27.分岐器(1)
「分岐器とかも良いね。」
「ブンギキ?」
「あ、『ぶんきき』。伯父さんがいつもそう言ってるから、うつされちゃった。鉄道の保線の人とかは『ぶんぎき』って言うんだって。」
「そういえばレールの話してた時には『がせん』?とかって言ってなかった?」
「多分言ったと思う、『がせん』。よく覚えてたね。」
「うん。ちょっと引っかかったから。あれは何?」
「電車に電気を送る架線のこと。これも伯父さんから感染した。川のほうの河川と区別するためだろうって。」
「ポイントって言い方もあるよね。」
「ポイントはね、進路を振り分けるために動く部分のことだから、分岐器の一部ってことになるね。」
「へえ。同じものだと思ってた。」
「まあ、意味は通じるから普段使う分には問題ないんじゃない?」
「で、分岐器ってどう楽しむの?」
「え?普通にメカニカルな仕組みと機能美を愛でる。」
「それを普通と言い切るトモはナチュラルに不気味だから。」
「なんと!でも大きな駅とか車両基地なんかの分岐器が沢山ある場所って見飽きないじゃない。」
「俺にはわかりません。わかるようになるビジョンも見えません。」
「そっかぁ。まあ、人それぞれだから、それは仕方のないことだよね。」
「何で俺の方が残念な人みたいになってるの!?」
「ヨーロッパの大きな駅なんかの写真を見ると、分岐器がやたらとあって萌えるよ。」
「そういうもの?」
「うん。あと日本の駅でも昔の配線図とか見るのは楽しい。当時の国鉄だと比較的小さな駅でも貨物を取り扱ってたから側線への分岐器があったわけ。」
「ヘエ。」
「大きな駅だと線路も分岐器も沢山あって、操車場なんて言ったらもう芸術品だね。」
「ソウデスカ。」
「50年早く生まれたかった。」
「変なスイッチ入っちゃったよ。」
「ポイントのことを英語でswitchとも言うしね。」




