62.踏切(1)
「中央線って踏切無いよね。」
「そうだね。東京からどこまで無いんだろう。」
「えっと、立川の先の日野までは無いって書いてある。」
「確かに立川まではほとんど高架だものね。」
「でも高架にする前は随分と踏切があったらしいね。」
「高架化の計画があったから、跨線橋を架けることもできなかったろうしね。」
「開かずの踏切って有名だったのはこのあたりでしょ。」
「そうだね。三鷹までは随分昔に高架化されてたんだけど、その先の立川までが問題になってて、僕らの小さなころに高架化されたんだよね。」
「工事中は踏切が長くなったりして、かえって開かずの踏切が増えたって。」
「大変だったみたいだね。今ではもう考えられないけど。」
「踏切ってトモとしてはどうなの?」
「踏切そのものは僕はどうとも。ただ線路側から見るとけっこう厄介。」
「厄介とまで?」
「踏切、あと橋なんかもなんだけど、がっしり造ってあるから動かないんだよ。」
「動いたら困るじゃない。」
「そうなんだけどさ。その前後の線路は前にも言ったけど、沈み込んだり左右に動いたりするんだよ。」
「ああ、歪んできちゃうんだね。」
「そう。だから動かないところとの境目で揺れる。」
「ウイークポイントなんだ。」
「歪みを直すときにも踏切の所は動かせないから、そこへスムーズにつながるようにしなきゃなんだって。」
「面倒くさいんだね。」
「ぶっちゃければね。」
「踏切ってさ、何を踏んづけて何を切ってるんだろう?」
「線路を踏んで、横切ってるんじゃない?」




