直接対決は鈴木の裏で
このエピソードは視点が折原に変わっています。
あたし、折原葵は教室の賑わう昼休みに鈴木を救うべく、ヤバい女と対峙している。
ヤバい女は何も分かってないポンコツな鈴木を追いやり、何故かあたしとの二人きりを望んだ。
「二人きりになれたわね」
「私は特になりたくなんか無かったけどね」
ヤバい女とは目が合わないようにそっぽを向きあくまであたしは二人きりを望んでいなかったという、意思表示をしてみせた。
「そうだったのね」
そう言ったヤバい女は、笑顔を絶やさずあたしの方が不利にも思える雰囲気を作り出した。
「それでなによ! 私に用事って」
「あぁ、その事ね! それは……」
ヤバい女は持っていたカバンに手を突っ込み、ツルツルとしたBというロゴの入った袋を私に差し出した。
「何よこれ?」
あたしは予想だにしないヤバい女の行動に戸惑いを見せて聞き返すが、ヤバい女はただひたすら笑いかけるだけで、その笑顔が次第に圧をかけているようにも思え始めた。
この袋を受け取らなければ、放課後になったとしても動く事は出来ないと、感じるようになりあたしは渋々受け取った。
袋には小さな物が入っており、袋から取り出すと、私がカバンに付けていたタヌキのマスコットのストラップが入っていた。
「えっと、これは」
「昨日、私が膝から崩れ落ちた時、丁度カバンが目の高さに来て、折原さんのカバンにこの野球のマスコットが着いていたのが目に付いてね? お近づきの印にと朝からそのマスコットの本拠地まで買いに行ったのよ」
あたしがあそこまで敵意むき出しにしていたのに、あたしの為にと考えると、今までのあたしの行動が恥ずかしく思え、顔が熱を持ち出した。
「好きなのでしょ? このマスコット」
「いや、そういう訳じゃ……」
もしかして、間違えたとヤバい女は首を傾げた。
「ただ、昔鈴木に連れられて野球の試合に行った時プレゼントされたのを持ってるだけだから、別に好きとかそういうのじゃないし」
「嘘は、いけないわだって折原さんのカバンには付けているマスコットのチームに所属する選手のユニフォームストラップが着いているじゃない?」
「ちがっ、これは」
「折原さんと鈴木くんがいつ試合を見に行ったのかは知らないけど、わざわざ野球素人が一軍にほとんど出ない選手のストラップを買うとは思えないのだけれど」
「本当に、違うから! でもありがとうあたしあんたの事ヤバい女って勘違いしてたわ、ヤバいけど人思いな女くらいにはランクアップしてあげる! 千葉さん」
認めたくは無かった鈴木があんな部に入るのも、そして千葉さんに満更でもない態度をするのも、ただの光り者で、その光に騙されてるんだと思っていたけど本当に好きになる理由を見つけられた気がした。
「まぁいいわ、鈴木くんが好きだからという事にしといてあげる」
「はぁぁ! 別に好きじゃないし、ただの幼なじみなだけだからあの部活から助けるのはただそれだけの理由だから!」
「まぁ、そういう事にしておくわ、でもあの鈴木くんを震えながら止めるのは球団の不人気マスコットよりも可愛かったわよ!」
「のぉ〜〜」
この女はやっぱりヤバい女かも知れない!




