振り切った野球を
阪田視点で話が進みます
マウンドに集まった時、うちは喋れないでいた、この前の打席での事を未だに、後悔をしていたからだ。
あの場面で打てなかったのがホンマに悔しくて仕方がなかった。
結果的には小林さんのスクイズで一点は取れたけど、もしもあの打席でうちが打っとったら、次の外野フライでもう一点取れてたのにと、自分の中でのたらればが続く……だが時は簡単に止まってくれるもんでも無く、無慈悲にも試合と共に続いていく。
「お〜い、阪田さん?」
「んぁ! なんや?」
「何か前の打席の事、気にしてるみたいですけど今更始まりませんよ? こういう時は後悔じゃなくて次のプレーで頑張ろって切り替えた方がいいですよ? 後、ぼーっとしてて聞いてないかもしれないんで言っときますと次、内野前進守備ですよ」
マウンドのラファエルさんが試しなげを終え、打席には七番の安倍さんが入った。
マウンドのラファエルさんは、腕を思いっきり振り、速球をどんどんと投げ込んで行った。
見逃しと、ファウルで追い込んだ後の三球目、追い込んだ事で力んだ球は真ん中少し低めに甘く入り、相手も そんな球を見逃すはずがなかった。
打った球は前進守備の二遊間を破ろうとしている。
(こら、取れへんは、確かセンターは小林さんやっけ? どんなものか分からへんけどこれで逆転か……いや、あかんこんな簡単に諦めたらあかんのんや! うちの腕後少し届いてくれぇ〜)
うちの心はそう、うちの体に頼み込んだ。
「こんな時こそ根性やぁ〜」
うちのグラブの中に確かな重みを感じる、グラブに手を入れてみるとそこには確かにボールはあった。
(よっしゃあ、うちボールに届いたんや、あとは無茶でもいい、明日の運気全て使ってもええから、ホームアウトになれぇ〜〜〜)
そんな思いでホームへと送球をした、その反動でうちはコケてしまったけど、関係あらへんかった。
コケながらもホームを見ると、そこには右腕を振り下ろし、アウトのジャッジをする審判がいた。
うちの顔には笑みが浮かび、ワンアウトしか取れてないのにも関わらず、テンションが上がり切っていた。
あたしは、もう壊れてもいいと思いながら腕を唸らせ投げこんだ。
阪田さんがファインプレーで一つのアウトをもぎ取ってくれて、その後も武田さんが外野のフライをアウトにして、進塁を許さないでくれた。
私はそれに、答える為にフォーシームをどんどん投げ込んで行く。
ついさっき、友人が泣きながら外野へと向かった。
そんな姿を見てあたしは思うところがあった、いつもあたしたち演劇部は、バカにされてきた。
好きな事をやってるだけで演劇とは、全くの別物だと、確かに私達はいつも失敗している! けど……「劇場は最後の最後で決めるから、カッコイイんだぁ〜」
あたしは最後の最後に渾身の力を振り絞って、初めて変化球を投げた。これは親戚のお兄ちゃん達に唯一教えて貰った変化球、SFFだ。
バッターはフォーシームでタイミングを取っていたこともあり、完全に崩され三振をした。
あたしは……いやあたしたちはノーアウト満塁を無失点で抑えたんだ! その瞬間あたしは柄にもなくガッツポーズを取るのだった。




