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第十一話

「洞窟ヒカリゴケだね。陽光やランタンなんかで照らされると淡く光るのが特徴。こういった洞窟に生えていて、奥に行くほど数が増えがち。でもなんで光るのかは知らない。洞窟ネズミとかの食糧になってるから、こいつが生えてるってことは洞窟ネズミもいるんだろうね」


 不思議そうにしていた少女を見て、男が解説してくれる。少女はへぇと相槌を打ちながら、いつでも剣を抜けるように柄に手を添えた。

 洞窟ネズミは洞窟をねぐらにしてはいるが、近隣の森や平地などでも見かける大型のネズミモンスターだ。ときおり街中にも出没する。一匹いたら三十匹はいると思え。

 大して強くはないが、数が多いので厄介なモンスターだ。

 平均で体長二十センチほど(尻尾は含まず)、大きいもので六十センチを超えるものもときおり見つかる。これが数十という群れになって出没するのだから恐ろしい。

 男は更に洞窟ヒカリゴケが生えているということはそれが成長するために必要な堆肥がいるということで、恐らくケイブバットもいるだろうと言った。


 ケイブバットは洞窟に棲むコウモリ型のモンスターで、吸血性。翼を広げた大きさが全長三十センチほどなのでそれほど大きいものではないが、こちらも群れで棲息するのが厄介なところ。

 頭上にも注意しなくてはと気を入れ直し、奥へと歩を進める。

 通路部分の広さは少女と男が並んで歩いても余裕がある程度。高さは奥に行くにつれて男が真っ直ぐに立っても頭が付かないほどに高くなっていっている。

 坑木で補装されているのは入口から百メートルほど入ったところまでだった。そこからは人の手が入っていないのか、岩肌も更にゴツゴツとしてよくわからない鉱物も飛び出している。触れば皮膚が切れそうな鋭い形をしたものもあって気を付けないと怪我をしそうだ。


「く、暗いなぁ」


 そうだねぇ、と男も頷く。ランタンの灯りがあっても暗いものは暗い。

 足元は見えるが、数メートル先は真っ暗でほとんどなにも見えない状態だ。

 洞窟ホタルがあちこちを飛び交っていて薄っすらと周囲を照らしているが、明るいというには程遠い。


「おばけなんて出てきちゃったりして」

「ひえっ」


 小さく飛び上がった少女を見て、男が首を傾げた。


「リタちゃん、もしかしておばけ怖い子?」


 涙目で少女は頷き、男のローブを握りしめる。男はそれを見て、なにも言わずに少女の頭を撫でた。

 男のローブを掴んだまま、男の影に隠れるようにして少女はどうにか足を動かし更に奥へと進む。

 お互いの息遣いが聞こえるほどなのに、不思議と静謐さは感じられない。足元を小さな虫が這っているからだろうか。

 湿度も高く、水のにおいがするので、もしかしたらどこかから川水でも流れ込んでいるのかもしれない。


 どれくらいの時間歩いただろう。それほど時間はかかっていないような気もするが、二人は随分と開けた場所に出た。

 天井は遠く、ランタンの灯りでようやくコウモリの影が見える程度。走り回っても問題ないくらいには広い空間には、そこここにモンスターが潜んでいるようだ。今は突然の侵入者に警戒して息を潜めているが、じきに飛びかかってくるだろう。

 少女は男のローブから手を離し、剣の柄を握る。

 キキ、キキ。ヂュウ、ヂュウ。ケイブバットと洞窟ネズミの声。


「……来る」


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