少ない。しかし通路を歩いていたときよりも更に湿度が上がっていて、岩壁もしっとりと濡れているようだから足元には注意しなければ。
横で男がそっとランタンを叩く。ランタンはふわりと高度を上げ、男の頭よりも少し高いところに浮かぶ。その灯りに反応して壁に生えた洞窟ヒカリゴケがぼんやりと光った。少しだけ視界が開ける。そういえば、この辺りには洞窟ホタルが見当たらない。モンスターのせいだろうか。
剣を抜く。
ランタンの灯りに照らされて数十もの赤く光る目がそろそろと岩陰から姿を現わした。洞窟ネズミだ。見たこともないほどに数が多い。
「頭上も注意だよ、リタちゃん」
バサバサとした羽音。ケイブバットもそれなりの数がいそうだ。
「走り抜けられそう?」
「数を減らしながらなら、なんとか」
腰を落として中段に構える。
男の視線の先には更に奥へと続きそうな穴がぽかりと空いていた。
ランタンが高い位置に移動したおかげで先ほどよりも少しだけよく見える。
横穴のように続くその先にはキラリと光るものが見えている。――剣だ。
台座に突き立てられたむき出しの剣。もしかしたら、あれが伝説の勇者の剣なのかもしれない。
はやる気持ちを抑えて少女は周りを囲むモンスターたちを睨む。
キキッ、バササッ、
ケイブバットが一斉に飛び立つ。同時に洞窟ネズミもワッと飛び出した。
右から飛びかかってくる洞窟ネズミを横薙ぎで払う。ぎゃっと声を上げて真っ二つになった洞窟ネズミは後続を巻き添えにしてゴロゴロと地面に転がった。
「弱くても、これだけ、数が、いると、面倒、だ、な!」
もはや叩きつけるようにして片手剣を振っている男がうんざりと呻く。
その間にも上から下からとモンスターたちは二人に飛びかかってくる。頭も目もよくないので来た分だけ叩けば倒せるが、これだけ数がいると途方もなく時間がかかる。
「もー、仕方ないな。――風よッ」
男の周囲で大気が渦を巻き複数の塊を作る。男が右手を振るとそれを合図に風の刃が一斉にモンスターたちを切り裂いた。
頭の悪い低級モンスターともいえど警戒音を発して無策に飛びかかるのを止める。勢いで止まれなかった突進してくるケイブバットは少女が振った剣に当たってべちゃりと地面に落ちた。
距離を置いて警戒音を発する洞窟ネズミに剣先を向けつつ一息吐く。
男がまた魔法で風を起こし、足元に溜まったモンスターの死体を無造作に壁際に投げていた。
キィキィ、ギィギィ。警戒音が重なっていく。
なんだか嫌な感じがする。
キィキィ、ギィ――ぴたり、警戒音が止んだ。
洞窟ネズミたちは後ろ足で立ち上がり鼻先でなにかを探るような仕草をしているかと思えば、ぱっと身をひるがえして岩壁を伝い姿を消した。いつの間にかケイブバットの姿も見えない。
「……?」
しぃん、と洞窟内に静寂が訪れる。
横で男が訝しげに眉をひそめている。
ズ、ズ、ズ、ズ……、
重たいものが動く音と振動。
ガラガラと天井から石とも岩とも言えない大きさのものが落ちてくる。男が咄嗟に呪文を唱え、二人の周囲を見えない壁が覆ってそれを跳ね除けた。
「な、なに?」
「なにか、来る!」




