51.電車(4)
「今朝、乗ってた電車が急ブレーキかけたときに『急停車します』って放送が流れてた。」
「あ、僕もそれ乗ってた。」
「一緒だったんだ。それでね、ちょっと気をつけて車内放送を聞いてたら、電車って結構良くしゃべるよね。」
「あれを喋ってると言って良いかとは思うけどね。」
「それに、車内の画面でもいろんな情報とか広告を流してる。」
「少し古い車両でも文字情報を流してたりするね。」
「昔の人が見たら電車がロボットかアンドロイドになっちゃったって思わないかなって。」
「さすがにそこまではないんじゃない?設定されたとおりに放送を流してるだけだし。」
「でも、例えばこの椅子が『座り心地はどうですか?』なんて話しかけてきたらビックリするでしょ。」
「するよ。ってか、その発想にビックリだよ。」
「はい。先走り過ぎました。」
「そういう話なら、むしろ『つばさ』とか『こまち』の連結する時の動きが合体ロボっぽいかも。」
「あの先頭がカパッて開いて連結器が出てくるところだね。」
「話をするっていうことなら、運転席の方がもっと進んでるんじゃないかな。」
「あ~、そういえば、こないだ乗った東京モノレールも運転席で何かを知らせる声がしてたね。」
「運転士さんの支援システムには音声でアドバイスをするものがあるらしいよ。」
「へえ。」
「音声を使わないものでも、モニター画面を使って、故障を知らせたり、いろんな情報を提供するよね。」
「電車が『低電圧なんです~』って泣いてるのを想像しちゃった。」
「先日乗った『ゆりかもめ』とか、新交通システムには自動運転してる所が多いじゃない。」
「JRでも研究してるね。」
「だけど、自律型のロボット電車って感じにはまだならなそう。」
「そうだね。ちょっと違うなって思う。」
「ところがですねぇ、最近導入が進んでる無線式の信号システム。」
「あー、埼京線とか丸ノ内線とかで使ってるやつ。」
「そう。列車が自分の位置なんかの情報を発信して、他の列車や施設の情報を受信して、そうして運転をコントロールしている。」
「無線で会話してる感じ!?」
「こっちの方が未来的に話をしてるように感じない?」
「うん。そうかもしれない。」
「いっそ変形しちゃったら面白いのに。」
「超進化しちゃうような?」
「そうそう。」
「う~ん、でもとりあえず線路の上は走っててほしいかな。」




